息子とラジオとバンドの話
たぶん4年前に書いた文です。ふと思い出し、当時は日の目を見なかったので投稿します。
拙い箇所があったので、少し修正しました。
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ボクには高2の息子がいます。
高1のGW前に「勉強ができなくなるから」という、ボクが反対しない理由を見つけて野球部をやめてから、平日の夕方や休みの日を気ままに過ごしています。
野球をやめるとすぐ買ったエレキギターを弾いたり、ボクが聞いたことのない名前のバンドをスマフォで聞いたりしながら。
ボクの高校時代は、野球と勉強に明け暮れる時間でした。女子とは縁がなかったけど・・・
野球のチームメイトとは、30年近くたった今でも、県大会の準決勝で惜敗した試合を肴にお酒を飲んだりしています。
勉強のほうも、行きたかった東京の大学に指定校推薦で合格しました。
ゼミとサークルと某テーマパークのキャストのバイトで充実した4年間でした。
休みの日には、神宮に野球を、国立にラグビーを見に行き、仲間と肩を組んで母校の校歌を誇らしく歌っていました。
社会に出る前のモラトリアムでしたが、かけがえのない時間でした。
息子にも、充実した学生生活を送ってほしいと思っています。
いろんなアプローチで生活を変えるよう息子に話してはみるものの、共感・納得するように伝えることができず、時には、大声のケンカになることもありました。
親として、人生の先輩として、愛しい息子にちゃんと伝えたいなあと思いつつ「高校生なんだから、自主性に任せよう」という便利な理由でぼんやりさせたままにしていました。
いつか伝えてあげようとは思いつつ・・・
高2の初めころから、深夜1時過ぎ、大きな笑い声が息子の部屋から聞こえるようになりました。
仕事で疲れているボクの安眠妨害になるのに耐えきれず「何しとんの?」と聞いてみると「ラジオ」とだけ言いました。
決まった曜日には夜遅くまでラジオを聴いて、時には、寝坊するようになりました。
同じころ、深夜ラジオの影響からか、息子は「お笑い」にも興味をもつようになりました。
エレキギターとラジオに加えて「お笑い」も、息子の気ままな生活に加わりました。
そのころ、息子が「フジのシムラさん」と言っているのを聞いたことがありました。
フジテレビに出ている「志村けん」のことをさんづけで呼ぶなんて「高校生になっても中二病だな」と思ったりもしていました。
ボクも高校生のころは、勉強の息抜きにちょくちょく深夜ラジオを聴いていました。
ビートたけし・中島みゆき・とんねるず・ユーミン・・・親に勉強しているように見せかけて、内緒で、笑いを押し殺して聴いていました。
ふと懐かしく思い、スマフォに録音し、通勤時の暇つぶしとして、ひさしぶりに深夜ラジオを聴いてみました。
昔とパーソナリティは変わりましたが、変わらないおもしろさがあり、息子のおかげで、ボクの通勤時の楽しみとなりました。
しばらくいろいろ聴いているうちに、ある番組のエンディング曲が、何度も、ふとした時に頭の中でリフレインするようになりました。
メロディが心地好くて、歌詞の雰囲気もいい感じの曲でした。
今年の夏休み。
奥さんから「子供たちが家族旅行でロッキンジャパンに行きたいと言ってるけど、どう?」と相談されました。
昔バンドをやっていた奥さんと違い、フェスなんてまったく興味はありませんでしたが、リフレイン曲のバンドも出るということで、家族で行くことになりました。
あとで、チケット代がひとり1万3千円、家族5人で6万5千円と知り絶句しましたが・・・
片道7時間、車の運転はとても疲れましたが、とても楽しめました。
帰り道には「いい思い出になったね」と息子たちに話していました。何年たっても思い出すのだろうなと・・・
お目当てのバンドは、残念ながらリフレイン曲の演奏はありませんでした。
フェスのあと、真夏のピークが去っても、高2の息子は、相変わらず気ままに日々を過ごしているように見えました。
そのころは、ボクから息子へのアプローチはほとんどなくなっていました。話すことを迷っていたのかな・・・
ただ、息子は高校を卒業すると、おそらく家を出ることになるので、せめてそれまでにはなんとか伝えたいと漠然と考えていましたが、残りの時間は少なくなっていました。
フェスのあとも、あいかわらず、ときどき、リフレイン曲は頭の中でかかっていました。
ある日、録音していた深夜ラジオをすべて聴き終わって時間をもてあました時にリフレインしたので、いい機会だと思い、ネットでリフレイン曲を探してちゃんと聴いてみました。
もしも過ぎ去りしあなたに
全て伝えられるのならば
それは叶えられないとしても
心の中準備をしていた
冷夏が続いたせいか今年は
なんだか時が進むのが早い
僕は残りの月にすること
決めて歩くスピードを上げた
・・・
気になっていた理由がなんとなくわかりました。
次の週末、昔よく一緒に行った銭湯に息子を誘いました。
湯船につかりながら、今後について、ちゃんと息子から話を聞いて、ボクから息子に、今後願うことを、ちゃんと話しました。
おそらく、ボクが伝えたかったことを理解してくれたと思います。
いまのところ、行動が変わっているようには見えませんが・・・
リフレイン曲は「フジファブリック、赤黄色の金木犀」
作詞作曲は、2009年のクリスマスイブに29歳で急逝してしまった「フジの志村さん」です。
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息子は、1年遅れましたが大学に合格し、今は東京で一人暮らしです。
来週会いに行きます。