女性のみで舞ったのは史上初!?数百年続く祭りと、手づくりの暮らしに当事者として関わる<「祭りと暮らし」フィールドワーク&プロトタイプ報告>
東京から車で5時間。
コンビニもファミレスも、そして信号機も村内にない「長野県天龍村」
高齢化率は60%越えで、全国で2番目に高いのです。
観光資源も少ないため、親戚がいない限りは訪れることがなかったかもしれない村へ9名の参加者が向かいました。
本記事では、「信州つなぐラボ」のプログラムの中で、「フィールドワーク」・「プロトタイプ」*として、2回に渡り行われた現地での活動をレポートします。
補足
「信州つなぐラボ」の第二期プログラムの流れついて
<11月初旬:フィールドワーク>
村に初めて足を踏み入れ、現地の人と交流。参加者のやってみたいプロジェクトの種に出会う滞在です。
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<11月中旬〜12月中旬:村でやりたいプロジェクトの構想@東京>
村で出会った地位資源をもとにプロジェクトを考えます・
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<12月下旬〜1月:プロトタイプ>
構想したプロジェクトを村で試しにやってみる期間です。
フィールドワーク1日目:地域の資源・祭りと出会う
秘境駅好きが集う路線「飯田線」
天龍村へ向かうための公共交通機関は、この飯田線のみです。
村役場の前にある「平岡駅」到着すると、そこには見慣れないものが沢山あります。
お昼に食べたのは、「ていざなす」のステーキ。
サイズ感が伝わりづらいのですが、ひじから指先ぐらいまである大きくてジューシーなナスです。
地方都市や観光地ではなく、「ここでしか味わえない」ものに沢山出会う滞在となりました。
地区のキーマンたちとの交流からスタート
駅から役場の方にマイクロバス45分。
今回の舞台となる、向方地区に移動します。
まずは、地区会長さんをはじめ、地域の活動の中心を担う方々から、地区や祭りの歴史などを語ってもらいました。
特に印象的だったのは、誰も地域の歴史について「正解」を知らないということです。「〜だと思うんだ」、「〜と言われてるんだ、正しいかは分からんけど」という語尾が多く、伝聞・解釈の積み重ねを通して、この地域の文化が残っていることを感じさせられました。
(祭りについての内容の一部は、以下リンクにもあります↓)
話を聞いたあとは、山奥へ。
観光客が訪れる場所ではなく、村の人しか知らない、地区の成り立ちが分かるスポットへと案内してもらいます。
あっという間に時間はすぎ、日が暮れてきました。温泉・夕食を済ませ、祭りの舞の見学へと備えます。
思っていたのと違う...?迫力の舞
お祭りと聞くと、御神輿や屋台といった派手なものを想像しがちです。
しかし、この地区に数百年受け継がれている「お浄め祭り」は、質素です。
地域の人も「子供の時は、大人がなんで踊ってるんだか分からなかったんだよ。つまらないんだ」というほど。
今回は、その練習の様子を見学させてもらいました。
力強く迫力のある舞に、参加者の中には思わず涙を流している人も...。質素だからこそ、舞の人の熱量がよりダイレクトに伝わってきます。
「こんな、祭りがあるんだ」という驚きの声と共に「舞ってみたい」と早速、地域の人から舞を教わる参加者もいました。
練習の見学後は地域の人と飲み会が始まります。舞の話を肴に、地域の人と参加者の距離が一気に縮まる時間となりました
フィールドワーク2日目:栃の実、干し柿造りなど、田舎の暮らしっぷりを満喫
2日目は、栃の実や柿の皮むきなど、村の人たちが昔から培ってきた生活の知恵を学びました。
栃の実の皮をむく機械も全て、村の人たちの手づくり。地域の人たちの「暮らし」に対する意識の高さには、驚かされました。
「祭りと暮らし」というテーマを設定した際に、「ハレとケ」のように、派手な祭りとそれを支える暮らしをイメージしていました。
しかし、2日間のフィールドワークを通して「祭り」も「暮らし」も、どちらも大切に受け継がれています。
天龍村は、何かキッカケがないと来ない村かもしれません。ただし、一度来るとまた来たくなり、村の人と会いたくなる。そんな魔力を持った村でした。
2日間の出会いを持ち帰り、プロトタイプでは実践的な活動を行います。
プロトタイプ:祭り・暮らしに「担い手」として関わる
フィールドワークを通して、参加者が3つのチームに分かれ、天龍村でやってみたいことをプロジェクトとして実践しました。
①チームドラゴンボール
村の伝統料理や祭りを軸に、村内外の人が集まる場づくりを行っていく。
②チームおどっちゃおう!
SNS等で村に関わる人を増やすため、魅力発信を行っていく。
③天龍ヒストリア
村の歴史をカルタにまとめ、村在住の若年層への魅力発信を行いました。
そのプロジェクトの一環として、12月下旬に行われたプロトタイプでは
・村のおばあちゃんたちに、伝統的な料理を教わる
・祭りの担い手として練習や本番に参加
・郷土史に関するヒヤリング
の3つを、村の暮らしを体験しながら行いました。
地区の一員として、正月に向けた料理・門松の準備を一緒に
年末の滞在であったため、村の人と一緒に正月の準備をしました。正月に飾るものといえば、門松です。この地区では、「一家に一台」ではなく、「一地区に一台」という規模感の大きな門松をつくります。そのお手伝いをしました。
門松づくりの傍らで、正月に伝わる料理のレシピを教わりました。その様子は、年末年始の親戚の集まりのよう。シンプルな味付けで、村の食材の美味しさが引き立つ逸品ばかりでした。
(料理の完成は、翌日の昼食までお預けとなりました)
「祭りの担い手」として村内外の人が一つになる
お祭りに向けた舞の練習が夜には行われました。参加者のうち、舞い手になりたい人は、一緒に練習しました。
この夜だけでなく、1/3の本番直前まで練習は続きます。参加者の一部は本番前の一週間程度、村に泊まり込みながら練習に参加。本番では、祭りの歴史上初めて、女性だけで一曲舞うという、奇跡へとつながりました。
村との関わりは始まったばかり
翌日のお昼には、昨日仕込んだ料理をつつきながら、村の人たちと交流しました。
村の人との関係性は、親戚そのもの。村の歴史の話から、近況まで様々な話が飛び交っていました。
「信州つなぐラボ」を通した最も大きな収穫は、プロジェクト以上に村の人との関係性かもしれません。昼食の会話は、自然と村のこれからの話になっていました。