【音楽】ニューアルバム"AOU" 全曲Preview|仮名序と夢の景色 - 覚書
来年2月に、リリースするmaishintaの7年ぶりの新作アルバム"AOU"の全曲PreviewをYouTubeに公開しました。
ここに収録された12曲は、この5年間、私たちにとっては、娘が誕生してからの期間であり、同時にコロナ禍という時期であった。娘が生後1ヶ月半の頃に書いた"AYAME"に始まり、昨年の5月にやってきた”明けの空"に終わる。
maishintaの友人でもあるファッションデザイナーの廣川玉枝さんが、ある時、「maishintaがやっていることは仮名序だ」と評してくれた。
僕はその時、「かなじょ?ってなあに?」という具合だったので、それが古今和歌集に添えられた二つの序文の”仮名”で書かれた方のものであると、その場で知ることとなった。
その内容は、
というものであった。およその意味の現代語は以下となる。
これを読んだ時に、仮名序というものが歌の本質について深く知る人によって書かれたと僕は直感した。
「生きとし生けるものの中で、歌を詠まずにいられるものがあろうか」
この感性である。
僕は、玉枝さんが仮名序の存在を伝えてくれたとき、すでにAOUというアルバムを編み始めていた。
そして、この仮名序を見た時に、ここに書かれていることと、自分の中で巻き起こっていることの、不思議な符号を、感じずにはいられなかった。
それは、AOUというアルバムを作るというインスピレーションがはっきりとやってきた日の、明け方に見た夢の景色と通ずうることであったからだ。
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その夢の中で、僕は、大きな河川敷の丘に立っていた。
川に沿ってコンクリートの道が作られていた。それは一見すると東京の荒川の河川敷のように、整備された道のようだった。だが、一つ大きく変なことがあった。それは、河川敷に敷かれたコンクリートの道と、川沿いに繁茂する草原との間に、巨大な高い壁が立っていたのであった。
それは、全く超えようがないほどに高く聳え立っていた。
夢の中で、しかし、僕は、その壁が空いている場所知っていると思い、歩いていくと、隙間が空いている場所を見つけた。(およそ肩幅くらいの狭い隙間だ。)
「ああ、ここここ」と思い、僕は、隙間から草原と川がある方へと頭を出してみる。すると、俄かに信じられないことに、目の前にある風景が音楽となって聞こえてくるのだった。え、っと思い、僕はまたコンクリートの側に、頭を戻す。
すると音は一切聞こえず、影のようなものが深まりあたりの景色から色が消えていた。
僕は驚き、また半身を、壁の向こうへと出した。
すると、やはり、一気に音楽が聞こえてきて、じっと聴いていると、その音楽の正体は、その風景に含まれた、あらゆる存在たちの歌の重なりであるとわかってきたのであった。
花は、花を歌い、草は草を歌って、雲は雲を歌っていた。
空は青く、同時に、夕焼けの色になったり、みるたびに、様子を変えながら、空の歌を歌っている。
土の中に潜む虫たちも、草の陰に走るありたちも、岩場の岩たち、川の水に反射する太陽の光、空を横切る鳥...
そう、全ての生きとしいけるものと、自然物が、歌っているのが同時に僕に飛び込み続けているのだった。
その響きがあまりに心地よく、夢の意識において、見えるものが、そのまま音としても聞こえていることで、不思議な繊細さを持って世界を分蹴ながらも同時に全体を感じることをしていた。
結局、僕は壁の隙間から草原の方へと入り込んで、そして、自分が立つ位置が変わるたびに展開する音楽を浴びながら進んでいった。
先に川があることが、わかっていたが、しばしの間、僕は、その草原をうろうろしていた。
気づくと、いつの間にか、僕は川の前に座っていた。
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この後、川が普通の水ではなく、真っ黒の闇であることに気がつき、その真っ黒な川の中に入っていく。そして、その先の景色を見る。
この先はまた別の機会に書くとして、これらの夢をとても鮮明に覚えたまま、起き、この夢の光景をできる限り鮮明に記録して、気がつくと僕は、AOUというアルバムを作り、それはコロナ禍で作られたということを明言して、発表していくのだとMaiに宣言していた。
(今この文章を書きながら、僕は、不思議な重力を感じている。それは、時空が歪んでいるような感覚だ)
だからこそ、玉枝さんが伝えてくれた「仮名序」に書かれた感性というものは、僕にとってが紛れのない体感であり、仮名序で書かれた和歌の本質と、僕らはどこかで繋がっていると思ったのだ。
そしてそれを自分たちの音楽にとっての祝福であると勝手ながら受け取った。
音楽を作るという体験の中で、世界の全てが、震え、そして歌っていることを、強く感じる瞬間をたくさん持ってきた。その時、私たち自身もまた、細胞の一つ一つ、さらにそれらを構成する原子や素粒子もまた震えていることを、感じる。
その時、僕は、物理学者たちが想定する超弦理論が俄かに信じられるものになる。素粒子の一つ一つが、特定のふるえをもつstringと捉える気持ちが、自然に感じられる。万物が常にオーケストラを奏でていることが、深く了解される。
「全ては繋がっているから」
という言葉が、このアルバムを貫く。
仮名序を書いた和歌の本質を知る人もまた、僕が夢で見たあの世界、生きとし生けるものが歌っている世界を散歩したのだろうと思う。
AOU アルバム覚書
2024.10.23 16:10
by Shinta SAKAMOTO
【maishinta info】
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