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橋をかける
日付が変わり、「平成」から「令和」の世になった。
平成の両陛下の最後の国事行為となった、昨日の退位礼正殿の儀。
東面している宮殿・松の間の北側の扉から入場した両陛下が、玉座の置かれた壇上に北側から昇られ、反対側に降りて南側の扉から退出された。
その光景がなんとなく、お二人で山を登って下りたようにも、橋を渡り終えたようにも見えた。
玉座の置かれた壇上、すなわち〝天皇の座〟から、厳粛な表情で一歩、二歩と降りた陛下が、振り返って美智子様に手を差し伸べられる。
あの一瞬が、平成という時代のお二人のすべてを物語っているように思えた。
生まれて以来、人は自分と周囲との間に、一つ一つ橋をかけ、人とも、物ともつながりを深め、それを自分の世界として生きています。
この橋がかからなかったり、かけても橋としての機能を果たさなかったり、時として橋をかける意志を失った時、人は孤立し、平和を失います。
この橋は外に向かうだけでなく、内にも向かい、自分と自分自身との間にも絶えずかけ続けられ、本当の自分を発見し、自己の確立をうながしていくように思います。
(『橋をかける 子ども時代の読書の思い出』美智子/すえもりブックス)