投手の指導に思うことがありまして
野球関係者の皆様お疲れ様です。
僕の書き物はさほど人気でもないので、もしかしたら誰も読んでくれることはないかもしれませんが・・・
でも、もし一人でも気にしてもらえる人がいたら嬉しいなと思い
少々厚かましいかもしれませんがお願いごとを書かせてもらおうと思いました。
僕が審判をしているときというのは、『投手のお作法』がよろしくないケースが非常に多くて、
A) 野球規則に抵触している
B)必ずしも野球規則に反していないとしても紛らわしい
C) 野球規則に反していないかもしれないがマナーとして良くない
これらのことをどの試合でも必ずと言っていいほど毎試合見かけます。
僕自身、試合の後でなるべく当該投手のいるベンチへ行き、直してもらうようにお願いをしてはいますが、
指導者の方々も僕もたっぷり時間があるわけでもなく、試合後の片付けをしながらの立ち話なので十分な説明やお願いができていないところではあります。
どのチームでも共通しているのは、投手の投球方法やトレーニング方法などは厳しく指導されているだろうことは、投手を見ていればわかります。
でも、あまりにも投手の技術に偏り過ぎていて、マウンド上でのマナー、野球規則、作法など、そういったことの指導がお座なりにされているのではないかと思うのです。
特に学童野球ではそれが顕著で、社会人野球でもあまり意識されていないような印象です。
何度か経験したことですが、試合後に投手の投球姿勢について監督さんに
「あの投手のこんな姿勢はボークなので直してあげてくださいね」
と話したところ、
「えっ?そうなんですか?」
と、本当に知らないようでした。そういう監督さんやコーチの方を何度か目にしています。
指導者としてベンチに入る立場であれば、やはりそれを知り、選手に対しての指導をしてもらいたい、、、そう思うのです。
これは、単に僕が審判をしていてやりにくいからとかそういう意味合いもありますが、同時に選手自身、或いはチームのためでもあるので、練習時間が仮に 10 あったとしたら、そのうちの 0.5 でも良いので、少しずつ、
マナー、正しい投球姿勢、正しい投球方法を身に付けてもらうための指導をお願いしたいと考えています。
いつも耳にする話ではありますが、地区を勝ち抜いたチームが、或いは優秀な投手が選抜チームへ行って県や全国レベルの大きな大会でボーク判定を受け、投手が動揺してしまい結果負けてしまったという話は毎年のように耳にしています。
そういう意味では、我々審判ももっと勉強してはっきりとボークにはボークを適用し、マナーが良くなければ指導をすることをしていかなければいけないので、チームの指導者も審判も、共に向上していきましょうという話です。
とても目につく投手のクセや紛らわしい動作を以下に列挙しますので、
日頃の選手への指導の際に思い出してみてもらえれば幸いです。
プレート上でボールを持ち換える
これをやる投手は何度も見ました。
本当に紛らわしいし、実際にボーク判定しても良いくらいのケースもありました。
学童野球だったのでボークは敢えて取りませんでしたが。
投手がグローブの中にボールを持って投手板につきます。
直立している姿勢で打者を見ながら体の前で手を合わせ、投げ手の方にボーを持ち換えて手を下ろすわけです。
これ、両手を合わせた瞬間にセットポジションに入ったように見えますから、そこから手を下げれば本当にボークを取られてもなんらおかしくない動作です。
プレートの上でボールを持ち換えてはいけないということはありませんが、
やるのなら、セットポジションに入るのではないということ、ボールを持ち換えるのだということがはっきりとわかるようにやってもらいたいものです。
プレイがかかる前にプレートに着かない
きっちり指導しいただきたいことの中にこれがあります。
案外高校生でも投手に転向したばかりの選手だったりするとこれをやる選手を見かけることがあります。
タイムの後の試合再開や、ファウルボールの後の試合再開時に、
プレートにつかずに球審からのプレイのコールを待っていたりするんです。
この時点ではまだボールデッドの状態ですから何もペナルティなどはありませんが、初歩的なこととして、
「オンザラバー」でなければ球審はプレイをコールできないということを
確実に指導していただきたいと思います。
プレートを跨いでキャッチャーを見る(サインを見る)
多分、本人は野球規則を知らないのだと思いますが、投手板を跨いだ状態でキャッチャーのサインを確認し、
サイン確認が終わると軸足をプレートに乗せながらセットポジションに入る投手を見かけることがあります。
このやり方は、走者がいれば完全にボークです。
たまにいるんです、こういうことをするピッチャー。
どの時点でボークかというと、セットポジションに入る前の段階、
プレートを跨いで捕手を(サインを)見たらその時点でボークです。
・投手は投手板に触れずに投球に関連する動作をしてはいけない
・捕手のサインを見るのは投手板についてから
この2つの大原則に反しているのでこれはいけません。
あまり野球経験のない監督さんやコーチだったりすると、案外知られていないことらしく、こういう投手が登場しやすいみたいです。
プレートに触れた状態で手を動かす
学童には多いですね。投手板に触れた後、まだセットポジションの姿勢になっていない状態で、右手を上げて 『ツーアウトぉぉぉ!』 とかって野手に向かって声掛けするんです。
学童ならボーク判定していませんけど、やはりマナーとしてやめて欲しいです。
どうしても手を動かしたいとか野手に声をかけたいなら、一度投手板を外してからにすべきです。
セットポジションで完全静止しない
これも多いケースですし、ボークを宣告する場合の半分くらいは静止不十分ではないでしょうか。
また、勘違いをしている人も実に多いのですが、完全静止が求められているので、両手を体の前で合わせた状態で足であろうと手であろうと全部が静止している必要があります。
本人は静止しているつもりでも、手がモゾモゾ動いているとか、足が微妙に動いているなどの場合は完全静止ではありませんので、その状態のまま投球動作を始めればボークです。
・セットポジションに入ったら2つか3つ数えてから投げる
・セットポジションに入ったら手も足も頭も一切の動きを完全に止める
・セットポジションに入ったら一度で良いから走者を見る
どのやり方でも良いと思いますが、いずれにしてもセットでは確実に静止するように指導してあげてもらいたいと思います。
片手を体側に下げない
これもかなり多いです。
走者がある時なら厳密に言えばボークです。
学童野球では審判はなかなかボーク判定をしませんが・・・。
ただ、僕は悪質なら躊躇わずにボーク判定します。
例えばですが、右投手が右手にボールを持ち、肘を曲げて自分の腹の前くらいでボールを持ったまま投手板に着き、その姿勢からセットポジションの姿勢をとったとします。
この時点でボークです。何故なら、野球規則では
『投手板についたら片手を体側に下げる』
ことが求められているからです。
もしこの姿勢のままセットポジションの姿勢をとられたら、一塁走者にも一塁審判にも、どのタイミングでセットポジションの姿勢をとったのかがはっきりとはわからないんです。
同じことが、左投投手の場合の三塁走者と三塁審にも言えます。
投手板についたら一旦片手(または両手でも良い)を体側に下げて(片手を体側に下げた状態で投手板についてもらえれば完璧)もらえれば、誰から見てもセットポジションに入っていないことがわかります。
この姿勢からセットポジションへ移るというのが正しい順番です。
また、投手板から軸足を外すのは構いませんが、再び投手板に触れる時には、必ず一度手を体側に下げてから投手板に入り直さなければいけません。
その辺も併せて、プレートへの入り方を指導してあげて欲しいと思います。
ご参考まで・・・
僕は自分が球審の時にさよならボークを宣告したことがあります。
最終回裏でスコアは同点、走者二三塁、投手(左投げ)が軸足を外して三塁へ牽制する振りをしました。
いわゆる三塁への偽投ですが軸足を外しているのでここまでは何も問題ありません。
投げそうな仕草は見せたものの、両手は顔に近いところで留めていて、実際に投げる動作はしていませんでした。
そのまま手を下げずに両手を合わせながら再び投手板についたので僕はボーク判定をして三塁走者を本塁へ進めてゲームセット、後攻チームのさよなら勝ちです。
先攻側のチーム、特に最後の投手には可哀そうなことをしたとは思いますが、これをボーク判定しないのはおかしなことなので仕方ありません。
他の審判員の方からも、
「日頃から選手にきちんと指導していないとこういうことになる」
と言われました。
こんな失敗を防ぐ意味でも、投手がマウンド上で守るべきマナーやルールの指導、お願いしたいと思います。