見出し画像

無口な赤ちゃん

赤ちゃんは喋らない。うちの8ヶ月の次男もまだ喋らない、でもよく動く。目当てのものが見つかるとどすどすどす!っとずり這いで向かっていくし、「今からこれ食べようね!待っててよー!」と声をかけるとにっこにこして嬉しそうな顔で待っている。その姿のなんと可愛いこと。

赤ちゃんは意味を持つ言葉を喋らないし抵抗もしない。言葉で大人を刺激することもないしひっかかれたってちょびっと痛いだけ。
長男が言葉を喋れるようになったのはいつからだったか、たどたどしい喋りはいつのまにか流暢になり私たちを怒らせる。でもいつだって子どもの立場は弱い。家庭という狭い檻の中で大人に嫌われたら生きてはいけないのだ。4歳だった長男はある時は妙に聞き分けのいい子ども、ある時は言葉で表現できな気持ちを癇癪として表していた。私は″どうすればこの子はもっといい子になってくれるのか″ばかり考えていた。自分にとって都合がいい子になってほしい、自分だけがかわいい親。いや、大人のふりをした子どもだった。

ずっと行き渋っていた保育園を休んで私の怒りを落ち着かせてしばらくした頃、長男は少しずつ自分の気持ちを話すようになった。「ねぇママ、ぼくはこの家の冷蔵庫の中身も知らない」と言ったとき、子どもはなんて不自由なんだろう…と思った。

言葉ってとても厄介ね。発している本人ですら本当か嘘かわからない。それならいっそ何も言わないでおこうかと思ったり、言わなきゃ気が済まないからと相手を傷つけてみたり。でもね、「ねぇママ」から始まる長男の言葉から私はたくさん気づいたことがあるんだ。君の本当の言葉、本当の気持ちが私を変えて、動かしてくれる。「ねぇママ、ママの好きな色は何色?ママの好きなことってなぁに?」って聞いてくれたね。おかげで少しずつ自分を戻してこれたのよ。君は昨日「ぼくは何の役にも立たないや」って言ったけど、生まれてきてくれただけでここにいてくれるだけでそれだけでいいんだよ。

何を言っても放った言葉は返ってくる。直接の返事が来なくても返ってきてる。なんでもいいから発してみよう。返ってきた何かから自分が何を思うのか感じよう、と…
数日前からぎくしゃくしている夫に心からのメッセージを送り、このまとまりのない文章を書いている。どうしたら伝わりますか、伝わらなくても良いのかな。いつかどこかで私の愛があなたに返りますように


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?