【明日開催】コラム:高級家具師としてのガレ ―《マルケットリー蝶と花文キャビネット》【西洋美術オークション】
こんにちは。
いよいよ明日西洋美術オークション開催日です。オークションの開始は14時、競りの様子は弊社YouTubeチャンネルでライブ配信予定です。
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※配信URLは明日公開となります。
今回では、アール・ヌーヴォーを代表する装飾芸術家ガレの家具が出品されます。本記事ではLot.107ガレ《マルケットリー蝶と花文キャビネット》をご紹介いたします。
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高級家具師としてのガレ ―《マルケットリー蝶と花文キャビネット》
ガレはガラスだけでなく、家具や陶器の製作にも優れた才能を発揮したことで知られています。
107 ガレ
《マルケットリー蝶と花文キャビネット》
H130.2×W73.7×D42.6cm
天板にマルケットリー銘
鍵なし
落札予想価格
¥1,000,000~¥1,500,000
1885年、ガレは自身の設計による高級家具専用の工房を設立し、本格的に家具製作に取り組み始めました。
本作は、日本建築の設えの一つ、書院造りの違い棚に倣って制作されたキャビネットです。あたかも寺社の屋根のように両端を上方へ反らせた天板をはじめ、ガレが心酔した日本美術の影響が顕著に表われたデザインに特徴があります。
さらに、自然の造形が随所に取り入れられ、可憐に咲く花々と儚く舞い散る花弁、その周囲に遊ぶ蝶が、天板と棚板、側板にマルケットリー(象嵌)によって表わされています。枝を象った透かし彫り、幹を象った支柱や台にも花弁があしらわれ、ガレの自然主義と洗練されたデザイン力が見て取れます。
360度、どこから見てもガレの高級家具師(エベニスト)としての技が光る作品なので、ぜひ細部をご覧ください。
木片を素地にはめ込んで模様を表現するマルケットリー技法を用いて、草花が繊細に表現されています。
マルケットリーは、ガラス工芸の分野でガレが1898年に特許を取得した技法ですが、実は家具の寄木細工にヒントを得て創案されたと言われています。
扉部のガラスには、なんとも優美な花の図がエナメル彩で写実的に描かれています。
ジャポニスムや自然主義といったアール・ヌーヴォーの哲学を感じさせる作としてだけでなく、ガレの芸術のエッセンスであるガラスを組み合わせた家具という点でも大変魅力的で、希少な一点です。
このたびのオークションには、ほかにも同じくアール・ヌーヴォーの芸術家ルイ・マジョレルのソファーセットやベッド、アール・デコの彫刻家Demetre・Chiparusの女性像、ギリシャ・ペルシャ・ガンダーラなどの古代の土器や石仏が出品されます。さらに、フレンチの名店レストラン・クレッセントの特集コーナーには、三菱財閥の創業家である岩崎家注文のテーブルウェア、国立西洋美術館設立の契機となったことで知られる松方コレクションの絵画などの貴重な作品も含まれます。全450ロット、盛りだくさんの内容となりますので、ぜひ下見会でお気に入りの品を見つけてください。
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ご入札は、ご来場のほか、書面・電話・事前のオンライン入札・ライブビッドでも承っておりますので、ご都合に合わせてご活用ください。引き続き新型コロナウイルスの感染予防対策に取り組み、皆様のご参加をお待ちしております。
(佐藤)