グラストンベリーで考えた #フェスティバルウェルビーイング について。フェスはもっと人の役に立てるはず
ここにあるものは、人生を大いに豊かする。
ここにないものは、人生に大して必要じゃない。
世界最高峰のフェス「グラストンベリー・フェスティバル」で、グダグダに遊び疲れた最終日の朝に思ったことは、そんなことだった。
「グラストンベリー・フェスティバル」とは、何もない牧草地に13万5千人もの人が集まり、ライブやDJ、アートなど多様なコンテンツで楽しみながら、5泊あまりを過ごす、都市規模の壮大な遊びだ。
13万5千人という数は、木更津市の人口よりも多い。まさしくひとつの街、市に匹敵する数。これはチケットの枚数だから、膨大なスタッフやゲストを含めれば15万人くらいの人が「生活」しているかも。
こんなことを続けて来年で50年というから、変人(もちろん褒めている)のパワーは突き抜けすぎている。
来場者ではなく、事業者としてのフェス
大自然の中で、食べて寝て踊る。美しさも厳しさもある自然体験、マーケットに並ぶ丁寧なモノづくり、ライブでしかありえない高揚感、多くの魅力を持つフェスは今や一年中、世界中で開催されている。
本当に、日本中・世界中で開催されている。日本だけでも毎週どこからしらでやっていて、最近は冬でも室内をつかって開催されている。
一つの事象に、これだけの人が魅了されるんだなぁと不思議な気持ちになるくらい。そのくらい世界中に「フェス好き」が存在する。
その多くは「お客さん」として魅了されているわけだけど、僕はちょっと違う。
フジロックに2013年から毎年行っているけど、チケットは買ったことがない。朝霧JAMにも、ap bank fesにも行っているけど、チケットは買っていない。年に15回くらいはフェスに行くけど、ほとんどチケットは買わない。
僕にとって、フェスは仕事の場だから。
フェスとはメディアである
僕は、フェスに「仕事」として関わり、メッセージを伝える「メディア」として魅了され続けている。
僕にとってのフェスが仕事になったのは「アースガーデン」に所属したから。
アースガーデンとは、日本にほとんどない「野外フェスに特化したイベント制作オフィス」だ。野外フェスを企画し、運営する。クライアントワークとして、主催者と二人三脚で開催までこぎつけることもあるし、大きなフェスの一部のエリアを担当したりもする。野外フェスの広報やメディア運営も行う。
僕は、2011年2月に入社し、フリーランスになった今も一緒に仕事をしている。ここで教わったことこそが「フェスはメディアである」ということだ。
「体験の時代」にフィットするフェス
メディアといえば、ウェブ、新聞、テレビ、ラジオなど「見る・読む・聞く」をイメージすると思う。でも、メディアとは、誰かに何かを伝えるための「媒介」。口で味わい、鼻で嗅ぎ、触ったり踏みしめたり、実際に場所を移動し、体験することで、伝わるメッセージがある。
「『モノ』の時代から『コト(体験)』の時代になった」と言われて久しいけれど、フェスはまさしく「体験」が最大の魅力だ。
フェスは野外コンサートではない。
様々なアーティストが集い、複数のステージで同時進行で行われるライブ。多くの人の腹を満たすフードエリア。ライブにいかない時間も濃密に過ごすことができるマーケットエリア。寝泊まり、休息するための、宿泊エリア。多くの人を安全に受け入れるための電気や水道、トイレ、道路などのインフラ。夢の世界に迷い込んだようなアート、装飾。
こういった複数の要素が絡み合い、期間限定の街を作り上げるのがフェスティバルだ。
来場者は、身体全てをつかって、主催者がつくりあげた幻想の街に迷いこみ、高揚し、疲れ果て、眠る。全力で体験する。
フェスを使って「ウェルビーイング」を伝える
「体験の時代」のメディアとして、フェスが果たせる役割は大きい。とするならば「何を伝えるか」がとても重要だ。
この考え方にも、ぼくに仕事としてのフェスを教えてくれたアースガーデンが影響している。アースガーデンがフェスを通じて伝えようとしているのは「オーガニック&エコロジー」。エコと言う言葉が一般に浸透する前から、アースガーデンでは、サステナブルな社会のためにフェスに関わってきた。もう20年以上になる。アーティストの言葉、出店者の思い、ゴミ分別の徹底や、モールド容器をつかったフェス飯の提供、自然豊かな場所で開催すること自体を通じて、人々に「オーガニック&エコロジー」を訴えてきた。
ただ、個人的には、今の時代になり、もはや「オーガニック&エコロジー」を伝えるだけでは足らないと思っている。
政治・経済の仕組み、LGBTQ、働き方、自由、権利…。ぱっと考えただけでも、もっと改善されるべき要素がたくさんある。フェスが体験の時代にフィットしたメディアなら、もっともっと様々な要素を内包し、伝えていきたい。世界が少しでもいい方向に向かう手伝いをしたい。
そんなときに出会った言葉が「ウェルビーイング」だ。
健康とは、病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態(Well-being)にあること。
Health is a state of complete physical, mental and social well-being and not merely the absence of disease or infirmity.
世界保健機関(WHO)憲章には「健康」についてこのように定義している。
なんだか、頭の中がスッキリ・クッキリした。
僕たちが本当に意味で豊かに暮らすには「ウェルビーイング」でなければならない。「ウェルビーイング」について「フェス」を通じて伝えていく。
これって、最高じゃないですか、と。
期間限定の都市が教えてくれる、人生をウェルビーイングにするポイント
なぜ「フェス」で「ウェルビーイング」を伝えていけるのか、ちょっと言葉足らずだと思うので、もう少し補足したい。
前述した「グラストンベリー・フェスティバル」は50年も一定の区域・期間に十数万人を集め、住まわせ、楽しませてきた。半世紀を経て、必要なものが残り、不要なものは消えていったはずだ。
「グラストンベリー・フェスティバル」には、50年間の時間と、多様な年齢・性別・人種の人々の価値観の振るいにかけられてもなお残ってきた、大切なものがつまっている。
例えばどんなものが、あの場所に存在していただろうか。思いつく限り、書き連ねてみる。
<<グラストンベリー・フェスティバルにあったもの>>
●持参したもの
家となるテント、タープ。それらが集まるキャンプサイト。
折りたたみ椅子や簡易ベッド、寝袋などの家具
暑さから寒さまで対応できる服
雨風を防ぐハードシェルや長靴
パソコンやiPhoneなどの通信機器
通信機器を充電するバッテリー
モノを買うためのお金、クレジットカード
●腹を満たすフェス飯
がっつり肉からビーガン、オーガニックまで揃ったあらゆる文化圏のごはん
あらゆるお酒が販売されてるオフィシャルバー
オフィシャルバーとは区別されたクラフトビールやシードルをつくるマイクロブリュワリー
●個性豊かなマーケット
帽子屋
キャンプグッズショップ
生協(一般的なコンビニより大きいサイズ!)
タイダイ染め
クラフト作家
ポストカード屋、小さいポストもあってあとでちゃんと投函してくれる
ビンテージの古着屋
パーティーグッズ(変な帽子とか、変なメガネとか、変なTシャツとか)
●ジャーナリズム
グラストンベリー・フェスティバルが自主発行する新聞
ガーディアンが特別編集したグラストンベリー限定の新聞
BBCによる中継、映像のアーカイブ
各エリアやステージが運営するオフィシャルのSNS
ファンがつくったSNS
●場を作るたくさんのスタッフ
全体・各エリアの運営スタッフ
キャンプスタッフ
トイレスタッフ
清掃スタッフ
誘導スタッフ
ステージスタッフ
エントランススタッフ
セキュリティ
給水スタッフ
●インフラ、設備
水道
トイレ
電気
携帯の電波
不正入場を防ぐ高い壁
数万人が集まれる巨大な主要ステージ
数千人が集える中規模ステージ
数百人、数十人のための小規模ステージ
グローバルNGOグリンピースが運営するエリア。
十数のステージを有する広大な夜遊びエリア。
1980年代をのハウスシーンを象徴するゲイカルチャーであるゲイバーを再現したDJエリア。
サーカス
映画館
社会問題をディベートするテント
ストーンサークル
会場までの交通手段としてのバス
●人々
あらゆる人種と年齢の無数の人々
酔っ払い
ドラッグでキマってる人
警察官
いい匂いのするゲイのお兄さん
ドラッグクィーン
カメラを向けると笑顔をくれたお姉さん
ジャネットジャクソンを見ながら一緒に踊ってくれたおばちゃん
最初はマナーが良かったのに、だんだんだらしなくなっていた、隣のキャンプサイトの若者グループ
スケッチをするおじいさん
●ライブ
有名、無名問わず、あらゆるアーティスト
そこで起きるドラマ
・とある有名なアーティストは、自らゲイであること、同性結婚が認められていない国がたくさんあること。でも、社会は変えられると呼びかけること。
・UKの音楽史上初めてラップが一位になり、ヘッドライナーを務め、完璧なショーを見せつけたこと。
・差別主義者の政治を強い言葉で批判するTシャツで登場するアーティスト
●自然
ヨーロッパで死者が出るほど猛威をふるった昼間の暑さ
パーカーだけじゃ寒いほどの夜の寒さ
タープのポールが曲がるほどの強風
心に焼きつく幻想的なサンセット、サンライズ
こんな壮大な「社会実験」やメッセージ性のある「体験の場」がフェス以外でできるだろうか?。
できるとすれば、本当の街づくり。でも、街づくりを個人の趣味や思想で行うのは難しい。フェスであればできる。(もちろん、ある程度のお客さんを集めなければ実験はできないけど)
例えば、アメリカで開催されている「バーニングマン」というフェスでは「貨幣経済」に基づく商売が禁止され「贈り物経済」での生活が求められている。期間・区域が限定だからこそ、これからの社会の実験の場としても使える。
「フェスティバル・ウェルビーイング」を考える上で切り口にしたい3つのこと
そんなわけで「ウェルビーイング」を伝える「メディア」としての「フェス」に魅了された僕は、このことについて、どんどん深めていきたい。
今後の自分自身の「軸」として「フェスティバル・ウェルビーイング」に、とことん取り組みたいと思っている。
少し具体化させると、以下の3つの切り口があるかなと。
自然とフェス
僕のフェス体験の源にある、自然の中での野外フェス。空間的な広がりがある自然豊かな場所に、非日常空間をつくりあげ、寝泊まりする。日常から切り離された場所だからこそ、人々の精神をリセットしたり、より大胆な実験の場にしたり、圧倒的な自然体験を伝えることができる。
街とフェス
街中や、既存の設備を使って開催されるフェス。日常と非日常の間にピンを立てることで、より日常に近い形で実験ができる。さらに、自然の中のフェスに比べて、幅広い人にアプローチできる。マーケットエリアで買えるものを通じたウェルビーイングや、月に1度・シーズンに1度の恒例行事として、人々の生活に馴染む提案ができる。
学問とフェス
ここの「学問」という言葉はまだあんまりすっきりしてないのだけど、フェスティバル・ウェルビーイングに関する、実践や思考を体系的にまとめ伝えていきたい。読み物、聞き物(?)、トークイベントなんか。
3年後に本が書けるように。取材やオファーお願いします!
そんでもって、上の3つをぐるぐる回していって(きっと他の要素もでてくると思う)、3年後くらいには本をかけるようにしたい。3年後というのは、なんとなくそんなもんかなぁという期間で根拠はないのだけど(笑)。本が1冊かけたら、もう一歩、世界が広がる気がする。
フリーランスになって、3年。ライターとして、そこそこ稼げるようになったのだけど、もう一歩、自分自身を成長させたい。というか、もっと人の役に立ちたい。そんな自分でありたいと思ったときに、人とは違うアプローチをもって、自分なりに研究実践を重ねることは必須条件。
だからこそずっと探していた自分のテーマ。
「フェスティバル・ウェルビーイング」で、将来的には世界の人々と仕事がしたい。
ラジオ出ます!
実はさっそく、声をかけてもらって、ラジオ出演します。
JFN(JAPAN FM NETWORK)の全国38局で放送される「ON THE PLANET 」にて、30分ほどお話させてもらうのです。
7/10の26:20ごろ~26:50ごろまで。首都圏だと、TOKYO FMで聞けます。深夜だけど、radikoであとから聞けると思う。
宣言するとチャンスをくれる人がいるもので、大変ありがたい。よかったら、ぜひ聞いてください。
継続的に「フェスティバル・ウェルビーイング」についてnoteに書いていくので、ぜひぜひお付き合いくださいませ~!
将来的に「フェスティバルウェルビーイング」の本を書きたいと思っています。そのために、いろんなフェスに行ってみたい。いろんな音楽に触れてみたい。いろんな本を読みたい。そんな将来に向けての資金にさせていただきます。