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熊ノ話①絶滅寸前!?四国のクマ
先日仲間と作る四国発のアウトドアZINE「YON」の第2号出版イベントが終わった。満員御礼のその会は編集長の仕切りが素晴らしく、自分は連載している四国のクマの話に集中できた。
そもそも祖谷などを撮っている時から、四国にもクマがいるらしいという話は聞いていた。当然ヒグマではなくツキノワグマではあるのだが、この目で見た訳では無いし本当かな?という気持ちのまま時は過ぎ去っていた。
そんな時、コロナ禍が明けそうな時に開催された剣山でのアウトドアの集まりで、クマの頭骨やらを机に並べ、パネルで四国のツキノワグマの展示をしている一人の青年と出会った。
話を聞くと高知でクマの保護活動に携わっており、その活動のために関東から移住してきたそう。真っ直ぐな目で話される四国のクマの話は興味深く、すっかり意識を持って行かれてしまった。
彼の話によると、現在四国には約20頭のツキノワグマが生息しており、愛媛県側ではほぼ絶滅。徳島と高知の県境、特に剣山の南側一帯にしかいないらしい。
九州では近年絶滅が宣言された。種が個体を保有するためには最低でも100頭前後が必要だと言われており、四国のクマも最後のターンに入りつつあるそう。
そんなに数はいないんだろうなと思っていたが、リアルに調査した話を聞くと現実はもっとシビアだった。僕がかつて写真集を作った宇和海も、最後までニホンカワウソがいたと言われるエリアだが、1979年の目撃情報を最後に個体は確認されていない。
一つの種が絶滅するとはどういうことなのだろう。四国のクマは本州のクマとはDNAが微妙に違うらしく、それが失われると2度と取り戻せないそうだ。
確かに北海道や本州では、近年クマの目撃情報が相次いでおり、人里に出てきて騒動になるニュースも増えた。クマが絶滅した九州でも、目に見えて何か不具合が起こっている訳ではない。
ではクマは害獣なのだろうか?駆逐されてよい生物なのだろうか?おそらく人間が恐れる列島最後の野生、それがクマだ。そして人里に降りてきたり登山客が襲われたりしたとしても、一つだけハッキリ言えるのは、クマは決して悪くないということだ。
人とクマの間に起こる事を見極めたい。ここから、四国のクマを追いかける長い旅が始まることになる。
了