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これからは総務の時代がやってくる

日本全国に総務の仕事をする人はたくさんいます。それでも子供の頃に「総務」という仕事の魅力を知る機会はほとんどありません

今は価値に光が当たっていない仕事がある。「その仕事めっちゃおもしろいよ!」を伝えていきたい。それが"SOU-MU"プロジェクトを立ち上げた理由です。

私がどうして総務の時代がやってくると思うのか。どんな未来を描いているのか。そんなことをここにまとめておきたいと思います。

「総務の仕事はおもしろい」と思える社会に

私は「ビジネスを通じて人の成長に寄り添っていきたい」と思い、29歳のときに税理士になりました。それから7年、企業の税務相談のほか、経理担当の方の仕事が楽になるようなIT導入などに力を入れてきました。

また、「自分が身につけてきたスキルを社会のために活かしたい」と考え、今は京都市ソーシャルイノベーション研究所(SILK)という「社会課題を生み出さないビジネス」を支える支援機関でも、コーディネーターとして企業支援・創業支援をしています。


昨年SILKでは、私たち支援者、中小企業の経営者、そして従業員の皆さんが、異業種の会社と同じテーブルにつき、ともに働き方改革を進める「働き方改革チャレンジプログラム」にも取り組みました。この取り組みは今までになかった支援方法で、社内に変化のきっかけを生み出すことができました。


私は、税理士の仕事でも、コーディネーターの仕事でも、企業のバックオフィス業務を担当する方とお話する機会が多いからか、地域企業のバックオフィス業務を担当する方が大好きです。

小さな企業でも、ビジネスをする上では一通りの仕組みを成立させる必要があります。契約、受発注管理、請求、梱包、発送、システム構築、資金繰り、資産管理、備品購入、伝票整理、その他すべての事務作業。

地域企業では、そんな多種に及ぶバックオフィス業務を1人で担当することも多い。旦那さんが起業したけど、経理まわりをしてくれる人がいなくて、仕方がないのでバックオフィス業務のすべてをこなす起業家の奥さんなども多いですね。

そうしたビジネスを支えるバックオフィス業務は「総務」に他なりません。むしろこれからのバックオフィス業務は、業務を横断的に再編し、「総務」としてアップデートしてとらえ直した方がテクノロジーとの相性がよいのではないでしょうか。


そんな「総務」の価値を規模の大小関わらず、総務人材同士で共有できる場をつくりたいと思い、"SOU-MU"プロジェクトを京都で立ち上げました。


総務は会社全体の仕組みを変えることができる

"SOU-MU"プロジェクトの一つ目の目的は、企業の総務同士の横のつながりをつくることです。

いまだに「総務なんて誰でもできる仕事だ」というような言葉を耳にすることがあります。このように総務が評価されないのはなぜでしょうか。

総務が誰でもできる仕事と思われる理由は、以下のようなものがあるでしょう。
①同じ事務処理の繰り返し
②売上に直接関係しない
③クラウドでアウトソーシングできる

でも、総務は誰でもできるわけではない、やりがいのある仕事です。
①会社全体を考えた改善提案が必要
②利益に直結する固定費の削減を担う
③総務の業務を外注するためにも全体の業務設計力が求められる


中小企業の総務は、経理、人事、法務、その他分類ができない「すべて」を引き受ける存在です。また、総務は会社の働く仕組みを担当する部門です。
各分野の社外の専門家と連携しながら、自社に合わせて業務の仕組みを構築し、会社全体の生産性を向上させていくことが重要な仕事です。


そうした総務の面白さにチャレンジしたいと思う方も「よその総務はどのような工夫をしているのか」という情報は意外と耳に入ってこないのではないでしょうか。

地域企業も地域の中で競争していた時代から、世界の情勢を踏まえて地域で共創していく時代になり、総務に関してもナレッジの共有に目を向けるべきです。

このプロジェクトを通して、まずは企業の総務に従事する人同士が悩みを共有できる場をつくります。


起業家もフリーランスも総務の手助けが必要

日本の開業率がアメリカやイギリスなどに比べて低いことはご存知でしょうか。たとえばアメリカにおける開業率は10%前後で推移していますが、日本は4%から5%で推移しています。そこで、政府の成長戦略では日本も開業率10%台を目指すというKPIを設定し、起業支援に予算を設けています。それによって創業補助金や各地域で創業スクールなどが数多く設けられ、創業へのハードルは下がっています。(図は「中小企業白書2014」より引用)

私自身も税理士として、またSILKのコーディネーターとして、数多くの起業を支援してきました。特に20代の起業家は、今までになかった視点で社会を見ている人が多く、そうした方々が社会課題を自分ごととしてとらえ、起業していくのを見ていると未来が楽しみになってきます。

起業が増えるのは良い流れだと思っています。しかし、当たり前ですが、ほとんどの行政の起業支援は「起業をするまで」の支援です。


もちろん起業後にビジネスの相談に乗ってくれる外部の支援者として、税理士や公認会計士などの士業や金融機関がありますが、それらの支援者は良くも悪くも「外部」の支援者であり、日常の業務を手助けしてくれる存在ではありません。

起業家は、起業して初めて経験するバックオフィス業務に苦戦します。起業がうまくいくかどうかは、初期のバックオフィス業務の仕組みの構築にかかっていますが、その仕組みの構築を軽視している起業家が多いのも現状です。

私はその理由の一つに、クラウドサービスの台頭もあるのではないかと思っています。クラウドサービスを利用すれば、専門家も、専門的なバックオフィス担当者も必要がない。コストが削減できるし、業務も一人で回せるのではないか。

残念ながら、そこでうまく回らないようになるケースが多いのです。


クラウドサービスの利用というのは、アウトソーシングの一つ。基本は、単なるコストダウンではなく、コア業務に集中することで、全体の業務品質が向上することが目的です。ただ「丸投げ」をするのではなく、きちんとした業務の設計が必要になってきます

利便性の高いクラウドサービスを効果的に使うためには、バックオフィス業務全体に精通し、業務を設計できる人材の力を借りていく必要があると考えています。

起業家としても、専任担当者を雇用する方法以外の選択肢にも目を向ける必要があります。そのような相談ができる先も地域にはなかなかありません。

地域の総務が、地域の起業家を支援する環境をつくる。それが、このプロジェクトのもう一つ先の目的です。総務にとっても、そうした起業家を支援する副業の仕事は、メインの勤務先での仕事によい影響を与えるでしょう。


起業家と総務と支援者が、地域のビジネスを支え合う関係をつくる

インターネットは遠くの点と点を結びつけることができます。インターネットで検索すれば、正解らしい答えが見つかります。でも、それはあなたの会社にとっても正解だとは限りません。

これからは、総務が外部の支援者の力を借り、テクノロジーを駆使してビジネスを支えていくことが大切だと考えています。

企業の成長段階に合わせて、起業家と総務と支援者がチームを組み、地域によりよいビジネスをつくっていく。

地域の総務さんは、そのための資質を既に持ち合わせています。大企業の総務さんは、業務区分が明確化しているので、経理や労務の知識に不安を覚える方もいるでしょう。しかし、大企業の総務が持つ専門特化した総務知識もまた、スタートアップを支援する総務の役に立つ。バックオフィス担当者同士の繋がりは、きっと地域にとって意義あるつながりになっていきます。


"SOU-MU"プロジェクトについては、どんなことを考えているのか、またnoteに書いていきますね。

こうした取り組みに関心を持っていただける方は、是非お気軽にご連絡いただけると嬉しいです!

https://twitter.com/shinxtanaka


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田中 慎
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