あなたにとって「仕事」って何ですか。
週末は仕事で事務所へ。
奥さんが出かけるので娘2人も連れて。娘たちは事務所に来るのが大好きだ。いつもは夏休みや冬休みに一度ずつ程度だけれど、上の子が3歳の頃からなので、もうかれこれ彼女は事務所に通い5年になる。
放っておいても「写」や「控」のスタンプや、豊富な文房具と紙、ホワイトボードで遊んでいる。いろいろと書類の整理を済ませ、3時間程度で帰ろうかというと、やっぱり楽しかったからまた来たいという。
先日からピョートルさんがオンラインサロンを始めたというので何の躊躇いもなく入会した。
ちょうど今年度の新しいインプットのテーマを探していたところだった。ピョートルさんと世羅さんに京都に来てもらいSILKのイベントに登壇してもらったのは、昨年の秋になる。
さて、そのオンラインサロンでの早速の問いが、「あなたにとって『仕事』ってなんですか」という問いだ。
そこで瞬間的に浮かんだワードは「自分の表現の一部」だった。
そう答えた自分が今は自然なのだけれど、以前の僕からすれば考えられないだろうし、きっと何を言っているのか分からないだろう。
実は、SILKに入る前、「仕事」について深く考えたことがある。それも4年ほど前になるのだから、また考えも変わっている。もう少し考えを深めようと思う。
どんな社会を実現したいのか。
SILKがイノベーションキュレーター塾を始めたとき、第1期として入塾した。理由は、今回のオンラインサロンのときと同じで、なんだか面白そうだと直感的に感じたからだ。
入塾時に応募動機を書かなければならないのだけれど、そこには「どんな社会を実現したいのか」を書く欄があった。
正直なところ、そんなことを考えたこともなかったのだけれど、一番に頭に浮かんだのは「自分の娘が彩りある未来を暮らしてほしい」ということだった。そして、自分がどのようにしてその社会を実現するのかといえば、「税理士として起業支援や経営支援をする」ということだったと思う。
今思えば、実現したい未来に対して「自分」との関連性があまりにも遠かった。どこか実現したい未来のために行動する人というのは、「自分以外」で、自分はその背中を押すことくらいに考えていた。そんな能力は自分にはないし、それのどこがいけないのか分からなかった。
それからの1年間、僕は禅問答のような問いを何度も続けてもらった。どんな未来を実現したいのか、なぜ僕がそれに取り組むのか、その取り組みの先に何があるのか、そのさらに先には何があるのか、それがなぜ社会に必要なのか。何度も何度も考え続けた一年だったように思う。
考えては壊し、考えては壊しを繰り返し続けたのだけれど、自分の答えの何がずれているのか分からなかった。腹も立った。だけど、その頃の僕は常に「税理士として」という言葉を使っていた。そして、最後の最後に自分でそれに気づいた。
手放すことに対する恐れ
僕は長年勉強して税理士資格を取得したことに誇りを持っていたし、それは今もそうだ。税理士になるために身につけたスキルは極めて高度なものだと自負している。でも、今あるスキルに囚われていては、実現したい未来に対して手法が限定される。自分では囚われていないつもりだったけれど、周りから見ると囚われていた。それを身をもって体験したことは、今企業支援をする中でとても役にたっている。
その頃の僕は、おそらく税理士や中小企業診断士である自分を手放して考えることが怖かったのだと思う。それが自分の能力を表していると思っていたし、10年かけて積み上げてきたものだと考えていたから。
税理士でない自分に価値があるのか。それを怖れていたのだろう。以前の僕はどこか心の中で、スキルを切り売りしないと戦えないと感じていた。自信がなかった。
自然体で臨むコンサルティングへ
今はコンサルティングにも、もっと自然体で臨むようになった。まずは課題そっちのけで、どうなりたいですか?というビジョンを聞いて、どのような支援ができるか、どのようなチームで臨むかを提案している。
スキルをどんなに高めても、自分より専門性の高い人は山程いる。それがSILKでいろんな人と一緒に仕事をしてみてよくわかった。自分は未来に向かうためのルートを示して、自分が支援できる部分は自分が支援しながらも、一緒に取り組んでくれるパートナーに声をかける。
それが今の僕の仕事だ。
自分のスキルを切り売りする場面もあれば、他の専門家の力を借りる場面もある。閉じた関係性の中で支援するよりも、多くの人材を巻き込む方が、会社にとって必ずプラスになる。似たような考え方でワンストップサービスというものがあるが、それとは明確に違うと思っている。そうした方がよりクライアントのためであり、一貫性のある支援を提供できると思うようになった。
自然体で臨むようになって本当に楽になった。仕事がより楽しくなった。
冒頭の問いに戻る。
あなたにとって「仕事」って何ですか。
今回答するのであれば「自分の表現の一部」だと思う。これからも背伸びをせず、クライアントを支援していきたい。