ほけんの本当の役割は「家族内のお金の流れをスムーズにすること」だったりする
※「死ぬじゅんび」というイベントのレポート記事になります。イベントの詳細についてはこちらの記事をご覧ください。
「死を考えるということは、あらためて生きることを考えるきっかけになる」をテーマに、クラウドファンディング、保険や法律、葬儀のプロなどを講師に招き、みんなで最新の「死」にまつわるあれこれを学びました。
今回は保険のプロが、生命保険の持つ大事な役割や意外と知られていない火災保険のすごいところを語りました。
外資系金融機関で保険の営業・管理職を経験している佐藤さんはこの道10年のベテラン。相続の専門家として活動しつつ、火災保険、自動車保険などの保険に関するおもしろネタを話すのが得意だそうです。
「保険に入ってないと、こんなときに困る」ベスト3
さて、人生とは英語で「Life」ですが、Lifeの中には「if」が隠れているのだと佐藤さんは話します。
「長い人生、生きていると『もしも』があるかもしれない。ちゃんと中に入ってるんですね」
ドヤ顔でそんな前置きをしながら、本題へ。
保険に入ってないと面倒くさい例として、こんな事例を紹介してくれました。
例1:
・子どものいない夫婦
・3000万の自宅は夫名義
・不動産に保険がついてるので現状、生命保険には入ってない。
【問い】ここで夫が亡くなったら、家のローンはどうなるでしょうか?
【答え】不動産ローンをかけてる人が亡くなるとローンはなくなる。でも所有権は別です。
子供がいない夫婦の場合、両親が存命の場合は、妻が3分の2、両親が3分の1の割合が法定相続分になります。
残された妻が自宅を自分のものにするには両親に1000万円を支払わなければならなくなります。もし生命保険をかけていればそこから払えました。
例2:
・3歳の子どもがいる夫婦
・離婚してシングルマザーに
この場合、生命保険には入っていて「受取人は子ども」というパターンが多いですが、そこでもけっこう問題が起きるそうです。
お母さんが亡くなったら財産がすべて子どもにいきます。でも「未成年」の場合は保険金は受け取れません。
そこで親権者は誰になるか? 別れた夫がなることもできるし、両親や兄弟もなれます。裁判所が審議して決めるので誰になるかはわかりません。
過去にこれと似た例で、生命保険の受け取りが弟になった例がありました。その弟はお金だけ受け取って姉の子は「赤ちゃんポスト」に入れてしまったそうです。
受取人は未成年の子どもにせず、自分の両親にしておくのが良いかもしれません(別れた夫に自分の財産がいく可能性をなくしたいという人が多いそうです)。
例3:
・85歳の父母とその子どもが60歳
・母が認知症で、父は健在
・しかし父が先に亡くなった
・相続権は母と子で2分の1ずつ
遺産分割協議は本人が亡くなってから10ヶ月以内に決めないといけないのですが、受取人が認知症だとその対応が難しくなります。受取人をあらかじめ子にしておくと速やかに受け取れました。
そのように設定した保険に入ってないと、認知症の母が亡くなるまで遺産は分割協議が困難になって、相続したくてもできなくなってしまいます。
過去には父が亡くなり、母がショックで失踪。見つからないまま3年が経過という例もあったそうです。失踪はもっと厄介で、死亡認定まで7年かかります。
遺産の整理はおろか、保険に加入していても保険金の請求もできず、逆に保険料の請求は続くので、保険会社やそれ以外の請求があるものについても、申し出をしないといけないことがたくさん出てきます。
遺言書を書いておくのも有効ですし、生命保険をかけておけば受け取り先を選べるので安心です。
「実は家族内のお金の流れをスムーズにするのも保険の役割なんです」
そう佐藤さんは話します。具体的にはこんなニーズも解決してくれるそうです。
・借金だけ相続しないようにする
・特定の人だけに財産を残したい
誰でも入ってる火災保険でここまでできる!?
最後に豆知識として、火災保険や自動車保険のすごいところを紹介。
・古くなった家のリフォーム
・窓が割れた
・エアコンが壊れた
・洋服が引っかかって破れた
・コップが割れた
・自動車で追突された
・自転車で高齢者とぶつかった
・祖母が電車を止めちゃった(2億円請求されたが自動車保険で)
ふだん何気なく入っている保険でお金が返ってくることもあるそうです。
特に火災保険は家を契約するときにみんな入ってる保険なので、あらためて契約内容を振り返ってみてはいかがでしょうか。意外なところで役に立ってくれるかもしれません。
<文:narumi 写真:T@ka>