What does "ママチャリ" stand for ??
ワーホリ中、最初に少しだけホームステイさせてもらった、クリスと美佐子さん夫婦。
クリスは日本に来たこともあるし、日本語の勉強も始めたところだった。ひらがなが読めるようになって、ある日私が遊びに行くと、鳥の名前の読み方を練習していた。
「てのり ぶんちょう」
って書いてあるのを、クリスがメチャ良ェ声で、それに彼は発音が驚くほどキレイだったからとても自然に
「てのり ばんちょう」
って言ったのを聞いて、爆笑してしまった。
「ちょっと間違えただけでそんなに笑って…‼︎」
と機嫌の悪くなったクリスに、
"パームトップ のサイズなのに メチャメチャ スケアリー で オールドファッション な スクールギャング のリーダー"
を説明するのは大変だったが、意味が分かると面白がってくれた。
今思えば、スマホでググってハイッて画像を見せる、みたいなこともできない時代に、一生懸命ボキャブラリーを駆使して伝えようとしてたのは非常に良い訓練だったな…と思う。
私はクリスの実家のクリスマスパーティーに招待してもらった。
このクリスマスパーティーの話はまた改めてお話したいな…。素敵だった。クリスマスって、本来こうなんだな、って思った。
で、そのクリスマスパーティーのディナーも終わって団らんしてる時に、クリスが家族に、「日本で見たビックリしたこと」を話し始めた。
「日本で見た "ママチャリ" はすごかった!」
ってクリスが言う。
クリスが見た "ママチャリ" は、美佐子さんの地元、関西では当時から多分割と一般的だったと思う。
オーストラリアでは基本的に自転車は日本より厳しく「車両」扱いだから、必ず車道を走る。ヘルメットも必須。
だから余計に日本の、それも関西の都会における自転車事情にビックリしたんだろう。
「日本の お母さん たちは凄いんだ。自転車の前につけたカゴに、スーパーで買った食材を載せて、後ろには特別なシートを付けてそこに子どもを乗せて、すごく重そうな自転車をガンガン漕いでる‼︎」
当時、社会人て1年だけ兵庫県明石市に住んで、神戸・大阪・京都も割とよく行ってた私も、確かにこの「三都物語」の自転車率、そして各都市の自転車のドラテクには目を見張ったものだ。
特に京都では、壁と電柱の間にハンドル幅+数センチしかないような隙間でも、前カゴにパンを載せたオバちゃんが奇跡みたいなテクニックですり抜けていく。
オーストラリアでロードバイクか子ども達のBMXかしか見てきていないクリスには、さらに衝撃的だったコトだろう…
クリスは続ける。
「それで、さらに面白いのは、その自転車の名前! "ママチャリ" って言うんだけど、この語源は…
"Mama's Chariot" …‼︎」
…エッ⁉︎
ママ…チャリオット…⁇
「チャリオット」とは、古代の戦争で用いられた戦争用の馬車のことで、今ある兵器で言えば戦車みたいなもの。
エッ? エッ…⁉︎
「ママのチャリ機」、「ママのチャリンコ」で「ママチャリ」じゃないの…⁉︎
イヤ、しかしママの戦車(= チャリオット)とは上手いコト言うたな…! おっと安心して黙ってる場合じゃない!オレが突っ込まずに誰が突っ込む!
慌てて訂正します。
「クリス、"ママ's チャリンコ" だわ…本当は」
私:「"チャリチャリチャリチャリ" っていうのが、バイスィコー を漕ぐときの チェーン の ノイズ で、"チャリンコ" とか "チャリ" って "自転車" って意味なんよな…。だから「ママチャリ」って、ママの自転車って意味でオレは理解してる。」
コレはさすがに皆の前でキマリ悪かったな…と思ってたら、クリスが速攻で
「でも "ママ's チャリオット」の方がインパクト強いじゃん、面白いじゃん…‼︎」
…って切り返してきて、コレにはさすがに
「その通りだな…‼︎」って爆笑。
だからそれ以来、いわゆるママチャリからは、古代の鎧に身を包んだお母様方が、我が子のために戦いへと出陣するチャリオットのオーラをビシビシ感じるようになったし、なんならもはや「ママチャリ」は「Mama's Chariot」って意味で捉えてる。