ボーク判定を下すのが怖い
今までの審判としての活動の中で、ある一つの特徴に気付いていました。
それは、審判員がボーク判定を出さないということです。
審判が何故ボークを取れないのか
ボークを取れないことで怖れるべきことは何かを
書かせてもらおうと思います。
◇野球規則を読むこと、暗記することの意味
野球規則の中では、ボークに関する 13項目として定められていれ、
講習会などに行くと、「ボークの13項目は覚えておいてくださいね」
なんていう言葉もよく聞かれます。
僕としては、こんな13項目を覚えても意味がない・・・
と思っていたりします。
もちろん、野球規則に書かれていることはボークに限らず頭に入れておく方が良いに決まっています。
しかし、野球規則というのは3回、4回、5回、或いはもっと読んだからと言ってそう簡単に理解できるものばかりではありません。
意味がはっきりと理解できないまま文章だけを丸暗記という方法もないわけではありませんが、そんな状態で暗記だけしていても、実践の場で即座に判定に活かせるわけではありません。
そうです、規則の一字一句ずべてを暗記だけしても意味がないのです。
結果どうなるか?
特に審判初心者の場合、ボーク判定が出せなくなります。
学童はもちろんですが、中学生の試合を観ていても
『あれ?なんでボークをとらないの?』 っていう場面は
何度も見てきました。
野球規則の話に戻りますが、確かに項目としてのボークは13項目です。
しかし、その内容を細かくみていくとボークに該当するプレイや動作は全部で25を超えます。
そんなものを何度も読んで覚えるのも良いですが、ボークは何のために定められているのか、
どんな姿勢や動作がその目的にそぐわないのかを理解することがとても大切であり重要です。
◇ 何故ボーク判定できない?
野球規則のボークに該当する内容を頭に入れていても、なかなかボークを宣告することは難しいです。
僕も以前はそんな時期がありました。
『あれってボークじゃん!』
頭の中ではそう思っていますが、体が反応してくれません。
どうしてそうなるのか?
審判員にしてみれば怖いのです。
怖いのでボークの瞬間に本当に判定をして良いのかどうかを躊躇ってしまします。
何故なら、ボーク判定をした後で守備側の監督から
『あれの何がボークなのか?』
と詰め寄られた時のことを考えてしまい、詰め寄られたらきちんと説明できるか?納得させられるか?
そう思うと自信がなくなり、だから審判は、今の投球・送球はボークだったんじゃないかと思っても、一瞬迷ってしまうのです。
この僅かの迷いがあるとボーク判定を下すタイミングを逸します。
時間にして一秒にも満たないほんの一瞬の迷いが、即座にボークを
出すタイミングを失わせてしまい、その遅れによってそのままボークを
出せなくなってしまいます。
ですから、この noteの記事大っぴらに言ってはいけない事かもしれませんが、ボークが見過ごされてしまうことは毎試合のように見受けられます。
◇ 本当はボーク判定をしない方が怖い
確かに、ボーク判定をすることで守備側監督から詰め寄られた時のことを考えると怖いものがあるかもしれませんね。
でも、よく考えてみるとボークだと思っていたのにボーク判定を出さないことの方が何倍も怖いんです。
その辺のこと、なかなか初心者審判の人には気付いてもらいにくい話ではあるのですが、ボーク判定をしないまま流してしまうと、
2つの怖さがあることを知っておいて欲しいと思います。
そのひとつが、攻撃側チームからの抗議です。
『今の投球(送球)はボークだったでしょ?』
『何故ボークの判定出さないの?』
『ボークとして処置してください。走者のアウトは取り消してください。』
重要な試合で、ましてや決勝戦などでしかも同点の場面とか、同点のままで迎えた最終回とかでこんな抗議をされたら、
ボークに関しては揉める可能性はかなり高いと思います。
こんなことになるくらいだったら、まだ守備側の監督から
『今の投手の何がボークなの?』と詰め寄られる方が全然気が楽です。
実際、審判員にはボーク判定の理由を説明する義務などありません。
もし説明するにしても、『ボークと判断したからボーク判定を下した』
それだけで十分なのです。
※ただ、試合中のちょっとしたタイミングや試合後などに、教育的や指導的
な意味合いでボークの理由を説明することはあります。
◇ もう一つの怖さ
僕のように、連盟や地域で公認の審判員をしている人は、色々な意味で責任を負っています。
法律的な責任(例えば怪我など)だけでなく、選手の育成或いは青少年の育成という意味での正しい指導をするという責任です。
自分が審判を務めた試合で勝ち上がった選手が、県大会や全国大会に進み、
準決勝、決勝などの大きな試合でボーク判定を受けて負けてしまったら、
直接的に責められることはありませんが、やはり人として野球人として、
責任を感じます。
そうなる事の方が、ボークを見逃したことで詰め寄られる、或いは抗議される事よりもずっと重いのではないでしょうか?
社会人野球なら「ボークだと思ったからボークにした」
「ボークと判断しなかったらボークではない」
それだけでその場を終わらせてしまえば良いのです。
プロ野球のように暴れる人はいません(笑)
でも青少年の野球では、正しく指導をすると言う意味でボークの判定を下す必要はあると思います。
実際に、下部組織の審判部責任者が上部団体の審判部門の責任者から、
『なんでボークを取らないんだ?』
『審判にどういう指導をしているのか?』
と試合後に詰め寄られるようなこともあったみたいです。
野球の規則というものをきっちり覚えてもらう、
そういう意味では試合の実践の場で審判が正しくジャッジする。
これに優る指導はないのだろうと思います。
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