今日40歳になった。
今日40歳になった私は昨夜、「39歳のうちに」この先に渡る中国で自分が楽をできるよう、仕事で使う資料の整理をした。
楽をするためには必死に頑張ることができる。そんな滑稽さを思うこともなく、私はひたすら整理を進めた。
で、それができて浮かれた私は、大いに酒を飲んでさらに浮かれ、ちょっとアレな体調で今朝に目覚めることになった。
本当なら倒れていたかったのだが、用事があった。
素晴らしい晴天。鉛をぶち込まれたような脳天。
実にバカな自分らしい、と自嘲しながらタバコを吸ったらモロにえづいてしまい、「うええええ」と声が出た。涙も出た。
それで気づいたが、昨年に39歳を無職で迎えたのと同様に、私は40歳無職だった。
40歳無職。実にリアルな響きだ。
「近所で何かあったら、真っ先に疑われるな」
そりゃそうだと思うと、つい大笑いしてしまった。
用事を済ませた40歳の無職はスーパーに立ち寄り、自分を祝うための酒や食料などを買い込んだ。外食だと心からくつろげないこともあって、これも例年通り自分で料理することにしたのだった。
中国の庶民的な料理である「白菜の黒酢炒め」、誕生日だからとバターを惜しげなく使った卵3個分の「玉子焼き」、それに「セセリのアヒージョ風トマトスライス添え」を作った。
それを自由気ままに食べつつ、ビールとウィスキーの水割りをこれも気ままに飲んだ。
途中でベランダに出てタバコを吸い、「幸せだなあ」と思った40歳無職だった。
先日起こった、女子高校生2人による実況動画配信自殺事件の顛末を知り、とりあえず何とも言えない気持ちになった。
しかし、思えば「今からもう一回、10代をやり直せ」とか言われたらマジで嫌だなと感じた。
だから、何とも言えないし、何も言わない方が正しいのではないかと思った。
ただ、自殺してしまった2人の女の子に、40歳になって昼間から酒を飲んで浮かれ、晴れた空を見上げてしみじみと幸せを感じる未来もあり得たことを思った。
「無職の40歳などお断りだ」と言われたかもしれないが。
そこで不意に気づいた。
「というか俺、無職ばかりか独身の40歳——弱者男性じゃねえか!」
そう、私は弱者男性だったのだ。
知らず知らずのうちに流行の最前線に躍り出た私は、やはり笑ってしまったのだった。
次は41歳だ。来年の今日はちゃんと中国にいるのだろうか。
まあ、死んでいなければ悪くないといえるだろう。
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