映画『ウォレスとグルミット 仕返しなんてコワくない!』。シラスフロントローでの自分の批評を再録します。
冒頭の、カップの中で跳ねるお茶の質感から、クレイアニメの手触り、ワクワク感が伝わってきて嬉しくなった。また、グルミットの鼻の光り具合など、ライティングが素晴らしかった。特に、トンネルの中での揉み合いのシーンでは、「第三の男」を思わせるような光と影の演出が心に残る。(1/5)
珍妙な発明された機械のメカニカルな動きも、クレイアニメの特徴を発揮して、見ているだけで楽しい。調度品、写真、書類など、細々とした背景の物も丁寧に作り込まれており、製作者の並々ならぬ熱意が伝わってきた。アニメーションの本来の命の息吹が伝わってきた。(2/5)
テクノロジーの悪用に対して、長靴を用いたテクノロジーで対抗していこうとするウォレスを肯定的に描いていた。技術そのものが悪いのではなく、あくまでもその使い方が問題なのだというメッセージは、子どもたちに対して、とてもまっとうなもので好感が持てた。(3/5)
ラストシーンで、なでなでマシーンをなでなでに使うことはやめ、機械ではできないことがあると、ウォレスがグルミットを手で撫でるシーンがあった。これは、この時代にわざわざクレイアニメを作った、製作者たちの精神の根幹そのものではないだろうか。(4/5)
喋らないグルミットではあるが、ウルフやミルトンを読んでいる読書家であるという設定も、くすぐりが効いていて愉快だった。子どもたちに見せたら大好評で、今の若い世代にも良さがちゃんと伝わっていて、ほっとしました。いいもの見たなあ。(5/5)