新型コロナ「欧州型」世界で猛威 半月で遺伝子変異! 新型コロナウイルスの遺伝情報を調べることで、感染が世界にどう広がったかがわかるようになってきた。欧州で猛威をふるったタイプが米ニューヨーク州やブラジル、アフリカ、ロシアなどに渡り、さらに感染を広げている。
米国では欧州型のほか米国型も猛威をふるう。ほぼ半月ごとに変異し、米大学の解析では17種類にのぼる。対策の巧拙もわかるという。
ウイルスのゲノム配列を調べると、感染経路や変異などがわかる。主に「中国型」「欧州型」「米国型」に分類でき、それぞれの地域で爆発的に感染が広がった。
欧米の研究者らが作る国際データベース「GISAID」は患者から採取したウイルスのゲノム(遺伝子の総体)を公開中だ。5月上旬までに5千人分のウイルスのデータが集まった。
このデータの分析を集めた「ネクストストレイン」によると、1月中旬に中国・武漢から中国型のウイルスが世界に拡散し始めた。欧州では1月下旬~2月上旬、変異した欧州型が無症状の旅行者を通じて各国に広がったとみられる。その後、ウイルスは変異を繰り返しながら3~5週間で国境を越えていった。
米国では、ニューヨーク州で欧州型が主流だったが、他の州では変異した米国型が多く報告されている。中国のほか、様々なタイプが国内に入ってきており、それらが感染者の体内で融合して生まれたとみられる。
米ドレクセル大学の研究チームはゲノム変異の違いを「指紋」という形で分類し、17種類になった。世界で感染者が増えるにつれ、変異のペースが上昇しているという。
新型コロナ対策が機能したかどうかもわかる。国立感染症研究所は、3月以降に主に欧州型によって全国に感染が広がったとの分析をまとめた。1~2月に中国から日本に入ったウイルスは封じ込めに成功した。その後、欧州で流行しているウイルスが帰国者らを通じて流入し、対策が不十分なまま都市部から全国に感染が広がった。
国内の感染者560人から採取した検体のほか、国際データベースの約4500人分の情報も加えた。ドレクセル大の解析では、大規模な渡航制限に踏み切った中国や香港では、欧州型は検出されていない。感染研の黒田誠・感染研病原体ゲノム解析研究センター長は「過ちを正しく把握する必要がある」と話す。
変異し続けると、感染力や毒性が高いウイルスが出現する恐れがある。しかし、英ユニバーシティー・カレッジ・ロンドンのフランソワ・バルー教授は「毒性や感染力を増したのかどうかはまだわからない」と話す。
同教授らは約7500人分のウイルスを解析、変異が198カ所あると突き止めた。ただ、ウイルスの機能面で重要な変化が生じたとは考えにくいという。一方で、感染が深刻な地域全てで、ゲノムの幅広い多様性が確かめられた。ウイルスが早い時期に世界に広がっていたことになる。
毒性については変異をみても、わからないことが多い。北京大学は3月、新型コロナウイルスは「L型」と「S型」の2つに分かれ、L型が毒性が高いと発表した。その後、毒性を「裏付ける証拠はなかった」と修正した。確定するには、動物や細胞を使った実験で確かめる必要がある。