『面倒くさい人』 佐津川愛美監督【在宅映画制作 LINER NOTES #3】
面倒?めんどう?メンドウ? それでも?(それでも!)私たちは、関わり合って生きていく。
お嬢様とばあやを中心に渦巻く、自宅待機期間のある朝のおかしな騒動は、極限まで削ぎ落された要素と構成、縦型の画角、鳴り響く三味線などなど…感覚と狙いの狭間のような、佐津川監督の鋭利な感性の中で語られていく。同時に、監督自ら演じるお嬢様を観続け、引き込まれていく中で、演者が物語を牽引していく力強さを感じてしまう。ひとつの作品の中で、物語の語り手と演じ手のふたつの顔を見事なバランスで同居させている佐津川愛美の力技に唸らされること間違いなしの一作だ。
Postscript #3 佐津川愛美監督
・今回の作品の着想は?
まず声をかけて頂いた時に、こんな時だからこそ好きな人と楽しくやりたいと思い、友人であり作家としてファンである山野海さんに声をかけました。海さんは人情を素敵に描いてくれるので、ほっこり優しい作品に出来るかなと思いました。
脚本家・竹田新であり、ばあやを演じてくれた海さん。私の中では2人でつくった気持ちです。
私は身体表現がとにかく好きで、今まで自分がつくりたいものを考えると台詞のあるものにはそんなに興味がありませんでした。
自分の作品に自分が出演する事も今までは全く考えていませんでしたが、今回の場合それが1番現実的だと言われ、確かに遠隔で演出することは私には難しいと思い、自分で演じる事にしました。
海さんと話し、くだらないものをつくろうとなりました。友人や恋人との話しより、「ばあや」という存在は響きだけでも既に面白いからいいなと思い、ばあやがお嬢様の家に行こうとして止めるというお話しになりました。
・撮影時のエピソードや裏話を教えてください。
撮影しようと思ったら近所で工事が始まったり、雨で音がかなり入ってしまうので断念したり。
1番最初の酔っているシーンから撮り始め、ここが1番テイクを重ねました。
普段現場で出来ないことをやろうと思い、本当に飲みながらやりました。酔ってきているのにどこか冷静に見ている自分がいてそれは面白かったです。
・今回の作品を制作して実感したことは?
友人の子供に「あいちゃん部屋散らかしすぎだよねー酔っ払ってたー」と言われ、散らかし加減が足りなかったかなぁと思っていたので、子供に伝わったなら大丈夫だ!と思いました。笑
縦フレームについて好意的な感想をいくつか頂きました。自分としては部屋の中をあまり見せたくない気持ちと、一応お嬢様が住んでいる説得力がある部屋に見えるように探っていくと好きなアングルが見つかったので、これだと思い縦フレームにしました。ドタバタ感を出せたと思いますし、狭い空間のなかで成立させる為に選びましたが、色々と発想が広がったので選んでよかったと思っています。
・ 在宅映画制作を通して、これからの映画制作に活かせそうなことだと思ったことは?
できる範囲でやるという、いい意味で割り切って挑戦する事は自分の可能性を広げることかもしれないと思います。
実際私は今回お声がけ頂かなければ、こんなに台詞のある作品はつくっていなかったと思います。思ったより楽しめたので、何事もやってみる事に意義があると思いました。
オンラインでの打ち合わせや本読みも、特に困ったことはありませんでした。むしろ、予定が合わせやすく早急に動けたので、効率的でした。
・作品をご覧になった人にメッセージをお願いします。
自粛期間、共感すること、共有すること、誰かと繋がっていると実感できる事、そういう人との繋がりが心の健康に大きな影響を与えるのだと実感しました。自分を想ってくれる存在の有り難さ、嬉しさ、そんなものが出せていたらいいなと思います。
もやっとした気持ちを忘れる時間になったり、ほっこりしてもらえたりしたら、更に嬉しいです。ご覧頂きありがとうございました!
・その他、感じたこと、考えたことがあれば、教えてください。
1人でお芝居していても楽しくなかったので、やっぱり私は現場でみんなでつくり上げる事が好きだなぁと思いました。早くみんなで現場でお芝居したいです。
でもどんな状況でも作品をつくり続けることは、すごく大切だと思いました。みんなの熱量が高く、そんな仲間達と一緒にひとつの作品を完成させられた喜びがとても大きかったです。
「SHINPA」然り、こういう時のエンタメ界の人間のパワーは素敵だと思っています。
今までとは違う世の中になるかもしれませんが、いつだってまず自分が楽しむこと、大切な仲間たちと手を取り合うこと、諦めずに進んでいけることを願っています。
音楽打ち合わせのとき!
キャストとの本読みの写真をすっかり撮り忘れてへこんでいます。みんなで作品をつくることが出来て、楽しかったです。
『面倒くさい人』
監督・撮影・編集 / 佐津川愛美
脚本 / 竹田新
作曲・演奏 / 小山豊(津軽三味線)
音響効果 / 岡村崇梓
キャスト
佐津川愛美
真凛
佐藤正和
清水伸
山野海