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プロ野球 投高打低の要因を考える

今シーズンのストーブリーグでは日本投手がメジャーリーグの球団と大型の契約を結ぶニュースが多く流れてきました。

日本人投手の価値がアメリカで高く評価されている一方、野手に関しては二刀流の大谷を含めても3人しかメジャーリーグに挑戦しておらず、投手と比較すると苦しい状況です。

また、日本のプロ野球界もここ数年は投高打低の風潮があります。
昨年のNPBにおいてリーグ優勝を果たした阪神とオリックスはいずれもチーム防御率が2点台で、12球団で最もチーム防御率が悪かったヤクルトでも3.66と数字だけであれば投壊と呼べる域ではないと思います。

私が考える投高打低の大きな要因はかなり普通の答えですが、投手のレベルアップです。

私が野球を見始めたのは1999年ですが、当時150キロを超えるボールを投げる投手は1球団に2,3人いれば良い方だった記憶があります。
また、球速で勝負する投手はたいていがコントロールを犠牲にするようなタイプでした。

球界OBのyoutubeなどでは、球のスピードよりキレのほうが大事という人もいたり、15年ほど前だとクルーンの160キロより藤川の150キロのほうが速く見える。だから球のノビが重要だみたいな意見も多くありました。
ただ、単純に同じ人が同じように投げて140キロで迫ってくるのと150キロで迫ってくると考えると150キロのほうが打ちにくいというのは自然な考え方だと思います。

また、藤川球児や山本昌のストレートというのはプロ野球界の歴史の中でもかなり特殊な部類だと思うので、これから大成しようと考えているけどそういった特殊性がない若手の投手がすぐに真似をして身につけるというのは逆に難易度が高いのではないかと思います。
ここ最近までの野球界は、球のスピードよりノビやキレを身につけろというような風潮が強かったのではないかと思います。

そんな中、投手はウエイトトレーニングを行うと球速が増し、また回転数や軸も計測できるのでこうすれば打たれにくいという現時点での答えができているのではないかと思います。
答えとそこに至るまでのアプローチも明らかになりつつあるので投高打低になっているのではないかというのが私の推測です。

打者に関しても一時期フライボール革命や打球速度という概念が取り上げられました。
そこにウエイトトレーニングも組み合わせればホームランが増えるという理屈はわかるのですが、如何せん投手が投げたボールにしっかり当てる必要があります。
そのためその技術がなければスタート地点にも立てないのです。

少し話が変わりますが、投手と野手の練習について落合博満が現役時代に出版した本の中に面白いことが書いてありました。

この本の中で当時(1985年頃)に投手の変化球が増えた理由について落合が説明している部分がありました。
簡単に説明すると投手の練習量には限度があり、野手の練習量には限度がないというものです。

かつての投手はよく走っていたというような発言をよくyoutubeなどで聞きますが、これは逆に毎日制限なく投げられるわけではないから走るくらいしかできなかったのではないかとも考えられます。

そんな中で再現性が高く効果を得られるトレーニングが周知され、リーグ全体の平均レベルが上がったことで今の状況があるのだと思います。

では、この状況は何がきっかけで起こったのでしょうか?
私はダルビッシュ有の影響がかなり大きいと思います。
ダルビッシュは2010年のオフに10キロ体重を増やすということがありました。
2011年は自己最高の成績を収めましたし、球速もあがりました。
おそらくプロ野球界において肉体改造をすることで自分のポテンシャルをあげるという新しい常識はこの時がスタートだったかと思います。

投手はこうすれば良いという答えが科学的に見えつつある中だと今後も投高打低の流れはボールを変えるとかピッチクロックの導入でもしなければ簡単には変わらないと思います。

しかし、その一方で球速が上がることでのデメリットももちろんあると思います。
それは投手の怪我です。
かつてと比べてトミージョン手術はかなり増えた印象です。
また、そんなに球数投げてたっけ?というような投手もトミージョン手術を受けるケースも見かけます。

球速が上がるほど身体への負担は大きいと言われています。
また、現在NPBの現役選手で40歳を超える大ベテランはいずれも球速がさほど速くない投手です。
50歳まで現役を続けた山本昌も130キロ台のストレートで勝負していました。

今後、さほど投げていない投手がトミージョン手術を受けたり、大谷翔平のように一度手術をして復帰したけど再度トミージョンを受けざるを得ないというような状況が多くの選手で起きれば、肉体改造もある程度制限をかけるようになるのではないかと思います。

そうなれば、怪我のリスクを下げつつ、140キロ台のストレートで抑えるために球のキレをどう磨くのかであったり、ノビのあるストレートを投げるにはどうすればよいかみたいなウエイトトレーニングに比べてすぐに答えが出にくい課題を投手が持つことになるかもしれません。

現在の状況はその分岐点なのかなと感じており、非常に興味深い状況です。
来シーズンも楽しみにしています。

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