#みの編マフィア小説 【第5夜】 会は踊る、されど進まず。
「お菓子…? お前、新入りか?」
狂一朗が差し出されるがままに受け取ろうとすると。
「狂一朗さん!触っちゃダメだ!!!」
達夜が慌てて止めに入る。
「おい、いけ魔!その毒入り菓子配るのやめろって言ったよな!?何人病院送りにすれば気がすむんだ??」
「び、病院…!!?」
狂一朗が飛びのく。
「たつや、これ、どくじゃ、ないよ?」
いけ魔と呼ばれた少女が、独特の間で言葉を返す。
「そうだよ!愛知遠征の時にアタシらと一緒に作ったんだ。達夜、アンタこんなに美味そうなマフィンにケチつけようってのかい?」
いけ魔の後ろから歩いて来た、長身で短髪の美女が喧嘩腰に詰め寄る。
「あつこ…君がそこまで言うなら信じるけど…」
達夜はすごすごと引き下がる。
あつこは元々、組織の東京本部のレディース筆頭を務めるほどの人物だった。
そのリーダーシップを買われ、現在は中部支部の指揮権を委ねられている。
中部に行ってからも皆からの信頼は厚く、熱狂的な信者が何人もいる。(達夜も実はその1人だ。)
「マフィンか…なんでまたこんなものを…?」
狂一朗が訝しげに尋ねる。
「アタイが中部で見つけた”マッツ”って男が居るんだけどね。『美味いものには…人が集まる…(。-∀-)ククク…』なんて言うもんだから、新しいシノギにできないもんかと、試しに作ってみたのさ。」
「たつや。きなこ、まぜて、まふぃん、つくろ?」
どうやら、組織拡大の方法を模索していたらしい。
「なるほど、きな粉を混ぜたマフィンか…!確かに、ウチのブツ流通ルートに乗せられるな…」
どうやら達夜も、このマフィンの可能性に思い至ったらしい。
「な!イケそうだろ!」
「あぁ!これが流行れば組織のアガリも倍…いや3倍にはなる!流石だよ。」
達夜があつこを尊敬の眼差しで見つめる。
「…これが軌道に乗れば…中部からあの女の寝首を…ボソッ」
「え?あつこ、何か言った??」
「あ!?いや、何でもないんだ。これからの組織の事を思うと、楽しみで仕方なくてね。」
みの編マフィア。
熱狂と癒着、陰謀の渦巻く場所。