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逮捕者300人以上に 香港国家安全維持法違反などの疑い 2020年7月1日 21時30分 「香港国家安全維持法」が施行されて一夜明けた香港では、各地で法律の施行に抗議するデモが行われています。警察はこれまでに香港国家安全維持法に違反したとする9人を含む合わせて300人以上を逮捕し、取締りを強めています。

香港の警察は1日午後、「香港独立」と書かれた旗を所持していたとして、香港国家安全維持法に違反した疑いで、男性を逮捕したと発表しました。香港国家安全維持法は、国の分裂や政権の転覆などの行為を犯罪として規定していて、警察は、法律の施行後、逮捕者が出たのは初めてだとしています。香港中心部では1日、法律の施行に抗議するデモが行われていて、警察は日本時間の午後9時までに香港国家安全維持法に違反したとする9人を含む合わせて300人以上を違法な集会に参加した疑いなどで逮捕したと発表し、取締りを強めています。 繁華街に警察官4000人動員 市民の所持品検査も 香港島の繁華街では、1日午後、民主派の議員らが「香港国家安全維持法」の施行に抗議しようと、デモを呼びかけ、武装した大勢の警察官が通りがかった市民を呼び止めて、所持品を検査するなどしています。 香港メディアは1日、警察官4000人が動員されて、各地で警戒に当たっていると伝えています。 現場では警察官が、集まった市民に対し、1日から新たに導入された「香港国家安全維持法」に違反していると警告する紫色の旗を掲げる姿も見られました。 友人とともに現場に来ていた10代の女性は、「法律が施行されて、警察がやりたい放題で強い態度になったように見えます」と話していました。 「共同声明」に反すると批判も 中国は、香港の返還にあたって1984年にイギリスとの間で調印した「共同声明」で、香港に高度な自治を認め、政策は、50年は変わらないとしていて、両国は「共同声明」を国連にも登録しています。 1997年7月1日の香港返還に合わせた式典でも当時の江沢民国家主席は、イギリスのチャールズ皇太子らを前に演説し、「経済や社会制度を維持し、生活や法律は基本的に変わらない」と述べています。また、江主席は、同じ日に行った演説で「『一国二制度』と『香港の人が香港を治める』という高度な自治は50年変わらない」と明言しています。 しかし、習近平指導部が発足して以降、中国は香港への統制を強めています。 2017年に、返還から20年を記念して習近平国家主席が香港で演説した際には、「一国二制度」について、「新たな問題に直面している」と指摘し、「『一国』の意識を確立させ、『一国』の原則を必ず守らなければならない。国の主権や安全を脅かし中央の権力に挑戦するいかなる活動も決して許されない」などと述べ、中国政府に批判的な動きを強くけん制しています。 今回、中国が制定した香港国家安全維持法をめぐっては「一国二制度」を損ない、中国とイギリスの「共同声明」に反するなどとして批判が出ています。 これに対して、中国政府は「香港を統治する法律的根拠は『共同声明』ではない」と反発し、法律の制定についても「『一国二制度』を体現したものだ」などと正当化しています。 台湾 香港からの移住相談 専用窓口開設 香港での反政府的な動きを取り締まる中国の「香港国家安全維持法」が施行される中、台湾当局は1日、政治的な理由などで台湾への移住を希望する香港の人からの相談を受け付ける専用の窓口を開設しました。 この窓口は、「台湾香港サービス交流弁公室」で、蔡英文政権が民主化を求める香港の人々を支援しようと1日、台北市内に開設しました。 窓口では、政治的な理由で香港を逃れ、援助が必要だと判断したケースについて生活費などを支援するほか、台湾での就学や就業、起業の相談などにも応じます。 初日の1日は式典が行われ、台湾当局で対中国政策を担う大陸委員会の陳明通主任委員が「窓口の開設は、台湾が香港の民主主義と自由を支持するだけでなく、香港市民もケアするというわれわれの決心を示している」と述べました。 そのうえで新たに施行された「香港国家安全維持法」は香港市民のみならず、世界中の人もその対象に含まれていると指摘し、「全世界がこの法律を注視し、厳粛な態度で向き合わなければならない」と警鐘を鳴らしました。 中国外務省 米国務長官の声明に強く反発 アメリカのポンペイオ国務長官が「香港国家安全維持法」の施行を非難する声明を出したことについて、中国外務省の趙立堅報道官は1日の記者会見で、「香港は中国の内政であり、いかなる国も干渉する権利はない。中国の主権と安全、そして発展の利益を守る決意は固い」としたうえで、「アメリカには、中国の内政に干渉することを直ちに停止し、いつまでも過ちを重ねないよう忠告する」と述べて、強く反発しました。 また、国連の人権理事会で、日本やイギリス、フランス、ドイツなど27か国が「香港の人々の人権に明らかに影響する」などとした共同声明を出したことについても「少数の外国勢力が後ろめたい目的をもって、人権をかたって干渉するのは傲慢な偏見だ」などと反発しました。 また、趙報道官は、香港の警察が1日、「香港独立」と書かれた旗を所持していたなどとして、市民を逮捕したことについて、「中国に反対する活動は法律に基づいて厳しく処分されるようになる」と述べました。 英ジョンソン首相 「共同声明に明らかに深刻な違反」 「香港国家安全維持法」が施行されたことを受けて、1日、イギリスのジョンソン首相は議会で発言し、「香港の返還の際に中国との間で確認した共同声明に明らかに深刻な違反をしている」と述べ中国の対応を厳しく批判しました。 そのうえでこの法律は、香港の高度な自治に反し、共同声明で確認された自由や権利を脅かすものだと指摘し、イギリスの滞在許可証を持つ香港の市民について、イギリスで市民権を取得できる道をひらくことを改めて明らかにしました。

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