#みの編マフィア小説 [第9夜] 夜の蝶
「良かったのですか、財前さま?あのような事を言ってしまわれて…」
部屋を後にし帰路につく財前に話しかける、1人の女がいた。
「リリー。物事はなんでも”駆け引き”が重要なのだ。お前も知っておろう?」
リリーと呼ばれた女が妖艶な笑みを浮かべて頷く。
「ええ。重々承知致しておりますわ。」
「なればこそだ。あの言葉で動くようならそれもまた一興。動かなければそれまで。どちらにせよ、私には何も不利益はないのだ。」
「まあ!財前さまったら、また悪い顔していらっしゃる…♡」
可笑しそうに笑うリリーに対し、財前は不機嫌そうに言葉を返す。
「お前にだけは言われたくないぞ…?どさくさに紛れて、あの時何人の男に目を付けたのだ?」
リリーは意味ありげに首を傾げ、ウインクした。
「女は秘密を着飾って美しくなるのです。聞くのは野暮というものですわよ?」
美しい声のはずなのに、なぜか寒気を感じた財前。
この女だけは敵に回せない…彼が確信した瞬間であった。
ーーーーーーー
一方、会合部屋では撤収作業が行われていた。
毎回同じ作業だが、今回は心なしか、いつもより椅子や机が重い。
「財前からの資金がなくなったらどうするんだ…?」
口には出さないが、皆似たような思いを抱え、沈んでいた。
そんな静けさを破り、1人の男が叫んだ。
「リリーと!肉が!食いたい!!!!!!!ウッホ!」
天に向かって叫ぶブタゴリラの瞳は、大きなハート形になっていた…
〜第1章 嵐の定例会編 完〜
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