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勇気(2019年10月28日)

今回のラグビーワールドカップ日本大会で、通訳としてアルゼンチン代表にがっつり関わらせてもらったことは、自分の人生にとって本当に大きなことでした。その中で大切に感じたことがあるので、メモしておきます。(すべて、僕の個人的な見解です。)

第一戦の対フランス戦のこと。前半大きくリードされてしまい、ロッカールームから後半のピッチに向かう選手たちが皆、口々に「Confianza! Confianza!」と叫んでいました。

Confianzaは英語でいうConfidence、「自信」です。「自信!自信!」と叫んでいたのです。大きくて強くて速くて実績もあるアルゼンチンの選手たち。だけれども、世界一を目指す以上、必ず自分より大きくて強くて速い相手と勝負し続けることになる。トップアスリートでも、それより強大な相手と戦う時には、勇気を絞り出して、自信を奮い立たせて、立ち向かわないといけない。世界のトップを目指して競技をするということは、勇気を絞り出し、自信を奮い立たせ続けることなのかもしれない。そんなことを強烈に感じました。

今回帯同した一か月で、チームのメンバーととても仲良くなることができました。なぜこんな風に仲良くなることができたのか、帯同を終えた今、改めて考えてみた時に、↑の場面と、「勇気」という言葉が思い浮かびました。

実は、僕にとっても、今回の仕事はとても勇気が必要なものでした。ラグビーやったことない、通訳やったことない、スペイン語も数年間使ってない、中学高校大学とスポーツは常に補欠レベル(本気でやってそのレベルだったから、ここまで来るのがどれだけ偉大でとてつもないことかが少しわかる)・・・そんな自分が、世界のトップレベルのラガーマン達の最大の挑戦を近いところで応援して支える仕事をするということは、実は、とても勇気がいることでした。

それでも飛び込んだ、その「絞り出した勇気」に、もしかしたら、常に勇気を絞り出して自分たちより強い相手に立ち向かっている選手たちが、共感してくれたのかもしれない、と思ったのです。僕が勝手にそうなのかもしれないと思ってるだけなので、実際はどうかわかりません。ただ、少なくとも、勇気を絞り出して飛び込んだ先で、そんな風にチームが受け入れてくれたことは、僕にとって本当に嬉しいことでした。

15年前、留学先のオーストラリアの大学で、一人でラクロスのチームを始めたことがありました。あの時も勇気を絞り出した感覚がありました。今回の仕事も、それくらい勇気を絞り出した気がします。そして、この二つが、自分の人生の中で一番最高の経験です。

少なくとも僕にとっては、勇気を振り絞った経験こそが、最高の経験になる、ということなのかもしれません。と同時に、本当に勇気を振り絞ったのは、36年生きてきてその2回だけしかない、ということかもしれません。

今回、最高の経験ができました。でも、これを最高であり続けさせず、勇気を振り絞って挑戦し続けて、最高の経験を更新させ続けていきたい。それが僕にとって、今回の経験を一番活かすことになるのかなと思います。そして、そうやって振り絞り続けた先で、今回出会ったアルゼンチンの友人たちと、また更なる高いステージで会うことができたら最高です。

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