タイ航空が経営破綻 政府系大手で初、更生手続きへ タイ政府は19日、経営危機に陥ったタイ国際航空の法的整理を閣議決定した。破産法に基づく会社更生手続きを裁判所に申し立てる。事業を継続しながら債務再編やリストラを実施し、経営再建を目指す。新型コロナウイルスの影響で政府系の大手航空会社が破綻するのは初めて。
運航停止の長期化で、政府の支援を受けやすい「ナショナルフラッグキャリアー」も耐えきれなくなってきた。
政府が51%を出資するタイ航空は格安航空会社(LCC)との競争などが響き、コロナ以前から財務が悪化していた。2019年12月期まで3期連続の最終赤字で、同年末の負債は2448億バーツ(約8000億円)に上る。コロナの影響で4月から全便運休となり返済が困難になった。政府はつなぎ融資による救済を検討していたが、求めていたリストラ策がまとまらず、抜本的な再建には法的整理は避けられないと判断した。
タイ航空は同日、「破産ではなく平常どおり事業を続ける」との声明を出した。プラユット首相は記者会見で「政府は経営再建を全力で支援する」と述べた。
更生手続きにより債務返済は一時停止される。政府は外部から経営者を招いたうえで、債務再編やリストラ策を盛り込んだ更生計画をまとめる。タイ航空の経営不振は国営企業にありがちな高コスト体質や、政治家との癒着が原因とされる。経営効率化に向けて民営化も検討するもようだ。
世界の航空会社は各国の入国制限で運航停止となり苦境に陥っている。4月にはオーストラリアの航空2位のヴァージン・オーストラリアが破綻した。株主の9割が外資である同社は豪政府の支援を受けられなかった。
一方で各国を代表するフラッグキャリアーに対しては、政府が支える姿勢が目立っていた。イタリア政府はアリタリア航空を100%国有化する方針だ。タイ航空の破綻は、政府系といえどもリストラ策を決められなければ、法的整理を迫られる初のケースとなった。
国際航空運送協会(IATA)はコロナの影響で落ち込んでいる国際線の旅客需要が19年の水準を回復するのは24年まで要するとみる。フラッグキャリアーはタイ航空と同様の問題を抱える企業も多く、法的整理が広がる可能性がある。