『move / 2020』深田晃司監督 【在宅映画制作 LINER NOTES #23】
主体( i )を剥奪されたとしても、映画(movie)は、それでもなお静物であることから抗うだろう。
深田晃司監督の在宅制作映画は、壁の前に佇むひとりの女性のいくつかの姿を切り取る『move / 2020』だ。何かを語り掛けるわけでもなく、フレームの中で動きを抑制されたかに見える被写体であるが、外の音は動き、陽は動き、女性の中では感情が動いていることが感じられる。この女性は一体何を思っているのだろうか。その眼差しから、私たちは何を受け取るべきなのだろうか。彼女が向かった先に想いを巡らせ、ラストカットの白いキャンバスに、その声なき動作を投影すること。監督からの投げかけは、これからの私たちの行く先を思索するための、ひとつの羅針盤となるかもしれない。
Postscript #23 深田晃司監督
・今回の作品の着想は?
大変なときには、励まされる映像、元気になる映像が見たくなるのが人情です。そして実際、閉塞する状況に笑顔をもたらすような優れた作品も生まれてきています。一方でこの大きな生活習慣の変化(変化というよりは突然ぶん殴られ地べたに押さえ込まれるような暴力的なそれ)の中で、そこにあるかもしれない孤独や悲しみをただ静かに見つめるだけの作品が社会の末席に存在していても良いのではないかと思い作りました。
何はともあれ、お声がけいただき、ありがとうございました。
・撮影時のエピソードや裏話を教えてください。
最近朝から晩までzoomをしてばかりです。zoomの画面にも慣れ始め飽き始めてもきていたある日、講師として携わっている某映画学校のある日のオンライン打ち合わせで目にした、俳優で講師の兵藤公美さんの部屋の色彩や光加減が、ご自身の凜とした姿と相まって映画の画として別格に完成されていることにふと気づいてしまってから、どうしても撮っておきたくなりました。打ち合わせをしながら、途中からこの映画のことばかり考えていて気もそぞろでした。関係者の皆さんごめんなさい。
・今回の作品を制作して実感したことは?
映画作りは何はどうあれ面白い。
・ 在宅映画制作を通して、これからの映画制作に活かせそうなことだと思ったことは?
俳優にいろいろ委ねるのは楽でいいな、と思いました。
・作品をご覧になった人にメッセージをお願いします。
どうぞご自愛ください。健康第一で。
・その他、感じたこと、考えたことがあれば、教えてください。
締め切り遅れて申し訳ありません。ミニシアター・エイド基金、おかげさまで無事に終わりました。
監督 / 深田晃司
キャスト
兵藤公美
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