県境越え移動・接客営業、全面解禁 人の流れ一段と 政府は19日、新型コロナウイルス対策として自粛を要請していた都道府県境をまたぐ移動を全面的に解禁した。東京の主要駅や空港では出張や旅行に向かう人々の姿が目立った。感染リスクが高いとされたライブハウスやナイトクラブの休業要請も同日解除された。
感染リスクを抑えながら社会経済活動を再開する動きが一段と広がる。
羽田空港第1ターミナルの電光掲示板にはまだ「欠航」の文字が多いものの、スーツケースや旅行かばんを持った人が出発ロビーを行き交っていた。
石川県の大学院で触覚に関する研究をしている東京都内の女性会社員(39)は久しぶりに研究室に向かう。秋の学会に向けて論文を準備中。移動自粛の要請を受けてリモートで研究室とやり取りしてきたが「実験機器を使えないなど限界があった」。週末を利用した今回の出張では実験の予定をみっちり詰め込んでいるという。
国は5月25日に緊急事態宣言を全国で解除した後も、東京、神奈川、千葉、埼玉の1都3県と北海道については都道府県境をまたぐ移動を控えるよう求めていた。安倍晋三首相は18日の記者会見で「社会経済活動のレベルをもう一段引き上げる」と述べ、19日から移動自粛の要請を全国で解除した。
東京駅の新幹線ホームでもビジネス客や旅行者の姿が目立った。古本店主の男性(57)は18日夜に高速バスで京都を出て19日早朝に東京に到着。新幹線で山形県米沢市に向かった。同市の博物館で21日まで開催中の展覧会を鑑賞する。「終了間際に移動制限が解除され、ようやく気兼ねなく旅行できる」
人気観光地、登別温泉(北海道登別市)では、6月に入っても休業していた一部のホテルが19~20日に営業を再開する。5月はほとんどの施設が休業し、売り上げの落ち込みは激しい。登別国際観光コンベンション協会の志水孝暢事務局次長は「人の動きが出て、観光需要につながれば」と道外からの観光客の回復に期待を寄せる。
岐阜県の高山市、飛騨市、白川村は18日に「飛騨お目覚め宣言」を発表し、これまでは来訪の自粛を求めていた全国からの観光客向けに旅行キャンペーンを始めた。7月末まで国指定史跡の高山陣屋などの観光施設を入場無料にし、宿泊施設の割引サービスも行う。
富士急ハイランド(山梨県富士吉田市)は19日に全国からの入園の受け入れを始めた。5月23日に同県在住者に限って営業を再開し、6月1日からは首都圏や北海道以外の客も入園可能としていた。
休業要請が続いていたライブハウス、ナイトクラブなど接客を伴う飲食業の営業も19日から再開可能になった。
東京都江戸川区のライブハウス「ジョニーエンジェル」は19日夜の公演から営業を再開する。70人の収容が可能だが、当面は来場者を15人に制限し、ステージと客席の間には仕切りのビニールシートを設けた。
東京・銀座でクラブを経営する女性も19日夜から営業を再開する。一部の席はバツ印をつけて使用不可とし、換気のための空気清浄機や扇風機を店内各所に設置した。客にはマスク着用を求め、入店時に検温を行うほか、靴にはカバーを着けてもらう。
コンサートなどのイベントも19日から参加人数の上限が1千人に引き上げられた。プロ野球は同日、約3カ月遅れで開幕し、史上初めて無観客で公式戦が行われる。
東京都渋谷区のスポーツバー「City倶楽部」は19日夜、開幕全戦を大型モニターで流す計画だ。30人収容できるところを20人に制限し、検温や消毒を徹底する。オーナーの中野雅文さん(37)は「常連客はテレワークが続いているようで客足の戻りは鈍いが、開幕が売り上げ回復のきっかけになれば」と期待していた。