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野球・投球時の肘障害

野球選手の肘の障害は多く、肩や肘の痛みを訴えながらプレーをしている選手も多いです。今回は野球肘の種類やどのようなフォームになると障害が起こりやすいかを書いていきます。
肘の障害は投球時の外反ストレス増大による内側部牽引ストレス・外側部圧迫ストレスによるものです。


投球するたびに靭帯は損傷している

よく肘の内側部を痛める選手がいますがほとんど場合が肘の内側靭帯を痛めます。そこで知っていてほしいのが、肘の靭帯がどの程度で切れてしまうのか?です。
難しい単位の数字になります。文献などにより数値が変わってきますがおおよそ肘の靭帯は破断するトルク32Nm・最大の破断強度の張力が260Nになります。プロ選手が投球するとトルク35Nm以上・張力300N以上の負荷がかかっているそうです。大谷選手のように160km以上の球を投げる選手の肘にはいったいどれほどの負荷がかかっているのでしょうか?
つまり1球投げる毎に肘の靭帯を損傷しながら投げている計算になります。

小学生野球選手にかかる負担

小学生の場合は肘の強度はおおよそ20Nm程度です。投球時には15Nm程度の負荷が肘にかかるそうですが、投球フォーム不良がある選手には2倍の30Nmほど負荷が内側靭帯のかかると言われています。

野球肘

簡単に野球肘と言いますが、内側・外側の障害にわけられ肘の後方の障害もあり様々な障害があります。

内側の障害

  • 内側障害のほとんどは肘内側にある内側上顆というでっぱりの障害になります。成長期の選手では骨が柔らかく投球時に靭帯や筋肉による牽引ストレスによって内側上顆の炎症・剥離が起こります。高校生以上になり骨がしっかりすると内側上顆の障害よりも内側靭帯の損傷が起こります。内側靭帯の損傷の理由はこの記事の始めに書いているので投球するたびに靭帯は損傷しているを読んで下さい。また多くはないですが肘の変形やタイトネスなどによる肘内側に通っている神経を圧迫して起こる神経障害もあります。

外側の障害 離団性骨軟骨炎

これは最も気を付けなけらばいけなく早期発見・早期治療が必要な障害と言えます。肘の外反ストレスにより肘外側に圧迫・剪断ストレスがかかり上腕骨小頭と橈骨頭がぶつかり上腕骨小頭の軟骨が損傷されてしまいます。
障害の初期の段階では安静により自然治癒を見込めますが、軟骨がはがれてしまった場合は手術を必要とします。治療や手術の方法などはこちらでは書きません。

後方の障害

投球時に肘が伸展することにより上腕三頭筋による牽引ストレスが原因での肘頭の剝離骨折や上腕三頭筋腱の炎症や又 肘頭が尺骨の肘頭の内側窩にぶつかることによる痛みや疲労骨折があります。

投球フォームによる影響

肘の障害は投球時の外反ストレス増大による内側部牽引ストレス・外側部圧迫剪断ストレス又後方のインピンジメントや上腕三頭筋の牽引ストレスによるものです。これらのストレスには投球フォームが深く関係しています。
一番の問題になるのが肘の外反ストレスの増大で肘が下がることにより一番ストレスの増大に繋がります。ある文献には肘の位置が肩の位置に対して1cm下がる毎に外反ストレスが0.46Nm増加すると言われています。
肘が下がる原因はたくさんありますが、トップ作った際に肘の位置が低い・テイクバック時に肩を内旋させすぎる事や肘を背中側に引きすぎる・加速期の前後で体幹のを側屈させすぎるなどがあります。
又 肘下がりによる影響にもなりますが体の開き・肩の過外転などによる最終的ないわゆる手投げ・内旋投げによる手だけの力で投げることによる肘へのストレスの増加になります。
肘後方の障害は後コッキング期~加速期かけての肘関節の屈曲不足による肘後方のインピンジメントや上腕三頭筋の牽引ストレスによります。

投球フォーム不良の例

どのようなフォーム・身体の動きで負担がかかるかを書きます。専門的な知識がないと理解が難しいので参考までに読んで下さい。
肘の負担は外反ストレスの増大によるものです。そのためどのようなフォームになると外反ストレスの増大になるかを書きます。あと肘の後方ストレスについても書きます。

肘が下がる

トップ~リリースにかけて肘が両肩のライン上(SSE)よりも下に位置すること言います。肘が下がると肩の外旋運動が抑制されてしまうために代償的に肘の外反が強くなります。他にも加速期の身体の回転に肘がついて来れないために運動連鎖が崩れてしまい上肢に頼った手投げになり肘のストレスが増加します。

トップを作った際に肘が屈曲90°より伸展してしまう

肘が伸展位にある身体から離れた位置にボールが来ます。慣性モーメントの影響によりボールが身体から離れた位置にあるほど投球時に肘の外反ストレスは大きくなります。ちなみに肘がおよそ60°の時に肘の靭帯は強い張力を発揮し、肩最大外旋位の時で肘は80-90°屈曲位でリリース直後に肘の完全伸展を迎えます。つまりTOP時~加速期の最大外旋時には肘は伸展位にはなくボールは身体の近くを通っていることになります。又 肘が伸展位にあると肘関節でのインピンジメントを起こしやすくなってしまいます。

身体の開き・手投げ

骨盤や体幹が早期に開いてしまうと肩や肘が遅れて出てきてしまい運動連鎖の破綻や投球時に体幹の回旋運動が十分にできないことにより手投げになってしまい結果 上肢に依存した投げ方になります。手投げになると体幹の回旋運動が十分にできないために肩内転運動と肩の内旋運動を強くした投げ方になり肘が屈曲位の状態でのリリースを迎えます。肘が屈曲した状態でのリリースは肘内側牽引ストレスと外側圧迫・剪断ストレスの増加になります。

肘後方のストレス

肘後方のストレスはインピンジメントと上腕三頭筋の牽引ストレスによるもので、先ほど書いた手投げによる肘の負担増加やコッキング期~加速期による肘の屈曲不足によるもの、あとフォームの運動連鎖が上手くいかないことなどによるリリース時の肘伸展のタイミング不良・リリース後の肘屈曲不足や身体の回転不足や関節の硬さによるリリース後に力を逃せないなどの負担吸収不足があります。

肘の障害の8-9割は投球フォーム不良によるものです。そのため投球禁止をして休んでもすぐに肘を痛めてしまいます。あと多くの指導者には申し訳ないのですが選手に間違った投球フォームを指導して肘を故障させる事が多いです。疲労や選手の身体が硬いなどによるフォームの崩れなどありますがフォーム指導をする場合は注意が必要になります。


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