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野球ファンも知らない球審のご苦労

野球規則とはあまり関係のない話で恐縮です。
ちょっとした雑談にお付き合いいただければと思います。

少年野球でも高校生でも社会人野球でも、それぞれに審判にはある程度の苦労が伴います。
とりわけ ”球審” というポジションは塁審にはないご苦労というのがあるので、プロ野球でも高校野球でも、応援する時にちょっとだけ、この記事のことを思い出してもらえたら嬉しいなと思いました。


◇ 怖い!(時もある)

小学生の野球でも怖い瞬間はないわけではないですが、高校生や社会人になるとかなり状況は変わります。

球審は、投手からの投球を判定する時にはスロットポジションと言って、打者と捕手の間に立つことが基本です。
これは投球の判定をする上で本塁ベースやその周辺がきちんと見えるようにするためと、ボールの通ったコースを最後まで(捕手が捕球するまで)を見るためです。
ですので捕手の後ろなどには立たずに打者と捕手の間に立つのが大原則になっています。

このスロットポジションに立って投球をする時に、捕手が外角に構えたりします。
すると自分(球審)の正面がやたら広くなって何もない状態になります。
そのまったく何もない空間の先に、投手と自分とが向かい合って立っている状態で、投手は自分に向かって投球するわけですから、一瞬ビビリますよ、本当に。

稀にありますが、捕手がアウトコースを要求してもサイン違いか何かで投手がインコースへ投げてくることがあります。
当然、ボールは球審に向かって飛んできます。
100km/h前後くらいの緩いボールならいいですが、120、130km/h くらいの速球だったりすると精神的に少し・・・みたいな感じはあります。
実際にファウルチップが当たることはそんなに珍しくありませんし、審判員の中には投手の投げたボールがダイレクトに胸に当たった人もいます。
けっこうスリリングです(笑)

※投球判定の時には球審は動かないで投球を見るというのが鉄則です。
ですから絶対に逃げるどころかピクリと動くことも許されません。

投球以外にも、打者が打撃をした直後にバットが飛んでくるとか、
捕手に足を踏まれるとか(金属スパイクでまともに踏まれると怪我します)、ファイルチップが自分に当たるなんてことは全然珍しくありませんし、保護具を着けているとはいえ、なかなかスリリングです。
僕のマスクには何度ファウルチップが当たったかしれません。

◇ トイレ問題(まだ直面してませんが)

小学生だと試合時間に制限があるのでまだ良いのですが、高校や社会人になると今のところは9回まで試合をするので、スムーズにっても2時間、長い時は3時間以上かかることもあります。

一応試合が始まる前には必ずトイレに行くようにはしているので、
試合中に我慢できなくなったという経験はありませんが、もし急に腹が痛くなったとか我慢できなくなったらどうしよう?と思う事はあります。
なんとなく不安なんですよね。
最悪は控え審判に交代をお願いすれば良いのでしょうけど、
球審がそれをやるにはなかなか勇気が必要です。
野球規則でも、病気やケガ以外では試合中に審判の交代はできないとしていますし。
”小”ならイニングの合間になんとかなるかもしれませんが、”大”だと結構大変そうですし・・・。

◇ 喉は大切に

これはけっこう経験してます。
審判、特に球審は声が小さいと判定を出した時に説得力も小さくなるので、僕はできるだけ大きな声を出すように心がけてます。
”常になんでも大きな声” とう訳ではないですが、
ファウル の時はすぐに試合を止める必要(試合を円滑に進める使命があるので)があったり、際どいコースのストライク判定、本塁でのタッグプレイなどは結構声を張り上げます。
特に正式な球場での球審では観客席にも届くようにという意識があるので、
声も自然と大きくなります。

翌日会社に行くとけっこう声が嗄れてますね。
『風邪ですか?』 と聞かれると
『審判です』 と答えます(笑)
これくらいなら全然気にはしないんですけど、試合中に声が嗄れてしまうのは本当に困ります。
試合が進み、後半から終盤になってくると喉がかすれて声が裏返ったりします。
これ、本当に嫌なんだけどどうしようもないので精一杯やるだけですね。

そんなこともあって、試合中は喉と相談しながら球審をしています。

◇ 保護具

軟式野球ではボールがゴムなのであまり危機感みたいなものはありませんが、硬式ではかなり保護具を意識します。
顔はマスクがあるので守られますし、靴もつま先にカップが入っている上に足の甲にもプロテクターをかぶせてます。
更に足には膝から脛全体を保護するようにレガース(捕手が足に着けているのとほぼ同じ)も着けます。
ですからから怪我をすることは滅多にありません。
男の急所(部位の名称は書けません(笑))、竿の方じゃなくて玉の方ですね、ももちろん一番確実に保護したいところです。
そこにはファウルカップというのを装着します。

僕が一番嫌なのは、このファウルカップを着けることで、これを着けると
あそこの部分が膨らむんです。
誰が見るわけでもないのはわかります、が、自分のズボンのあの部分が丸く膨らんでいるその姿はどうも・・・って感じで。
なので硬式の試合で一度だけ着けずに球審をしたことがあります。
幸い、あそこにボールが当たるということはありませんでしたが、後でよく考えると、万一当たっていたら・・・
少し反省をして、やっぱり着けることにしました。
保護具、とっても大切です。

ちなみに、保護具、用具はすべて自前です。
軟式用のマスクと硬式用のマスクの二種類、審判用の靴も球審用と塁審用の二種類、レガース、ファウルカップとファイルカップ装着用のパンツ、
審判用のズボンのベルトに予備ボール入れの腰に着ける袋に胸部プロテクター。
全部一式揃えたので金額にすると少なくとも5万円以上は使っていると思います。

ちなみに、軟式用マスクと硬式用のマスクを兼用で使うことはできません。
硬式用マスクを軟式で使うと、ファウルボールやファウルチップしたボールが変形して飛んでくるので、マスクの枠を通り抜けて顔に当たる可能性があるからです。

◇ 野球規則の熟知

これは球審に限った話ではなく、塁審にも当てはまることです。
しかしです、まだ審判を始めて間もない人が初めて球審を経験する時、
2回目、3回目、当面はけっこうなドキドキ感があります。
何故かというと、不測の事態が起きた時や揉めたときに、適用すべき野球規則をその場で思い出せるか、そのことをきちんと理解できているか、選手や監督に対して毅然とした態度で対応できるか・・・
そこで、そういう恐怖心をなくすためにも野球規則を勉強するわけです。
※他のスポーツのことは知らないのですが、野球に限ってだけは、
どんなに頭の良い人であっても、どんなに優秀な人でも、野球規則を一度勉強したくたいでは絶対にマスターできる人はいません。

野球規則に関しては習熟するまでに概ねこんな流れ・時間がかかります。

野球規則を読んでそこに書かれていることを頭で理解
(その時はわかったつもり)
↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓
実際の試合で対応方法がわからずにオタオタ
↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓
野球規則を読み返し理解度が高まる
↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓
実際の試合で同様の場面に遭遇するが前回よりはマシな対応ができる
↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓
野球規則を読み返し本当の意味で理解
↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓
実際の試合で同様の場面に遭遇しほぼ満点に近い対応ができる
※自宅に帰ってから実際のプレイを思い浮かべて、何度も
   イメージトレーニングをします

このプロセスを、打者、投手、野手、走者、各塁でのプレイと、様々な場面やプレイ事に繰り返されます。
ですので、一通りすべての事でトラブルにならないように、もしトラブルになったとしても対応できるようになるまでに大体2~3年くらいかかってるでしょうか。
そうなれば恐怖心もなくなり、自発的に『球審やりますと』 と言えるようになるのかなって思います。
僕自身もそれは同じでした。
(僕の知り合い数人は、塁審はしても球審をすることだけは断固拒否し続けてました(笑))
審判をする人は、審判を続ける限り勉強も続くということです。


アマチュアだろうとプロだろうと、審判をされる方は皆さんご苦労されているので、野球を観戦する時には是非、一瞬でも審判員を応援してもらえれば嬉しいです。

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