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「仕事のやる気が出ない…」は何が原因? ハーズバーグの二要因理論でモチベーションを再点検!

こんにちは。キャリアカウンセラーのしんです。
「会社に行くのがなんとなく憂うつ」「転職を考えているけど、何が不満なのかわからない」という声をよく聞きます。そうしたモヤモヤを整理するのに役立つのが、心理学者フレデリック・ハーズバーグ(Frederick Herzberg)の二要因理論です。
「給料が低いからやる気が出ないのか?」「上司との人間関係がつらいから?」「成長実感が足りないから?」――仕事の満足・不満足を2種類の要因に分けて考えることで、自分にとって何が本当に重要なのかを客観的に見つめ直せます。


1. ケース:35歳の営業職・杉本さん(仮名)の悩み

プロフィール

  • 名前:杉本 真一(すぎもと しんいち)

  • 年齢/家族構成:35歳・既婚、子ども1人(小学生)

  • 職種/経歴:大手メーカーの営業職として10年以上勤務。ルート営業メイン

悩み・課題

  • 最近仕事が楽しくない

    • 以前は新規開拓のプロジェクトでモチベーションを高めていたが、業務再編でルート営業が中心になり刺激が少ない。

  • やりがいを感じられず停滞気味

    • 同僚や部下は「転職を検討中」「副業始めようかな」と言っているが、自分は「とりあえず今の会社に居るしかない」と思い込み、日々悶々としている。

  • 給与や福利厚生への不満

    • 妻と子どもの生活を考えると、安定はありがたい一方で、「もっと稼げる仕事があるのでは?」という思いも拭いきれない。

  • 自己成長の機会が少ない

    • これからのキャリアにおいて専門性を身につけたいが、営業でのルーティンワークが続き、ステップアップの道が見えない。

杉本さんのように、漠然と「このままでいいのか…」と思い悩む方は多いのではないでしょうか。そんなときに役立つのが、ハーズバーグの二要因理論です。


2. ハーズバーグの二要因理論とは?

ハーズバーグの二要因理論は、仕事の満足度を「動機づけ要因(Motivators)」と「衛生要因(Hygiene Factors)」の2つに分けて考えるモデルです。

  1. 動機づけ要因(Motivators)

    • 仕事に対して“満足感”や“やる気”を高める要素

    • 具体例:達成感、承認・評価、責任、成長機会、仕事そのもののやりがい など

    • これらが十分に満たされると、“もっと頑張ろう”という積極的なモチベーションが生まれます。

  2. 衛生要因(Hygiene Factors)

    • 不足すると“不満”や“嫌気”を感じやすい要素

    • 具体例:給与、福利厚生、職場環境、人間関係、上司の管理方法 など

    • これらは“ゼロベースを満たす”ために必要な条件で、不十分だと不満になりますが、充足しても直接的に“やる気爆上げ”にはつながりにくいとされています。


3. 杉本さんのケースに当てはめてみよう

  • 動機づけ要因

    • 仕事自体のやりがい:営業の新規開拓やチームリーダーとしてチャレンジしていた頃はモチベ高

    • 成長機会:新しいスキル習得やキャリアアップに繋がる仕事内容だとやる気が湧く

  • 衛生要因

    • 給与・安定:家族を養う上で、いちおう不満はないが「もっと給料が高い会社は?」と考えることも

    • 人間関係:部下が転職を検討しておりチームのモチベが低下。上司も忙しくフォローがない状態

ここで見えてくるのは、杉本さんが動機づけ要因である「達成感」や「成長実感」を現在あまり得られていない点。一方、衛生要因も「同僚の離職検討」「微妙な給与水準」などで、決して充足しているとは言いがたい。結果として、「不満足の度合いはそこそこ高いが、満足する要素も乏しい」という、あまり良くない状態に陥っています。


4. 仕事の満足度を上げるにはどうすればいい?

ハーズバーグ理論から言えるのは、「不満を減らすだけではモチベーションは上がらない」という点です。
衛生要因を整えて“不満をなくす”ことも大切ですが、それだけでは“やる気満々”にはなりません。モチベーションを高めるには、動機づけ要因をどう満たすかに注目する必要があります。

(1) 衛生要因の“最低限”を確保する

  • 上司や人事部に相談

    • 給与や労働時間などが過度に低下しているなら、正当に異議を申し立てたり条件交渉を試みる。

  • ワークスペースの改善

    • 在宅勤務環境やオフィス環境がストレスになるなら、機材や配置を工夫。適切なツール・IT活用で効率UPも期待できる。

  • 人間関係の調整

    • 部下や同僚とのコミュニケーション不足は“職場の空気”を悪くしやすい。定期的に1on1や雑談タイムを設けるなど、小さな対策を始めてみる。

(2) 動機づけ要因を増やす工夫

  • 新プロジェクトへの参加・発案

    • 会社の中で新規案件や改善提案を探し、自ら動く。責任・裁量が大きい仕事はモチベーションに直結する。

  • 自己啓発やスキル習得

    • オンライン講座や資格取得、勉強会参加など。「自分はまだ成長できる」と感じられる仕掛けを作る。

  • 社外活動や副業でやりがいを得る

    • 本業以外の場で自分の能力を試すと、新しい刺激が得られる。社会貢献やボランティアも「達成感」を感じやすい。

注意しなければいけないのは、同じような内容でも人によってどちらに分類されるのかが変わる可能性もあることです。たとえば「給料」について給料が上がることでモチベーションにつながる(→動機づけ要因に分類される)」人もいれば、「最低限の給料があれば安心できる(→衛生要因に分類される)」という人もいます。あなたはどちらに当てはまりそうですか?


5. 読者参加コーナー:衛生要因 or 動機づけ要因、どっちが不足している?

以下の2種類のチェックリストを見比べ、あなたが強く「当てはまるな」と感じる項目を確認してみましょう。

A. 衛生要因チェックリスト

  1. 給与が業界水準と比べて明らかに低い、もしくは上がる見込みがほとんどなく不満だ

  2. オフィス設備や在宅勤務環境が不十分でストレスが多い

  3. 上司や同僚と気まずい空気で、相談しづらい/情報共有がスムーズにいかない

  4. 職場のルールやマネジメントが納得いかない(過度な管理、評価基準の不透明など)

  5. 福利厚生や有給取得などが実質的に制限されていて物足りない

B. 動機づけ要因チェックリスト

  1. 最近「これを達成できた!」という成功体験をしていない

  2. 上司や周囲からのフィードバック・評価があまり得られず、自分の頑張りが認められていないと感じる

  3. 責任ある仕事やリーダーのポジションを任されていない/逆に責任回避している

  4. 「この仕事を通じて成長できている」と思う場面が少ない

  5. そもそも今の仕事内容に興味が持てず、面白みを感じていない

どちらに多く当てはまりましたか?

  • 衛生要因(A)に多くチェックが入った

    • 給与や人間関係などの不満が大きいほど、現状は“ストレスフル”と言えます。

    • まずは不満要素を可能な範囲で排除・改善し、最低限の“快適さ”を確保することが急務。

  • 動機づけ要因(B)に多くチェックが入った

    • 大きな不満はないけれど、やる気が湧かないと感じている場合は、動機づけ要因の不足が原因かも。

    • やりがいや達成感、成長機会をどう作るかが次のステップとなる。

両方に当てはまる場合は、不満を感じながらも「楽しい」「成長できる」と思える要素も乏しい状態かもしれません。モチベーション低下や転職リスクが高くなるので、両面からアプローチしてみると良いでしょう。


6. まとめ:不満を減らすだけではやる気は高まらない

ハーズバーグの二要因理論は、「給料や職場環境などの不満要素がない状態=自動的にやる気が高い状態」ではない、という重要な示唆を与えてくれます。満足を得るためには、達成感や承認、成長実感などの動機づけ要因をいかに得られるかが鍵。

衛生要因(Hygiene): 不満をなくす最低ラインの確保
動機づけ要因(Motivators): やりがいや意欲を引き出す仕掛け

杉本さんのように、「会社や上司が悪いのかな…」と悶々とするだけでは解決しない場合も多いです。まずは自分の現状を整理し、「実は給与よりも新しいチャレンジが欲しいのかも」「実は評価されていないと感じるのが不満の原因かも」と、具体的な要因を洗い出してみましょう。

もし不安や行き詰まりを感じたら、コメント欄やお問い合わせフォームでお気軽にご相談ください。あなたにとって最適な衛生要因と動機づけ要因を整え、イキイキと働ける環境を一緒に作っていきましょう!


参考文献

  • Herzberg, F. (1968). One More Time: How Do You Motivate Employees? Harvard Business Review.

  • Herzberg, F., Mausner, B., & Snyderman, B.B. (1959). The Motivation to Work. John Wiley & Sons.

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、法的・医療的アドバイスではありません。個別の状況に応じて専門家(医師・弁護士・公的相談機関など)へのご相談をおすすめいたします。

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