【弁護士が解説】下請法⑤と独占禁止法【最終回】
1 おさらい
前回から各論の解説をしております。以下でも残る類型をざっと解説いたします。
2 役務の成果物に係る権利の一方的な取り扱い
フリーランスが仕事を受けた際に成果物について権利が発生します。例えば、イラストや映像や音楽、ウェブサイト等については著作権が頭に浮かぶと思います。これらの権利の行方については契約前に自分が保持するのか、お客さんに渡してもいいのかはしっかり考えて、契約書にしっかり明記すべきです。しかし、フリーランスは権利を保持したいのに、委託先がこの権利の帰属先を一方的に決めるのは困りますよね。下請法及び独禁法はこれを禁止しています(独禁法2条9項5号ロ・ハ、下請法4条2項3号)。
3 役務の成果物の受領拒否
フリーランスがせっかく仕事を完成して納品をしようとすると、委託者が正当な理由もないのに受領を拒否するケースもあります。
当然ながら独禁法と下請法はこれを禁止しています(独禁法2条9項5号ハ、下請法4条1項1号)。ただし、正当な理由があるときは別です。そこで正当な理由とは何ぞやとなりますよね。
例えば、委託先が業績不振である等は正当な理由には当たりません。また検査基準を恣意的に厳しくして検査不合格であるため受領できないというケースも正当な理由ではありません。またあらかじめ決めた納期を勝手に早めることもダメ。
もしご自身がおかれた立場がどうかわからないときは弁護士に相談してください。
4 役務の成果物の返品
返品については詳しくは定めていないケースがほとんどだと思います。そのような場合に正当な理由がないのに返品を要求されて、それにフリーランスが応じざるを得ない場面を想定しています。これも禁止されています。
5 不要な商品・役務の購入・利用強制
委託者がフリーランスに対して、この取引を成功させたければこれを買えとか、取引を続け長ければこれを買えとかいうケースですね。独禁法2条9項5号イ、下請法4項1項6号で禁止されています。
別に直接言わなくとも、分かるよね?みたいなケースも同様です。録音が必要でしょうが、禁止されています。
6 不当な経済上の利益の提供要請
上記5と似ていますが、商品とまでいわなくとも、協力金を出せだの、これを無償でやってくれだのと経済上の利益を強制してくる場面です。独禁法2条9項5号ロ、下請法4条2項4号で禁止されています。
具体例としては決算対策で協賛金が必要だの、システムを作ってもらったんだから保守までしてもらえると思っている場合や、顧客リストを提出させられる場合、あらかじめ定められた使用方法と異なる使用方法をされる場合です。
7 合理的に必要な範囲を超えた秘密保持義務等の一方的な設定
秘密保持義務等には秘密保持義務、専属義務、競業避止義務があります。秘密保持義務とは人には言ってはならない義務で、社外秘のノウハウ等を口外させたくないときに設定する義務です。
専属義務はその名の通り自分以外と契約するなという義務。〇〇事務所へ専属する場合を想定すればわかりやすいです。
競業避止義務は、同じような仕事の内容を同じ地域でするなという義務です。これは相当厳しい義務なので認められる場面が一般的に狭いです。
これらの義務をフリーランスが設定されたとすると大変だろうというのは想像できますね。たとえば、フリーランスAさんがB社と契約し、その中に秘密保持義務があり、今後B社との取引があったことを一切口外してはならないとされた場合や、B社以外と今後一切取引するなと言われることや、B社と仕事した後は同じような仕事を東京でしてはダメだという義務が設定されたとすると困ります。
一方で許される義務設定もありえます。例えばフリーランスを育成するお金を委託者が出してくれたときに、そのお金を回収できるようになるまで専属にする等といった場合です。
これもケースバイケースですので、困ったときは弁護士に相談するのが良いです。
8 まとめ
以上から類型はあるものの、それぞれ判断に困るケースが多く出てきます。委託する側も無知ではないので対策をとって、全く違法であるというア場面はそうないかもしれません。我々弁護士も判例を調べないと議論を組み立てられないケースも多くあります。なので、まずは予防を心がけること、起きてしまったらボヤで済ませる努力をすることです。
そのためには早めの相談が絶対に必要です!宣伝でもありますが、ビジネスをするうえで顧問契約かもしくは密に連絡を取れる弁護士を見つけるということは必要です。我々のクリエイター向け弁護士チームでは無料相談も行っていますので、一度相談されてみてはいかがでしょうか。
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