コロナウイルス感染と川崎病
Lancetのロンドンの小児ICUからの報告です。
4月半ばの10日間の間に8名もの炎症性ショックの小児が運ばれてきました。全員が生来健康で、6人がアフリカ系カリブ人で、1人は中東、1人はアジア人です。7人が75%tileを超える肥満がありました。うち4人にはCOVID-19の家族内発生がありました。
臨床的には38−40度の高熱、様々な紅斑、結膜炎、末端の浮腫、全身性の疼痛、著明な消化器症状が特徴です。輸液に反応しないWarm shockで、ノルアドレナリンやミルリノンを必要としました。呼吸器症状はないものの、7名で呼吸器補助を必要としました。心エコーでは冠動脈輝度上昇があり、1名は巨大冠動脈瘤を形成しました。1名は脳梗塞を併発して死亡しています。心筋逸脱酵素が著明に上昇していることが特徴です。
コロナウイルスと川崎病という文脈で取り上げられる論文ですが、入院中の肺胞洗浄液や鼻咽頭吸引液ではすべての児で新型コロナウイルスは陰性でした。さらに1名はアデノウイルスとエンテロウイルスが検出されています。ただし、退院後に2名の小児がコロナ陽性となります(1名は死後)。さらにその後20名の同様の症状の小児が報告され、うちこの8名を含めた最初の10名の新型コロナの抗体が陽性になったということです。
以下は個人の感想です。
最近テレビでもコロナウイルスと川崎病が取り上げられていました。今回の8名には、イチゴ舌と頸部リンパ節腫脹の記載はありませんが、発熱、皮疹、結膜炎、末端の浮腫という4項目からは、非定形川崎病様ではあります。ただ年齢は4歳から14歳と川崎病の好発からはかなり外れています。また、著明な心筋逸脱酵素の著増とショックで、呼吸器補助を必要とするという特徴的な経過も、典型的な川崎病とは大分異なるように思います。家族内発生が4人あるものの、呼吸器症状がとぼしく、入院中のコロナウイルス検査が陰性であった点も解釈を難しくしています。どのくらい検査を繰り返したのかも不明です。抗体検査もサラッと付け加えられてるだけで、定量的に検査されたのかも不明です。
ちなみに川崎病学会は、日本と近隣諸国では現時点では川崎病とCOVID-19のとの関係を積極的に示唆する情報はないという声明をだしました。当院でも川崎病で入院された児にはコロナウイルスPCR検査を行っていますが、今の所陽性はいません。
コロナウイルスと川崎病については、まだはっきりと言える段階には無いようです。日本は川崎病が多いので、今後国内の知見は集まっていくと思います。当院でも引き続き川崎病とコロナの検査を行いますが、いつどの検査をすればいいのかまだ試行錯誤中です。
https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(20)31094-1/fulltext
http://www.jskd.jp