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【エッセイ】 今日という日を記録するつもりで|AOU 覚書

AOU アルバムを作りながら、起きたことや、感じたことを、書こうと思う。

作品そのものは、レコーディングされた作品を聞いてそれぞれに体験していただけたら何よりだ。

作品は、もはや作者である私の手を離れ、それぞれの世界との響き合い委ねられている。

この記述は、これらの作品を作者が解釈・解説するものではない。創作の過程における、書き留めずにはいられないことを、ここに記しておく。

アルバムは、2024年10月9日 23時08分に完成した。

完成の瞬間は、なんてことのない日の夜。4歳の娘が眠りにつき、Maiとともに、"明けの空"という曲の六ヶ月前に録ったテイクを聴き始め、聴き終わった時だった。

光はためく 明けの空
歌はじまる 空っぽの庭
流れ出す 水の糸
とめどもなく 僕らを紡いでいく

明けの空 - maishinta

元々、この時(2024年の2月ごろ)のテイクを、そのままアルバムに収録しようとは思っていなかった。これは作品制作において往々に起きることだが、時間的な距離をとって再度作者である私たち自身もまた作品に出合い直すのである。

レコーディングのとても好きな部分だ。

録音した直後の私たちに見えていない景色が、時間を経て聞いた時、迫ってくる。

私たちは二人、秋の夜、娘が寝静まった後に、自宅の食卓で、このテイクを聞いて、どこからともなく涙が溢れて仕方なかった。

そして、私たちは、この"明けの空"において、AOUアルバムが完成したと悟った。

このテイクは、さる六ヶ月前の冬の終わりの頃に、軽井沢に引っ越してくる前、4年間に渡り暮らし、娘を育ててきた家で、二人で歌い、録音した。

その日、レコーディングを始める前にMaiは、「今日という日を記録するつもりで」と僕に言った。

この言葉は深く僕を和ませた。

その時に録ったテイクが、このアルバムのラストを一気に締めくくる。

10曲目の"YES"、11曲目の"自由"、そしてラストの"明けの空"である。

そして、2024年の春に、軽井沢に越してきてから、アルバム表題曲である"AOU"をどのように仕上げていくのかということについて、具体的なアイデアが僕の元にやってきた。

それは、機械的な一定のテンポを使うということであった。

そのアイデアを実行し、ついにAOUのレコーディングが終了した。

AOUという曲は、2020年の夏にすでにほとんど一筆書きで全体を書き終えていたが、録音しようとなると、何かしっくりくるものがなく、4年の時が経った。

その間、さまざまなトライアルを行った。ピアノやギターの弾き語りで録ってみたり、バンド編成で録ったりとさまざまに。

そして、最終的には、打ち込みのリズムを軸においたものとなった。

そうして表題曲AOUは、2024年の夏に完成をみた。
そして、冒頭に書いた、秋の夜、2024年10月17日に、"明けの空"の聴き直しのシーンへと至った。

アルバムの収録の順序は、曲が生まれた順序に従っている。

レコーディング版が完成した時ではなく、最初に生まれてきたタイミングをそのままに並べている。

しかしレコーディングという期間を、経て完成するまでに、時間軸は入り乱れる。

その、"時"が編み込まれていくことで、作品全体に思わぬ深みがおのずから生まれてくると思う。

"AYAME"は、娘の誕生から一ヶ月半のころに書いた。これがこのアルバムの始まりだ。

そして、すぐにコロナ禍という状況が幕を明け、21世紀という新しい時代が本格的に始まったように僕には感られた。

それから4年間に渡り、子育てとコロナ禍という時期に、私たち三人家族がこの地球を生きたという記録でもあり、心象風景であり、世界の記憶でもある。

明けの空は、2023年の初春に、書かれ、その一年後レコーディングされた。
時を同じくして、私たちは、新たな地へと、居を移した。
そこで、懐かしくも新しい仲間にも出会うことになった。

実は、アルバムに収録しなかった曲たちがある。

それらは、きっと、新しい場所に越してきて、出合い直していく中で、また録音されていくことになると思う。

"けれども、それは別の物語、いつかまた、別のときにはなすことにしよう"

果てしない物語を、私たちはそれぞれに生きている。

2024.12.19
written by Shinta

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