人生返せよ2018

【「人生返せよ2018」(2018/12/30)

私がまだ大学2回生やってる理由のはじまりの部分です】


私にとってこの一年はまさに“激動”だった。

……みたいなありふれた書き出しはしたくなかったのだけれど、やっぱりどう考えても激動すぎる。


一年前の自分に「平成最後の年越しは精神病院で迎えることになる」なんて言っても間違いなく信じて貰えない。

そもそも、本当に平成が終わるということに驚かれるだろう。まず今年の私ですら未だに実感が湧いていない。一時代の終焉を数ヵ月後に控えているという割に、いつもと変わらず世界はどこか呑気で、間延びした空気さえ感じる。結局、時代が変わろうが世界が終わろうが人間はきっとこのままだ。


とはいえ、私の人生はこの一年で明らかに変わってしまった。


3月、進路の事で親と大喧嘩をかます。

そこから丸一ヶ月以上家族に存在を無視され続ける日々。


台湾研修には無事に行けたものの、見送りどころか当日も顔すらつき合わせることなく、現地での小遣いから空港への交通費(皮肉にもこれがまあまあ高かった)まで全部自分のバイト代から負担し、両替も一人でやるハメになった。

心配そうな顔をした親に手を振って出掛けていくクラスメイトを見ていると少し寂しさも感じたが、その分家から2000km離れた台湾はとても居心地がよかった。すべてのコンビニがなんか臭かったけど。


そして、体に異変が現れたのもこの頃だった。

突然の血尿、背中の激痛。

親に言える雰囲気でもなく、痛くないときは全く痛くないのでとりあえず放置。


2年に上がり、早々にチャリをパクられる。

新しい自転車には何を血迷ってかクロスバイクを選び、片道13kmの自転車通学をはじめる。

50分クロスを漕いで、7階の教室までダッシュで駈け上がり、7時間授業を受け、また50分かけてバイト先に向かい、22時過ぎまで小銭稼ぎに勤しむ。

週に1日の休日も、毎週10-22なんてアホなシフトでバイトをしていた。

授業の課題がせいぜいで、毎日の小テストの勉強なんてする時間がなかったので、登校中の信号待ちに単語を詰め込んでいた。


これはこれで青春だと思うのだけれど、体サイドは「無茶」としか捉えてくれなかったらしい。

遂に放置した腎臓の痛みが授業中に襲ってきて、そのまま救急搬送された。5月半ばのことだった。


そこから6月いっぱいは、大学病院でいろんな科をたらい回しにされた思い出しかない。

学校からは遠回しに「学校でまた倒れるようなことがあれば授業の妨げになるので、治療するまで来ないでほしい」と血も涙もない厄介払いを受け、宙ぶらりんの状態。頼れるものは治療だけだった。

しかしどの科でも結局原因不明という結果に終わり、最後の最後で精神科・心療内科をすすめられた。“心因性”と言えば聞こえはいいが、手の施しようがなく匙を投げられたようなものだ。

もっとも、その頃にはすっかり気も滅入っていたので、もう進歩がなくてもせめてその落ち込みだけでも改善されれば……という諦めもあり、大人しく受診した。


案の定痛みの原因は明らかにはならず、「結石を放置して症状が長引いたショックで脳がその激痛を覚えてしまい、痛みの信号を誤発信している」というこじつけめいた理由で納得せざるを得なかった。ただ、強い痛みを生じる病気のあとには珍しくないケースらしい。


しかし、どういうわけかオマケでADHDなんて余計なものが見つかってしまった。初診初見でコンサータを処方され、晴れて(欲しくもない)障害者のレッテルを与えられる。


背中に出来たたった一粒の石が人生をメチャクチャに引っ掻き回した。

授業が受けられなくて下がっていく偏差値、学内席次、また加速する鬱、鬱、鬱。


そしてふと、「この日に死のう」と思い立った。


死ぬ前に、あの人と会っておこう。

例えば、中学の頃無意味に嫌いあってた同級生。

例えば、学校をサボって一緒に川に遊びに行った先輩。

例えば、花火をする約束をした遠くのあの人。

例えば、見ず知らずのフォロワー。


眠っている暇なんかない。食べている暇なんかない。後先なんか考える必要ない、全部この日で終わりなんだから。


……ってやってたら精神病院にぶちこまれて、留年して、挙げ句年越しも死にてえ死にてえ言いながらそこで迎える事になるよ、って丁寧に順序だてて伝えてあげても、それでもまだ信用してもらえないと思う。

一年前の自分は今の自分よりもっと愚かで、浅ましくて、視野が狭かったから、理解できるはずがないのだ。信じられるはずがないのだ。


例えば一年後の自分がもし生きていたとして、次の一年で起こることを伝えに来てくれたら……愚かで、浅ましくて、視野の狭い今の自分は、きっと笑ってつまみ出す。

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