技能実習制度について(その2)
さて、前回は2022年時点での技能実習生の国別人数を纏めましたが、今回は過去10年における主要国(中国/ベトナム/インドネシア/フィリピン)の人数推移を纏めましたので、まずはこちらをご覧ください。
技能実習生主要国の過去10年間の人数推移
こちらは厚生労働省の『「外国人雇用状況」の届出状況まとめ』を10年分纏めたグラフです。
厚生労働省さん、データはなるべくPDFではなくExcelで作っていただきたいのとできれば同じ列に数値と割合を入れるのではなく別な行に分けて頂けると民間人は編集しやすくなると思います。。。
厚生労働省さん、データはなるべくPDFではなくExcelで作っていただきたいのとできれば同じ列に数値と割合を入れるのではなく別な行に分けて頂けると民間人は編集しやすくなると思います。。。
グラフを見るといくつか気になるポイントがあると思います。
ベトナムの伸長(2013年〜2020年)
中国の減少(2013年〜)
ベトナムの減少(2020年〜)
インドネシアの伸長(2022年)
それぞれのポイントについて、解説していきます。
1.ベトナムの伸長(2013年〜2020年)
2013年に17,192人だったベトナム人技能実習生は、2020年には218,600人と、約12倍にまで人数を増やしました。
これは、2013年から2020年まで増加した技能実習生の約70%をベトナム人が占めていた、という驚異的な割合です。
2.中国の減少(2013年〜)
10年間のデータで作成したのですが、実は丁度2013年から中国人技能実習生は減少しています。
中国の一人あたりGDPが7,000ドルを超えたのが2013年で、「わざわざ日本に出稼ぎに行くより自国内で稼いだ方が良い」と判断された基準になると考えられます。
そんな中国も今や一人あたりGDPは12,814ドルまで上昇していますので、「今後中国人技能実習生が増加する」という事象は近い未来では発生しないものと思われます。
また、2019年からの急激な減少は上記の経済的合理性の欠如に加え、コロナ禍による影響と考えられます。
3.ベトナムの減少(2020年〜)
2020年までは順調、と言うよりも驚異的な増加を見せていたベトナム人技能実習生数ですが、中国と同様コロナ禍の影響により初めての減少に見舞われています。
実はコロナ禍の影響に加え、急激な円安も「日本で働くこと」のメリットを大幅に削り取っています。
ここ10年間の技能実習制度を支えてきた、と言っても過言ではないベトナムですが、この急激な円安や、諸外国の台頭もあり「労働力輸出先として日本の優位性は既に失われている」と考えたほうが良さそうです。
実際、筆者が働くインドネシアの送りだし機関にも日本企業の皆さんから「ベトナムで募集しても前ほど人が集まらない」「ベトナムで送りだし機関をやっていた中国系事業者が他国へ移転している」等、今後ベトナムでの技能実習生募集が困難になると思われるコメントも頂いています。
4.インドネシアの伸長(2022年)
なぜか厚生労働省のデータでは2017年以前のインドネシア人技能実習生の数値が公表されていませんでしたので、ここ5年間の推移のみ、のグラフになっています。
他国のグラフに比べ、インドネシア人技能実習生数はコロナ禍の影響による減少は見られず、2022年には他国には見られなかった「大幅増」すら見られます。
これまでを纏めると・・・
4つのポイントから推移を見てきましたが、これまでを纏めると
中国人技能実習生は恐らく今後増加することは無い
ベトナム人技能実習生もこれまでのような驚異的な増加は見込めない
となるかと思います。
そうこうしている間にも日本の労働人口は大幅減少を続けていますので、たとえ本来の趣旨とはかけ離れているとしても「技能実習制度による労働力の確保」は課題解消の手段としては引き続き有効であり、中国/ベトナムにおける上記のネガティブな状況を打破するためには「2カ国に変わる供給源」が求められている、そんな状況だと理解しています。
次回は昨今ニュースを賑わせている「今後技能実習制度はどうなっていくのか」について、政府有識者会議の進行状況などを前回同様Q&A形式でお伝えしていきます。