舞台キングダムを観た話
舞台キングダムが終わった。
2022/8/21から263日間、楽しい日々でした。
未来があればまたたくさん観たいなーと思います。
残しておきたい話を少しだけ。好きなことしか書かないし、読みやすさはないのでそこは悪しからず。
キングダムの主人公は信であるにしろ、王都奪還編においては政も主役の物語で、信と政のダブル主人公、という前提を持って私は観劇をしていた。
高野くんがこういった主人公を演じる強みの一つは、芝居の流れの中で額縁と絵、どちらにも振れることだと思う。2人が同立に並ぶことはもちろん、その時は花に、その時は額縁にという、今のシーンでみせたいのは誰なのか、を高野くんなりに振った上でみせてもらえること。
私にとってその一番綺麗な形のひとつが、漂が死ぬシーンだった。
帝国劇場の2週目が終わる辺りから、漂が死ぬシーンで生演奏の音も聞いて芝居をしていたのを感じた。3週目中盤にはプランが固まっていたのを覚えている。
漂が死ぬシーンの音楽の途中に、高音のピアノが入って曲が転調する箇所があって。「二人で天下の大将軍になるっつったじゃねぇかよ」のセリフを終えた後に、ピアノの高音が入るようにセリフを言い終えるようになった。これは漂のどちらの役者でも、信のセリフの後にすぐ「なるさ」というセリフが入らないからこそ成立する。
私がその音を意識したのは 、1回ピアノの高音中に二人で天下の…のセリフを重ねた時で。このセリフ、高音と合うと異様に立つんだなぁ、と感じた。でも、この時立たせたいのって漂で。漂の、なるさ、だし、その後に続くセリフたちで、そのセリフを受けて信の物語が始まる。帝劇の途中から、これは小関くんでも牧島さんでも、セリフが早く進んだりはしない限り同じ演出を選択していて、漂の額縁で綺麗だな〜と思って見ていた。もちろん、その日の漂の役者の死に方によってやるかやらないか、はある。毎公演同じお芝居にはならないから。漂を演じる2人は、特に意識してなかったと思う。三浦さんでは見られないものだったし、間違いなく高野くん一人でやっていた。漂の役者にそのパスを出し続けているのをずっといいなーと思ってみていた。
博多座の2週目で、牧島さんに音が聞こえたな、と感じるようになった。ここ、と確定した部分は細かいから伝えられないけど、音と牧島さんの動き、セリフがハマる瞬間が続いた。その後から、高野くんがさらにこだわり始める姿が続いた。
4/23に、生演奏と信、漂のセリフがぴったりとはまった。このシーン何回でも観たかったなぁ。映像に残らないのがあまりにも悔しいなーって言い続けた。23からの博多座楽までの公演、芸術でした。牧島さんがその演出にのってくれなければ、もう一段登ったこだわりは見れなかったし、全部が合う瞬間はこなかった。音楽と生きてきた人の音と芝居が、全て綺麗に紡がれた時間だった。
キングダムの間に別のミュージカル作品をみた時も思ったけれど、歌があってもなくても、音楽が側にある人の芝居と音が噛み合う瞬間って最高に気持ちいい。舞台にはこんなに引き出し方もあったんだなって思い出させてくれました。ダンスではないけれど、1幕の終わりとかカーテンコールとか、高野くんが演じるから出るらしさがあってすごく楽しかった。
高野くんと小関くん
当時小関さんのことは天てれと、今ブランチに出てる人という記憶だったのでお芝居はキングダムが初見でした。本当に主観になるので悪しからず。
牧島くんが声色でわかりやすい演じ分けを提供する中、視線ひとつで今は誰か、を提供している小関さん。政の目をみた時上手いなぁと。どっちがいいというわけではないです。芝居は好みだし。私はどちらをみてても楽しかった。
私は高野牧島回が初めてのキングダムだったので、そこがベースになる。なので、小関さん回の初日で一番印象的だったのは、そう簡単にはいかないか、の表情だった。博多座後半から大楽ではもう見れない表情になってしまったけれど、私は笑う小関さんが大好きでした。芝居はナマモノ、一期一会だなって改めて感じます。
私は小関さん、いい意味で相当計算して芝居してるなって感じてました。その上で、舞台上でどの程度の余白を残しながら演じているか分からない。それが見えないから上手いなーと。これは高野くんも近いものがあって。基本的に余白と一緒に芝居をしているので、トラブルが起こってもその時最適解で回収していく。お芝居も、起こった感情をその日に芝居に乗せて、次の公演に繋げる。私が見た中でこの二人のそれが1番はまった日は、3/19の大阪楽だったと思う。博多座から高野くんの演じる信をひとつ変えた日だった。
この日小関くんの漂が死ぬシーンで呼ぶ「信」。初めて聞いた優しいトーンだった。もともとお芝居を見ていても優しい人なんだろうなという印象でしたが、死に際の漂が呼ぶたった2文字の名前が、この先に続いた高野くんの信をつくるきっかけになったと今でも思います。あの声が忘れられません。小関くんの呼ぶ信というの声から、高野信の漂に対する感情が深く落ちる感覚があった。いつもより悲しみが深く感じたのも、その先からも涙が止まらなくなったのも、信と呼びかける小関くんのセリフだったと思います。本当に一瞬で、高野くんの空気が変わりました。
この日はその先から、漂が関わるセリフ全てが重くなって。そうすると、小関くんの政も変わる。政が呼ぶ信、という名前は重くなり、その分漂が呼ぶ信、の優しさが引き立つ。相当高い次元のやり取りが続いた3時間だった。この日の信は、ここまで見たどの信よりも泣き虫で。でもこの日の公演を締めにいったの、祐様だったなって思います。今でも高野信のセリフの後の笑い声、昭王を呼ぶロングトーンが残ってる。梅芸揺れてた。一番泣いたキングダムでした。
牧島さんについて
大好きなところは書いたので、牧島さんについて少しだけ。牧島さんは三浦高野でそれぞれのプランを固めつつも、少し余白を持って演じてた印象です。
博多座前半の高野くんは、3/19の漂への感情を相当引きずりながら演じてるな、と思っていて。牧島さんの政は帝劇終わりくらいから少しずつ幼い表情を出すようになってていいな〜と思ってました。が、帝劇から比べると博多座では相当幼くなったと思います。個人的には、高野くんの信が変わったことで、牧島回で演じる牧島政が少しずつ幼くなっていったひとつの理由じゃないかな、なんて思います。まぁ感じていただけかもですが。
私は高野くんとのやりとりになると、黒卑村で信と出会った時の何かを話したそうな表情とかかなり好きでした。あとはだからいったろう、強靭の野を行く薄弱の王だと、のセリフの時の、高野牧島回で出る独特なひとりぼっちの空気感も。朱凶と信のやりとりの時に信に殺す、って刃を向けられた時にピクリと刀を動かす一瞬とか、細かい作り込みがみるたびに増えていてたのしかったです。
華優希さんについて
帝劇で初めて拝見した華さん。帝劇初日、まだ顔がでてこないのに、拾って小銭をお客さんにみせてしまうシーンを見た瞬間に、あ、絶対絶対好きになるって思いました。
私からみた川島貂は度胸があって、いい意味で鈍臭い子。対して華貂も度胸のある強い子だけど人二倍はビビりだな、と思いました。そして何よりも子ども。なんでこんなに子どもの動きを……って感動しました。後から読んだインタビューで、子どもの動きを研究している、といったニュアンスの記事を読み、舞台上の答え合わせが刺さりました。
私は高野華でみるキングダムが大好きで。少し動きが似ていたり、気づかなくても揃っていたり。帝劇の梶壁と二人で絡むシーンとか全部可愛かったです。高野信と梶壁の山の民のところまで向かうシーンは、有澤壁よりも相当柔らかかったので、華貂が高野信と似たような軽いタッチで絡んでいく姿、何回でも見たかった。
もちろんそれだけではなく、高野華で見ると舞台上でお互いがどれくらい動きたいのか、というのがわかってるんだなって感じてました。コロナ禍も絡み、帝劇の初日組でわかれて稽古をしていたとかの理由かなぁと思ったり。実際は知らないんですけど。華さんが広々舞台を使って芝居する時の高野くんとの距離感と、高野くんが使いたい広さを自然と提供してる華さんとのお芝居、どこの劇場で見ていても気持ちよかったです。
私は華さんの、「手のかかる剣だね」という表情と、信のセリフの「俺は時間を置いて政を追うつもりだったからな」の話を聞いている表情が大好きで。政→信、信→政、という華貂の視点から見えている二人をその表情から感じることができて、初めてその表情を見た日から華さんの公演は全部吸い込まれるように見てしまいました。
私はキングダムの、元祖三人組の関係性も舞台で見ていた節がありました。なので、高野牧島華のピースが全部ハマった感覚が好きで。大阪で友人に薦めるためにキャスケを見たら1回もなかったので、公演はあるのに1ヶ月以上観れないってあるんだ…と、博多座の持ってない日程を全部抑えました。
もちろん小関華でしか見れない景色も大好きでした。信が避暑地に着いて倒れた後、政の「一晩のうちに友を亡くし〜もう限界だったのだろう」って話を聞いた後の表情から、絶対運べないだろう信を運ぼうとする華貂の姿、とか。ラストシーンの、「俺の名前は信!〜覚えとけ!」と王騎将軍に信が言っている時の二人の押し問答とか。王騎将軍が矛を振りまわした時、小関政は貂を守るように左手をスッと出し、一度貂が信!と叫んだ後、信をこちら側に連れ戻しに行こうとする華貂と、それをさせず守る小関漂のやり取り、信の見せ場なので目が足りなくて困惑した。なんなら座席によっては、啖呵をきった信のセリフの終わりで、美弥さん梅澤さんの笑う表情も見れます。大渋滞シーン。
すっかり華さんファンになったので、せんちひたくさん行きたいなって思います。
話が少しズレるけど、華さんが頭の蓑を取り正面向くのとピンスポの明度が上がる瞬間がピタリとハマるのと、ムタの1発目の毒矢で信が剣を出すところを狙ってピンを当ててるの綺麗だったな。
本当はもっと書こうと思ったけど、書きたいなーと思った断片的な話が多すぎるからおわり。
政が檄飛ばすシーンとか、牧島さんの笑う表情だったり、小関さんなら一瞬漂と被るような感覚とか、それぞれの政の檄を受けて笑う美弥さんとか、昌文君と目を合わせて意志を強く持って頷く梅澤さんとか、檄を聞きながら自分の横を通っていく役者たちがいる中、相手を睨みつけて戦う信とか。たった一つのシーンに好きがたくさんあって目が足りなかった。戦闘シーン以外にも、たくさんたくさん見たいのに…が溢れてました。全部書けけないからこれで終わり。
最後に劇場の話
帝国劇場
えび座を観にに行った時も思ったけど、とにかく舞台が縦にも横にも広い。昔たまたま別舞台のバラシをしている時に通りがかった際、大型トラックを劇場内に飲み込んで行ったのを見たことがあるので、センブロから舞台を見るとその広さを余計に感じました。
高音、低音の響きも好き。演者が出す音も響いていた印象が強いです。
基本的に帝国劇場を基準にメモを残します。
梅田芸術劇場
帝国劇場より横が少し狭く、縦がかなり狭くなった気がします。王中華、ギチッとしてたイメージ。個人的に小関さん、梅澤さんの声と相性がいいなと思いました。美弥さんはこの劇場の鳴らし方を知ってるな、と思ったりして、楊端和役の声がどちらもよく響いてて気持ちよかったです。音も良くて好きでした。
博多座
横は梅芸と同じくらいで、縦は梅芸より広いと思います。王中華に梅芸よりゆとりがあった気がする。博多座に初めて行ったのですが、劇場のホスピタリティはもちろん、地域から愛されてるなって。行くお店通るお店に博多座用のポスターがたくさん貼ってあって、街を歩くだけで楽しい気分になれます。
キングダムの博多座は高音がよく響く。逆に低音が聞こなくてビビりました。博多座前半は役者たちが出すバタンとした音も舞台上で吸収され、序盤は特に音が足りなかった。後半になるにつれて役者たちが出す音は聞こえるようになりましたが、低音だけはどうにも響いてこなかった。本来おけぴがある場所を舞台で潰していたからかな。そこだったら音が抜群に響くのかも。キングダムは袖でやってたと思うので、楽器と床の相性の問題なのかな。そういう事にあまり詳しくないけど、歌舞伎で使うツケは抜群にいい音で響くだろうなーって思ったりしました。博多座、とっても楽しかったのでまた行きたいです。
札幌文化劇場hitaru
音の反響がすごくいい。低音久しぶりに響いてきて、これ〜!って思った。反響がすごすぎて聞いたことのない音まで聞こえた。役者の声の反響にもびっくりした。1回しか入ってないのでそんなに話せることがないけど、こんなに音が響く劇場があるのは単純に羨ましいなーと思いました。
最後に
ここまで自分用のメモと、好きなことしか書いてないからきっと読みにくいと思います。
でも個人的な記録で残しておきたいなーと思えたので、ざっくばらんに書いてみました。
未来で自分がこれを読んで、楽しかったんだなーと思えたらいいな。
再演したらまたたくさん行きたい。
とっても楽しい時間をありがとうございました!
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