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10月29日はつきママを育てた「トラ」ちゃんの誕生日

 16年前の10月29日 早朝彼に出会った。

 当時住んでいた処には宅配ピザのお店が2件あった。その近くの脇道で生後1か月になったか位の子猫が2匹道路の真ん中でひかれていた。黒猫と茶トラのの子猫だった。黒猫ちゃんは即死状態で死後硬直が始まっていた。もう1匹の茶トラは血だらけではあるがまだ息があった。この通りは人通りは多いのに、今まで誰も助けようとはしなかったようだ。

 仕事先に電話。「事故に巻き込まれたので、今日はちょっと休ませてください。」その後 動物病院にも電話をする。(嘘はついていない、確かに猫さん達が事故に巻き込まれたのだから)

 私が持っていた厚手のタオルに死体を包みデイバッグの中に収め、茶トラちゃんは抱いて動物病院に直行した。

 病院で先生から「多分 バイクにはねられたんだね。2か所骨折しているが命に別状はない。黒猫ちゃんがクッションになってくれたんだね。で 子の黒猫ちゃんはどうします。」

「個別に荼毘してください。この子の兄妹をむげに出来ないので。」

「と言うことは、またこの子を飼うんですか。」

「はい、この子たちは昔の私と一緒ですから。私はこの子たちを助けていると言うより、自分自身を助けているんです。だから絶対にほっとけないんです。」

「わかりました。では私も今回の費用は私が出すことにします。だから、きょうの費用はいりません。その代わり約束です。大事にしてあげてください。」

 先生の善意に感謝しながら、かれを自宅に連れて行った。病院で綺麗に拭いてもらっていたが、蒸しタオルで念入りに体を拭いてあげることにした。

 耳の中は真っ黒だった。爪も伸びていたので切る。事故のショックなのか鳴きもしないし抵抗もしない。右後ろ脚が骨折しているので、相当に痛いはずなのに身体を拭いている途中にぐっすりと眠ってしましまった。

  2時間くらいして彼は目覚め、状況を確認している様だ。敢えてほっておくと、ギブスで動きずらい足を引きずりながら家の中を確認し始めた。部屋の隅にお水と水分が多くカロリーが高い餌を置いてあったのを見つけ水を飲みご飯を食べていた。

 足が悪いので段ボールで簡易トイレを作ってあげた。直ぐにそこがトイレだと判り使用していた。環境順応性が高いのか、すぐに家に慣れた。彼の寝床は前まで「いち」君が使っていたものが気に入った様子だ。薬も嫌がらずに飲んでくれる。聞き分けのいい子だ。

 だが、全然鳴かない。「ふー」もない。お互い「何だろう」状態。

しかし未明になると私に膝に自分から乗ってきて、安心した顔で眠っている。時折私がいるか確認し、また寝る。

次の日の朝、私がいなかったので焦ったのがか細い声で鳴いていた。そして私を見つけるとまた鳴き止み「別に何でもないもん。」みたいな顔をしている。

店の許しを得て暫くの間仕事をしている間は、事務所に置かせてもらうことになった。出勤は大き目のウエストバッグに入れていく。時折 そこから顔を出している。すれ違う人は変な男の人が 可愛い猫のぬいぐるみをバッグに入れていると思っているようだった。

病院で彼の名前の欄に「虎之助」と書いてしまった。名前が重すぎるので「トラ」ちゃんと呼ぶことにした。ここから12年間(つきママが来るまでの間)彼との二人だけの生活が始まった。


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なつめ0602
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