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肉 隗

 ある公園で、変な物の怪に出会ったことを書きます。

話は私が20代の頃の話、その時の私は関西地方に住んでいた。

休日でも 薄給でどこに行くでもなく何もすることのない私は、近くの森の中を一人探索していた。

その森は昼なお暗くあまり人が来ない場所だったせいもあり、私のお気に入りの場所になった。

そんな森の中をいつも通り探索中、それに出会った。

ズルズル・ズルズルと音を立て、レンガ色のそれは森の奥に動いていた。

その塊からは悪いものは感じない。見てくれが悪いだけ。

ソレが私に気が付き、近づいてくる。

「お前人間か? 随分と見てくれが悪いが。」とその塊が私に言う。

お前が言うか。

「眼がないみたいだけどよく判るね。」

「失礼な俺にはこんなつぶらな目があるんだぞ。」と深い皴の中に丸く黒い真珠のような眼があった。

「失礼ついでに君は誰。名前はあるのかい。私はなつめっていうんだ。」

「名前って何だ。俺は人間たちから「肉隗」て呼ばれているみたいだな。他の奴が教えてくれた。」

「でっ、君はこの森で何をしているの。私はこの森の探索をしている途中なんだ。」

「俺はこの森で死んだ生き物の亡骸を食って、この森に命の力を返しているのさ。」

「だけど、お前は不思議な奴だな。人間って感じしないな。むしろ俺らと近い感じがする。」

「まあ、ちょっと色々あってね。」

「なつめ 俺 お前の事気に入ったから、教えてやろう。近いうちに大きな厄災が来る、東に逃げな。なるべく遠くの東に。」

「肉隗さんは?どうするの。」

「俺は土に潜り、暫く眠ることにする。じゃあまたな。」

と言ってその肉隗さんとは別れた。

それから3日後私は東京にいた。何故か次の日クビになり、職を求め東京に出てきたからだった。

 その次の日の未明、大地震が起こり火の海になった映像がテレビに映る。

もし肉隗さんに会っていなかったら、私も震災被害者の一人だったことは確かだった。

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なつめ0602
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