スマホの次に来るのはシャペロン?
2007年に出現した初代スマートフォン。その存在は今や無くてはならないものとなり、世界をガラッと変えてしまいました。そして人類は今、その次は何かを探しています。
確かにスマートフォンの性能は頭打ち。新しいiPhoneが出るたびに「これ、どこが変わってるんかな」といった感想は拭えません。
スマートフォンの次は? で検索するだけでたくさんのサイトがヒットします。
こう全世界が注目してくると、ぜひ自分がそのアイデアを世界に先駆けて当ててみたくなりますよね!
新たなアイデアを捻り出すには、まずスマートフォンがなぜヒットしたのかを分析してみることから始めましょう。
顧客のニーズを満たしたわけではない
全世界を魅了する製品は、全世界の人が欲しがっていたものを作る、と思いがちですが、実は違います。新たなブレークスルーというのは、我々すら気づかなかったニーズに目を向ける事だというのです。
思い返してください。スマホが出る前、私たちは小型のデバイスを熱望していましたか? 10万払っても欲しいな、と思っていましたか? 答えはノーです。欲しがってた人はごく一部に過ぎなかったはずです。
それどころか、最初に出た時は「そんなもの無くたってやっていけるよ」と思った人ばかりだったはずです。
つまり、顧客のニーズを掘り下げていけばいつかブレークスルーにたどり着ける、というわけではどうやらなさそうです。
時代にマッチした荒技
スマートフォンがなぜ普及したのでしょうか。
ある人はこう言っていました。
そうです、今改めてみてもスマートフォンってどう考えたって電話ではありませんよね。ボタンは押しにくいし、マイクはどこかわからないし、そもそも電話している時は画面いらないし。
なのに私たちは電話として持って(持たされて)います。
ちょうど時期として、少なくとも日本ではほぼ全国民が一人一台携帯電話を持つようになってきたその流れと、小型のデバイスのニーズを無理やりくっつけて、いつの間にか爆発的に普及してしまったのです。
もしこれがまだ携帯電話が普及していなかったら、話は変わっていたかもしれません。つまり画期的なアイデアだけではなく、時代の流れ、運のようなものも相まったということもできるでしょう。
しかしそれだけではなく、スマートフォンの性能は非常に優れたものでした。直感でわかるピンチイン、アウト、スワイプ。画面を横にしたら横になる、その他今までのデバイスとは桁違いの性能があったのも後押ししました。
こうして今やスマートフォンがない生活は考えられなくなりました。
今、みんな道の先を望遠鏡で見ているだけ
ウェアラブルAIという機器はすでに現実味を帯びてきて、製品化も間近なものもありそうです。
少し近未来となると、このような埋め込み型も想定されます。
でもこれらってあくまで今ある道の先をずっと見つめているだけです。植え込みデバイスは私ですら、だいぶ前に思い付きましたから。
となると、本当の意味でのブレークスルーというのはこの直線上の道の先をずっと追いかければたどり着けるものでもないと私は考えます。
そりゃ小さければ小さいほどいいのでしょうけど、元々なくてもやっていけたわけですから、我々が「どうしても小さい方がいい!」と熱望するでしょうか。
いずれそのような時代は来るかもしれませんが、どうもブレークスルーとは違う気がするんです。
では私が考えるブレークスルーとは何か? それがシャペロンです。
シャペロン
今でこそ生化学の言葉になってしまっていますが、元々はとある人に付き添い、より良い方向に導くための存在であり、言い換えれば執事の存在も近いものがあるかもしれません。
ちょっと前にiモードありましたよね、ひつじの執事。
しかし私が考えるシャペロンは、レベルが違います。
具体的な例を挙げましょう。
シャペロンの例1 夜に息子が……
21時。母であるあなたは、今日一日の疲れを感じながら、歯磨きをしていた。その時小学校2年生の息子がこんなことを言い出した。
「お母さん、算数のノートってある?」
「なんで?」
「明日使うから」
あなたの心拍数は急上昇、頬が火照るのを感じます。
「なんでそーゆーの早く言わないのよ! もう店閉まってるじゃない! さっきゲームずっとやっている時に言ってくれればなんとかなったかもしれないのに……」
その時、ピコン、という音と共に、デバイスの画面が光ります。
プラン1 ヒカリストア、車で10分、¥160
プラン2 8Now24時間配送 到着23:24 ¥510
「よかった、ヒカリストアまだ開いてるんだ」
あなたはプラン1をタップすると靴を履いて外に出ます。車のドアが自動で開きます。車のエアコンはあなたがタップした瞬間から起動していたため、車内はいい温度になっています。後部座席にあなたが乗ると車は自動運転でヒカリストアへ。
ヒカリストアは暗くて閉まっていますが、時間外窓口にあなたの自動運転車が横付けされ、窓が開きます。あなたは顔認証(その他)で確認をしてから、算数ノートを受け取って再び後部座席でもたれかかります。そのまま自動運転で家に帰ります。支払いはもちろんキャッシュレスで。
シャペロンの例2 家族旅行
4人家族の父親。毎年夏休みに旅行に行っていますが、今年はどこにするか決めかねていました。
「ねえ夏休みどうする?」
妻の言葉にあなたのデバイスが反応しました。
見てみると、ずらっと旅行先の候補が並んでいます。
「ここいいなと思ったけど、キャンセル待ちか……」
まあ急がないし、また今度考えるか、そう思っていると、2週間後、キャンセル待ちのホテルが取れたと連絡が来ました。
「勝手に取ってくれたんだ! よかった」
ついでに、5才の長女の水着がそろそろ小さいのでは、という提案をうけ、水着の通販一覧が表示されました。その他浮き輪、などの遊具も提案されました。
「いやー、助かるな」
あらゆる情報を統合し、プランを提案する
今までの行動のプロセスは青が我々のアクセス、赤を売り手側のアクセスとすると、
のように、我々の行動の方が大きかったのです。
必要な商品があれば、スマホで検索し、比較検討し、探す。
店に電話して、あるかどうかを聞く、予約をする。
シャペロンのある生活はこれが逆転します。
我々のちょっとした会話、行動、それらをAIが分析し、何度も試行錯誤し、あなたにあったシャペロンが構成されます。
「今度の夏休み、どこにしよっかな」
という会話から、あなたにあった場所を探してくれます。今は見つからなくても、一ヶ月後にいい場所が見つかったらそれも教えてくれます。キャンセル待ちであればキャンセルが出た瞬間に教えてくれます。
あなたが自己啓発に興味があれば、頼まなくても、興味のありそうな記事、本、イベントを教えてくれます。
あなたの行動、反応、興味のあるものを分析し、それに対し的確に進むべき道、必要なものを提示してくれる、それがシャペロンです。
有能なシツジとの違い
シャペロンと執事の違いはなんでしょうか。
有能な執事はあくまでも、こちらがわのアクセスの話。つまりどこまで行っても、
これなんです。我々(執事)が必死に動かなければならない。
一方で、私が提唱するシャペロンは、社会構造自体の変化を指します。
つまり、スーパー、コンビニ、学習塾、リゾート施設。その他あらゆるつながりを必要とする存在全てがシャペロンにつながっている必要があるんです。
それをインターネットを利用して行うか、別の媒体を利用するかは現実を見て考える必要がありますが、一旦シャペロンというシステムが出来上がって、ニーズが増してくると、あらゆる企業はそれに登録しないと、出遅れるという形になります。
つまり先行投資です。
シャペロンというシステムは望まれるべくして生まれるわけではありません。一度作り上げて、その有用性、知名度を限りなく上昇させて、満足させて、それを広げる。
広げるためには、登録が必要だよね、その登録のために仲介手数料が発生する、現在のネットショッピングでの楽天やAmazonに支払う手数料のように。
このようにしてシャペロンのマーケットが生まれるのです。
シャペロンの問題点
プライバシー
まず第一に膨大な個人情報がシャペロンに握られることになります。性癖や細かい行動まで。そこまで情報を預けるからこそ、便利な生活が送れるのですが、それを第三者に握られ悪用される可能性があります。
現在でもトラッキングやクッキー、検索エンジンでも個人の閲覧したサイトの情報などが第三者に握られています。
どこまでの情報をシャペロンに預けるのか、預けない、という選択肢を用意する必要がありますし、意図せずに漏洩することがないようセキュリティをしっかりする必要があります。
公平性の確保
ホテルの候補を上から順に表示するとしても、そこになんらかの意図が生じては公平性は保てません。シャペロンの情報にスポンサーが入っているのか、どのように優劣をつけて表示されているのかを明らかにする必要があります。
そのプログラムは想像しただけで、今までのものとは桁違いの複雑なパフォーマンスが要求されると思われ、それを乗り越えなければなりません。
しかしAIと組み合わせることのできる今であれば、有能なシャペロンが作れるのではないかと思っています。
ここにデバイスの小ささは関係ありません。個人的にはiPhonの6sくらいのデバイスに落ち着くんじゃないかと思います。植え込み型デバイスが好きな人もいるでしょうが、それはあくまで好き好きでということで。
終わりに
インターネットが出始めの頃は、検索エンジンはいくつかありました。Google、Yahoo以外にもgooやinfoseekなんかもありました。Googleはその中の一つに過ぎませんでした。しかし、この検索エンジンという窓口を圧倒的な力で占拠することにより、莫大な利益と膨大な力をもつ企業へと発展しました。
私はシャペロンが来ると思います。それこそ人間の考える力を失わせるくらい有能なプログラムが出現すると予想しています。そしてそれはまさに今目の前まで迫っていると私は思います。
(2024/07/15作成)
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