緊急事態宣言、首相が意向固める 午後2時に諮問委員会 安倍晋三首相は6日、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、近く緊急事態宣言を出す意向を固めた。政府は同日午後2時から専門家ら16人で構成する「基本的対処方針等諮問委員会」を非公式に、午後6時過ぎから新型コロナウイルス感染症対策本部をそれぞれ開き準備に着手する。
対象は東京都など首都圏や大阪府などを軸に検討する。
緊急事態宣言は改正新型インフルエンザ対策特別措置法に基づく。対象とする区域や期間などを定め首相が宣言し、具体的な措置は都道府県知事が決める。鉄道や道路などを強制的に止めたり、外出禁止を強制したりはできない。海外で実施されているような「ロックダウン(都市封鎖)」の状態にはならない。
東京都の小池百合子知事は3日に国が緊急事態宣言を発令した場合に備えた対応方針を公表した。外出自粛や大規模施設の使用、イベント実施の制限や停止を要請する。食料、医薬品を扱う店舗や銀行など社会インフラには引き続き営業を認める。鉄道など交通網も維持する。
特措法では緊急事態宣言を出す要件として(1)国民の生命や健康に著しく重大な被害を与える恐れがある(2)全国的で急速なまん延により、国民生活や国民経済に甚大な影響を及ぼす恐れがある――と定めている。
新型コロナウイルスの感染者は東京都で5日に143人、累計で1033人に達し、うち92人は感染経路が不明だった。首相は全国的な感染に歯止めがかからなくなる恐れがあると判断した。
東京都や大阪府などはすでに夜間や休日に不要不急の外出を自粛するように要請している。宣言が出れば都道府県知事は法的根拠をもって要請や指示ができる。
首相が2月に要請した大規模イベントの自粛なども、発令後は都道府県知事が学校や映画館、百貨店などの施設に対し、法律に基づく使用制限を要請できる。外出自粛やイベント施設の使用停止を要請できる。
事業者が正当な理由なく要請に応じない場合、要請よりも強い「指示」を出すこともできる。これらの要請や指示に罰則規定はない。
一定の強制力を持つのは医薬品や食料品の売り渡し、土地の使用に関する項目に限られる。臨時の医療施設を開設するため所有者の同意がなくても土地や建物の使用が可能になる。
都道府県知事は医薬品や食料品の生産・販売・輸送業者らに売り渡しを要請できる。正当な理由なく応じない場合は強制的な収用ができる。医薬品や食料品の保管を事業者に命令でき、従わずに物資を隠したりした場合は6月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される。
緊急事態宣言の根拠となる改正新型インフルエンザ対策特別措置法は3月に成立した。政府は同月26日に同法に基づく政府対策本部を設置した。内閣官房に新型コロナウイルス感染症対策推進室を設け、宣言に備えて海外の情報収集や都道府県との調整を進めてきた。
首相は緊急事態宣言を発令する前に国会に報告する。衆参両院の議院運営委員会に出席し、与野党が質疑する。
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