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【感想】私の恋は孤島の花~もう一度読む『ささめきこと』1巻①~

前回のあらすじ

 懐かしい百合漫画たちが懐かしくなってしまった筆者は、『ささめきこと』をもう一度読みたくなってしまう。「どうなっちゃうの~!?」
 ということで、これからちょくちょく、アニメ化もされたいけだたかし先生の名作『ささめきこと』を読み進め、感想を語っていこうと思います。

その1 ささめきこと

 この1話は、もともと読み切りだった部分ですね。ここでの登場人物は

  • 主人公

  • 風間

  • 友達

  • 先輩

  • 男子生徒

 です。
 ……そう、この「読み切り版」では、風間以外の名前が登場していないのです。私は今回、初めて気づきました。かなり驚いています。新しい発見って、あるもんですなぁ。

 この「読み切り版」は、視点を主人公(以下純夏)に置きつつも、ほとんどが風間の回想によって成り立っています。これは純夏の「好きな人の話」と言い換えることができます。しかし、その「好きな人」である風間は終始、純夏に向けて「好きな人の話」をしています。
 これが、「友人二人に自分の恋愛経験を語り、悲恋に終わるも純夏が寄り添う風間の恋」と「モノローグによってしか語られることのない内に秘めた純夏の恋」の対比になっているのです。
 風間の恋も確かに悲恋なんだけど、誰にも言えない純夏の恋には、それとは比べられない悲しさがあるよね……

 で、ここで個人的にポイントだと感じているのが、純夏の恋が「誰にも言えない」理由について「相手が女性だから」という要素を排除していることです。これはかなり意図的にしていると思っていて、風間のオープンな性格もそのためであると考えています。
 純夏の苦悩から社会的な要素を排除し、より個人的な「純夏と風間の問題」にスポットを当てている。これは2007年当時の、それも非専門誌の作品としては珍しい傾向だったのではないでしょうか。(当時のことはあまり知らないので憶測で語っていますが)

 もう一つ、「あぁ、この作品のこういうところ好きだったなぁ」と懐かしくなったのが、デフォルメキャラを混ぜる独特の作風です。特に印象的なシーンをパシャリ

風間が先輩の男子生徒への好意に気がつく場面。
風間は自分の願っていた恋を想起する。

 ささめきことにおけるキャラクターのデフォルメは、多くの作品同様ギャグ的な印象を高めるために用いられることもありますが、それに限らないことが多々あり、このシーンもその一つです。
 風間の描く理想の恋愛を「デフォルメキャラ」で描くことによって、それが「現実とかけ離れている」ということを効果的に示しています。なんとも物悲しいシーンであり、デフォルメの可愛さがそれを引き立てています。
 ささめきことのデフォルメキャラのデザイン自体、パペットを感じさせるので、「お遊戯」感が出ていて、非常に悲しくなる。

その2 かわいいひとたち

 ……というように続けて、1巻すべての感想を書こうと思いましたが、その1で語りすぎて疲れたのでまた次回。

(ネコ彦)

今回の書籍

ささめきこと 1(いけだたかし/メディアファクトリー)

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