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誤解されているストライク
さて、遂にきました、野球でも最もジャッジする回数の多い投球判定です。
僕の想像ですが、多くの人がストライクゾーンを平面だと思っていないでしょうか?
この記事では、打者が投球に対してバットを出さなかった時、球審は何を見てストライク判定をするのかについてお話したいと思います。
ストライクゾーンは立方体
最近はメジャーの試合の様子を映像で見ると、ホームベース上に四角が表示されています。
多くの人は、「ボールがここを通過すればストライク」 、「通過しなければボール」 と思われているような気がしてなりません。
もちろんそれは間違いではありませんが、この映像に見慣れてしまうと、
ストライクゾーンは平面なのだと思ってしまう人も多いようです。
しかしそれは、打者がバットを振らなかった時のストライクについて誤解されていると言えます。
何故ならストライクゾーンは立方体であり、この立方体の一部でもボールが通過すればストライクだからです。
ストライクの定義
打者が投球を空振りすれば、ボールがどこを通っていてもストライクだというのは皆さんご承知の通りです。
では、打者がバット振らなかった時、どうなればストライクなのか?
これは野球規則で以下のように定義されています。
野球規則 定義73
打者の肩の上部とユニフォームのズボンの上部との中間点に引いた水平の
ラインを上限とし、ひざ頭の下部のラインを下限とする本塁上の空間をいう
つまりこれは、高さの上限と下限が決められて且つ本塁上の空間なので
ホームベースの形(五角形)の形をした立方体です。
メジャーリーグのようにホームベース上の四角い枠、つまり平面がストライクゾーンではないということです。
また以下のような定義もされています。
野球規則 定義72(b)
打者が打たなかった投球のうち、ボールの一部分がストライクゾーンのどの部分でもインフライトの状態で通過したもの。
これは必ずしも投球が、ストライクゾーンの前面(投手側)から入り、
五角形の立方体の後方へ通過する必要はないと解釈できます。
どの部分でも通過すれば良いので、本塁ベース上の空間を斜めに通過しても立方体の角の部分を通過してもストライクということです。
但し、「インフライトの状態」でなければいけないので、一度でも地面に着いてから跳ね上がって通過するボールはストライクではありません。
![](https://assets.st-note.com/img/1725897896-qXPpYmJjHWKn8SeOvtEIBcuf.png)
ここを通過しなかったら必ずボールとは限りません
言い換えるなら、映像上の四角い枠を通過しなかったとしても五角形のどこかを通過すればストライクということもあり得るわけです。
ですから、画面に表示される四角い枠の中を通らなかったからと言って、
必ずボールであるとは限りません。
実際に球審をしてみるとわかるのですが、真っすぐ飛んできた投球が打者のすぐ手前でクイっと曲がることは何も珍しいことではありません。
真横に変化するスライダーのようなボールもあれば、斜めに落ちながら変化するボールもあります。
そのような場合、球審の目で見ていると本当にホームベース上を斜めに通過する場合が本当にあるのです。(図ー1参照)
縦に変化するボールやスピードを殺した緩いボールもしかりで、高く見えたボールでも、ホームベース上を通過しながら五角形の立方体を斜めに通って落ちてくる場合も少なくありません。(図ー2参照)
もし完全なストレートであっても、投手が投手板の端ギリギリのところから投げたボールだとホームベース上を斜めに通過することもあります。(図ー3参照)
![](https://assets.st-note.com/img/1725900735-CadWKfuiq4hEV8Xo6gNlBGY5.png?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1725899775-A1TzalysdWJXRcCe2qD4nUP7.png?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1725900379-TSQuVKI4C79xYUa8v0edkt3c.png)
ボールの一部が通過してもストライク
印象で判断してはいけない
上述で説明している通り、五角形の立方体を通過したかしないかがストライクかボールかの基準です。
ですので、捕手が横に腕を伸ばして捕球した、或いは地面すれすれの低いボールを捕球したなどのように、捕手がボールを捕った位置でストライク/ボールを判断する人も珍しくありません。
しかしそれは野球規則で考えると正しいジャッジではありません。
特にテレビの画面を通してみている野球ファンは、ボールがどこを通過したのかがはっきり見えているわけではないので、つい捕手が捕球した位置でストライクとかボールとかという印象を持ちやすいようです。
そうすると「え?今のボールじゃないの?」 「あれがストライクかよ」 と疑念を持ちます。
印象ではなく、ストライクゾーンがどこにあるのか、ボールはそこを通過したのかしなかったのかで考えないと、このような誤解につながりやすいですね。
言葉としての『ストライク』の意味
これはファンとして野球を観戦する時にはあまり意味のないことかもしれません。
しかし、その試合を最初から最後まで裁く審判、特に球審にとっては少し違う意味合いがあります。
端的に言えば、ストライクとは 「打ちなさい」 という意味があります。
大袈裟な言い方かもしれませんが、野球というのは打者が打って初めて試合が動き、攻守互いの腕の見せどころ、勝負の駆け引きが始まるわけです。
ところが折角の「打てるボール」を打とうとせずに見送る場合には
「打ってくれよ、打てるボールだろ?」
そんな意味合いを込めて 「ストライーック!」と球審はコールするわけです。
雑談
僕は自分が審判をする時、4審判の中でも特に球審をやりたいと思う人です。
もちろん、塁審が嫌だなんて思ったりはしませんが、どれが一番好きかと聞かれれば球審と答えます。
球審というのは、ある意味で投手の意図や思惑を感じることができるポジションで、これは実際に何度か経験していますが、
全国レベルの強いチームの試合で球審をした時に、アウトコースギリギリに
来たボールを僕はボールと判定しました。
するとその投手は、同じコースにボールひとつ分内側へ入れて投げ手きました。
僕はストライク判定を出しましたが、この投球には
「さっきの球がボールなのはわかった。じゃこれならストライクだろ?」
と、僕に問いかける投手の意思を感じることができたので、
やっぱり球審は面白いと感じる瞬間でした。
小学生だとそうでもありませんが、高校生くらいになると例え練習試合でも結果如何ではレギュラーメンバーになれるかもしれないという思いがあったりするので、真剣に打席に入ります。
そんな時、打者がボールだと思って見逃したボールを僕がストライク判定した瞬間にグっと睨むように僕を見る選手もいます。
もちろん僕は睨まれたくらいではひるむようなことはありません。
むしろ選手の本気度ややる気が伝わってきて嬉しいとさえ思うわけです。
こんな、目には見えない選手との駆け引きができる球審、僕は好きです。
ストライクが誤解されているお話でした。