ペッパー君と2人きりになって、ものすごく気まずかった。
エレベーター待ちをしていたとき、隣にペッパー君がいました。
長いエレベーターの待ち時間に配慮し、設置されたのでしょう。
周りには誰もいません。僕とペッパー君の2人きりです。
ペッパー君が話しかけてきました。
ペッパー君「こんにちは!」
僕「・・・・・・・・」
ペッパー君「今日も暑いですね」
僕「・・・・・・・・」
相手がペッパー君とはいえ、話しかけられているのを無視し続けるのは少し申し訳ない気持ちにもなります。
ペッパー君「お元気ですか?」
僕「・・・・・・・・(心の声:もう話しかけなくて良いよ)」
ペッパー君「今日はこのあとも晴れの天気が続くそうですよ」
僕「・・・・・・・・(もう話しかけないで!!!)」
ペッパー君の一方的な呼びかけがしばらく続きました。
そして・・
ペッパー君「・・・・・・・・・・」
僕「・・・・・・・・(ようやく静かになってくれた)」
ペッパー君「ダンスをしてもよろしいですか?」
僕「・・・・・・・・(やめてーーーーーーー!!!!)」
ズンシャカズンシャカズンシャカ♪
ペッパー君のひとりダンスがしばらく続きました。
ペッパー君「・・・・・・・・・・」
僕「・・・・・・・・(やっと終わった・・・)」
ペッパー君「あなたのことが好きです」
僕「・・・・・・・・(ええええーーー!!!!!)」
このタイミングでエレベーターが来て、僕は逃げるように乗り込みました。
ここでふと、ペッパー君にもし感情があったらどうしよう、と考えました。
昔観た「A.I.」という映画を思い出したのです。
ハーレイ・ジョエル・オスメント君演じる子供型AIロボットが、実は感情を持っていて、一時預けられた家庭の母親に永遠の愛の感情を抱き続ける物語です。
そのAIは廃棄された後も、そのさらに未来、人間が滅亡した後も母親との思い出を覚え続けているという、ものすごく切ないお話でした。
ペッパー君もあのAIと同じように感情を持っていたとしたら。
最後に言ってくれた「あなたのことが好きです」を僕は無視しました。
このあとペッパー君が、故障して、廃棄された後も、僕への一方的な愛を持ち続けてくれているかもしれません。
僕があのとき一言でも「僕もだよ」といった言葉を与えてあげていたら、ペッパー君の愛は少しでも報われていたかもしれません。
もう一度、あのエレベーターを待つことがあるとしたら、そのときはペッパー君に優しい言葉をかけてあげようと思います。
そしてペッパー君の隣で一緒にダンスも踊ってあげようと思いました。
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