【声劇台本】夢喰うバクと寝たくない子
【あらすじ】
春の夜、夢を食べる存在であるバクは、ある家に侵入する。
そこは昔、バクを可愛がってくれていた少女の住む家だった。
バクは少女と再会するが、少女は寝たくないと言い――。
ハートフルコメディ。
【登場人物】
・バク(性別不問)……ふわふわのぬいぐるみ。ファンシーな存在。
・鈴木サキ(女性)……中学生。
【推定所要時間】
約25分
【この台本について】
この台本には、語り(地の文)があります。
前編の語り(地の文)はバク、後編の語り(地の文)はサキとなっております。
セリフ部分は各役の担当者が読むことを想定しています。
ただし、一人で二役を演じていただいても構いません。
何卒よろしくお願いいたします。
【本編】
***前編(語り:バク)***
明けない夜はない。
何と残酷な言葉なのだ。
我はふよふよと春の空を漂う。
我はバク。名前は……ちょっと恥ずかしいので伏せる。
*
ここは地方都市から電車で三十分のベッドタウン。人口が多い。
つまり、眠る人間も多い。夢がいっぱい。
夢を主食とする我にとっては大変満足な土地である。
バク、と聞けばどんなイメージを持つだろうか。
我は大変愛らしいぞ。
まるまるとしたボディに可愛らしい脚、鼻はちょっと長い。
色はピンクと水色。実にファンシー。
春の風に身を任せ、というか強風に煽られ、飛ばされていると、一軒の家の壁にぶつかった。
バク「うぐふっ⁉」
我ながら無様な声を出してしまった……。
まあ、だが良かった。さっきから止まることができなかったのだ。
どれ、この家の人間の夢を食べてやろう。
そうして気付く。ここは――。
バク「懐かしいではないか」
呟き、独りごちる。
いかんいかん、こんなことをしていてはまた風に飛ばされてしまう。
我はふわふわボディから針金を一本取り出す。
玄関扉の鍵をキュートな手足でピッキングしていく。
開いた。
ふむ、我ながら完璧。
中にお邪魔し、鍵を閉め、我は寝室に向かった。
バク「うぐぁ……」
我は唸っていた。この家は両親と娘という家族構成だ。
両親の夢。大変不味いではないか。
不味い、ではない。苦いのだ。ビターすぎる。
こんなの現実と同じじゃないか。人間辛い。
頼む。娘は、娘はゆるふわな夢を見ていてくれ。
我はスイーツが好みである。
隣の部屋に向かい、全身の体重をかけ、ドアノブを下ろす。
扉が開く。我はスピーディーに中へ滑り込んだ。
ころころころ。
とんっと、何かにぶつかる。そこには十代半ばくらいだろう少女がいた。
バク「……こんばんは」
サキ「……こんばんは」
我々は挨拶を交わし合った。妙な沈黙が訪れた。
窓際に佇むその少女は、我を一瞥、そして、顔を逸らし、頬をつねった。
そして、痛みを確認したのか、顔をしかめた。
サキ「ありえない」
バク「だが、ありえるのだよ。少女」
サキ「寝たくなかったのにな。結局寝ちゃったか」
バク「これは夢ではないのだよ、少女」
サキ「ありえないなー。なんかふわふわふのアリクイみたいなのが喋る夢なんて。私、ファンシー」
バク「アリクイではない。バクなのだよ、少女」
サキ「バクって喋るの?」
バク「喋るわけなかろう!」
サキ「なんで喋ってるの?」
バク「我は夢喰うバクだからである。そんじょそこらの草を食んでいるバクとは格が違うのだ」
サキ「へぇ」
彼女は心底どうでも良さそうな声を出した。
きっと、本当に興味がないのである。いささか傷つく。
だが、そんなことより、今晩の食事である。
バク「さて、少女よ。改めて自己紹介をしよう。我は夢喰うバク。今宵は貴殿の夢を喰らいにここに参上した」
サキ「あ、私、寝ないんで。別のところに行ってください」
バク「なに⁉」
サキ「いや、だから、寝ないんで」
我、戦慄。
少女は窓を開け放つ。
サキ「どうぞ、お帰りください」
バク「そんなわけにはいかぬ」
サキ「では強制的にお帰り願おう」
そういって、少女は我を持ち上げた。
バク「何をする」
サキ「春の空にバクを放とうかと」
バク「待って、すいませんでした。外、風すごくて飛ばされちゃうんです。勘弁してください」
少女はしぶしぶといった様子で我を床に降ろした。
危なかった。助かった。ほんとよかった。
少女は私の隣に腰を下ろし、背をフニフニと押す。
サキ「私ねないよ? いいの?」
バク「ふむ、夢喰うバクを舐めてもらっては困る。眠らない子を寝かしつけるのなんて序の口だ」
サキ「ま、まさか」
バク「そう、そのまさかだ!」
我がそのくりくりとした黒目を光らせると少女は息を呑んだ。
我は放つ。
バク「ホットミルク!」
サキ「は?」
バク「我はホットミルクを作ろうと思う!」
少女に視線をやる。
バク「この家の冷蔵庫は一階のキッチンだな?」
サキ「いや、そうだけど」
バク「ではさっそく!」
サキ「待って。ホットミルク作るんじゃないの?」
バク「作るが」
サキ「うん、だから、どうしてうちの冷蔵庫に?」
バク「何を言ってるんだ。牛乳がなければホットミルクを作ることはできぬであろう」
サキ「うちの牛乳で作るの?」
バク「バクである我は金銭を持たぬ。牛の乳が手に入るわけがなかろう」
サキ「うん、そうだね」
憐れむようなその目に我は小首をかしげる。
バク「どうしたのだ?」
サキ「いや、魔法とか使うのかなと」
バク「何を言っているのだ。我はバクだぞ」
サキ「うん、そうだね」
バク「どんどん我の扱いが雑になってきていないか少女よ」
サキ「そんなことないよー」
バク「そんなことあるだろう」
我は眉間にしわを寄せる。
我は夢喰うバクなのだ。こんな雑に扱われるものではない。
我は一つ思いつき、提案する。
バク「では、もう一つ、我の技を披露してやろう」
我は咳払いする。
バク「その名も、昔話だ!」
サキ「……へー」
リアクションが薄すぎて、我は泣きそうになった。
めげてはならない。我はめげぬのだ。
バク「昔々あるところに」
サキ「昔々っていつくらいなんだろうね」
バク「昔に昔が重なっているのだ。かなり昔であろう」
サキ「十×十で百年くらい前?」
バク「どういう計算なのだ」
サキ「でも百年前って大正時代か。昔々って言うともうちょっとさかのぼりたいよね」
バク「竹取物語だとすれば平安初期である」
サキ「昔々昔々くらいになるのかな」
バク「貴殿の計算で行くとそれだと一万年前になるぞ」
サキ「一万年前って稲作?」
バク「知らぬ」
サキ「私は米よりパンが好き」
バク「我は夢喰うバクである」
サキ「三回くらい聞いた」
そこで我は我に返る。そう、我が我に返るのである。
こんな話をしたいわけではない。
もう一回咳払い。
バク「続けるぞ。昔々あるところにおじいさんとおばあさんが」
サキ「おじいさんとおばあさんって何歳くらいかな」
バク「そうだな。イメージとしては七十から八十というところか」
サキ「その年で山に芝刈りに行って、川で洗濯するのすごいね」
バク「子育てもするのだからな。大変すばらしいご夫婦である」
サキ「もう、昔話の主人公はおじいさんとおばあさんでいいのでは?」
バク「その手もあったか」
我は感心して、また我に返る。
違う違う。こんな話がしたいわけではないのだ。
バク「続けるぞ」
サキ「はい」
バク「おじいさんは芝刈りの帰り道に光る竹を見つけました」
サキ「これはあれですね」
バク「あれである。竹を切ったら中から」
サキ「小さな赤ん坊が――」
バク「ではなく、金貨が出てきたのである」
サキ「はい⁉」
少女の叫びをよそに我は続ける。
バク「貧乏な老夫婦はその金を使い、まずインターネット環境を整えました」
サキ「平安時代⁉」
バク「パソコンに触れたおばあさんは覚醒」
サキ「何に目覚めたんだ」
バク「あっという間に株の取引きを覚えます」
サキ「これは強い!」
バク「おじいさんも覚醒」
サキ「今度は何⁉」
バク「家事こそが自身の天職だと気づきます」
サキ「掃除洗濯炊事!」
バク「おばあさんはやり手の株主に、おじいさんはそんなおばあさんを支える主夫として、二人は末永く幸せに暮らしました」
サキ「よかった、よかった」
バク「第一部・終わり」
サキ「第一部なの⁉」
バク「第一部なのである。第二部も続けようか?」
サキ「いや……ちょっと疲れた。水飲んでくるわ」
少女は部屋を出ようとするが、ふっと振り返る。
サキ「何か飲む?」
バク「そうだな。では、ショコラショーを」
サキ「水道水な」
なんて冷たい。
我は扉越しに不平を漏らす。
だが、我は嬉しい。
やはり、少女、いや、サキはあの話が好きなのだ。
一見大きくなったが、中身は変わっていたいということか。
我はやはり嬉しく、そして、悲しくなった。
サキの部屋。
積まれる段ボール。
ベッドの姿もなく、マットをフローリングに引いて寝ている。
そう、この光景は知っている。
引っ越し前夜というやつだ。
今晩ここに来たのも何かの縁なのだろう。
我は昔のことを思い出す。
そう、ちょうど十年前だ。
小さな少女の隣で我は必死に彼女を寝かしつけていたのだ。
懐かしさになんだか泣けてきたのである。
***後編(語り:サキ)***
私は一階のリビングに降り立ち呆然としていた。
この私、鈴木サキは自分で言うのも変だけど、本当に普通だ。
まして、霊感なんてない。だったらどうして……。
どうして子供の頃に捨てたぬいぐるみが戻ってきたあげく喋っているのだろう。
夢を見ているんだなと思ってたけど、今、水道水頭からかぶったらやっぱり夢じゃなかったわ。冷たいわ。
タオルで髪の毛を拭く。
はじめは全く気付いてなかった。だけど、さっきの昔話でわかった。
あの話、聞いたことがある。そう、俗に言う空想上のお友達にだ。
私にはお気に入りのぬいぐるみがあった。バクのぬいぐるみ。
名前はユメちゃんと言った。
ファンシー。
ユメちゃんは私の一番の友達で、朝から晩までどこへでも連れまわしていた。
そして、ある時、話し始めたのだ。
バク「我はユメちゃんである」
幼いながらユメちゃんの口調が不満だったのを覚えている。
そう、だけど、それは全部妄想。
子供の逞しい想像力によって生まれたもののはずなのに。
呪われるのだろうか。
私は戦慄した。
このパターンはだいたいそうだ。昔捨てた人形が引っ越し前夜に登場。
また捨てると、引っ越し後もついてきて。そういうパターンだ。
とっとと追い出したほうがいいのか、丁寧にお出迎えした方がいいのか、丁寧にお帰りいただいた方がいいのか、投げ捨てたほうがいいのか。
私は緊張しながら階段を登る。
お母さん、お父さんに言うのは恥ずかしすぎる。
これで何もいなかったら私の今後に関わる。
扉の前、息を深く吸う。
扉を開けた。
サキ「いや、お前が寝るのかよ」
思わず口を出た。
床に敷いた布団にそれは転がっていた。
私のお気に入りの低反発素材の枕もちゃっかり使っている。
バク「おや、少女。戻ったのか」
そういって薄目を開き、ユメちゃん、いや、バクは転がる。
そして、転がり切れずにひっくり返ったカメのような体勢になる。
短い手足をばたつかせる。
サキ「……あの、大丈夫?」
バク「我は夢喰うバクだぞ! このくらい」
ころころしている。
私は暇になって布団の上に座る。
一分後。
バク「……助けてください」
サキ「よろしい」
私は快く助けてあげた。
この一分の間に私のバクへの恐怖はきれいさっぱり消え去っていた。
こんなバクが人を呪えるはずがない。
呪おうとしたらひっくり返してやる。
バクは一息つくと私を見てぎょっとした。
バク「どうしたのだ⁉ ずぶぬれではないか!」
サキ「ちょっと頭冷やしたくて」
バク「何かあったのか⁉」
サキ「目の前に喋るバクがいます」
バク「我か!」
ぬぉおとやはりユメちゃんらしからぬ声を上げながら、バクは私の膝に飛び乗った。
バク「我は温かい。抱っこすることを許可する」
ふんっと鼻を鳴らした。
ふっと込み上げてくるなつかしさ。
こんな会話、したことがある。私はバクを抱き上げる。
やはり、ユメちゃんだ。
このガーゼ布の触り心地。日向の匂い。
サキ「痛い」
腕に何かが刺さった。
何なんだよもう。
見ると、バクのお腹のあたりから針金が出ている。
サキ「針金刺さってるけど」
バク「刺さっているのではない。刺しているのだ」
サキ「理由かもーん」
バク「ピッキング用である」
サキ「ピッキング」
バク「ピッキング」
サキ「ピッキングかぁ……。ピッキング⁉」
バクの口から唐突に出てきた犯罪めいた言葉。
私は思い至ってしまった。
サキ「もしや、うちにもピッキングして」
バク「もちろんである」
私は無言でバクを持ち上げ、左右に引っ張った。
バク「何をするのだ! 痛いではないか!」
サキ「警察には突き出しにくいので、とりあえず伸ばしときます」
バク「我は金品を盗むなど姑息な真似はしない。ただ夢を食べているだけだ。無罪である!」
サキ「ピッキングの時点で有罪」
バク「ぬおぁああああ!」
しばらくもちもち伸ばして遊ぶ。
ふっと時間が気になってスマホを見るとまだ深夜二時。
もう深夜二時。
バク「午前二時ではないか!」
バクがスマホを覗き込んでくる。
そして、私の膝をてしてしと叩く。
バク「早く寝たまえ。良い夢を見るためには良い時間に寝ることだ」
サキ「いや、寝ないから」
バク「理由かもーんだ」
サキ「……」
バク「引っ越し前夜なのだろ?」
サキ「言ったっけ?」
バク「この部屋を見ればわかる。引っ越しには力がいるぞ、寝たほうがいい。そして、我は夢を喰いたい」
サキ「欲望に忠実だな」
バク「我は夢喰うバクである」
あまりのしたり顔。
ツッコミを入れる気も無くす。
バクは私の膝から布団にダイブする。
そして、ころころころころと我が物顔で布団の上を転がる。
バク「貴殿もころころしてみたまえ。心地よいぞ」
サキ「いや、だから寝ないから」
バク「どうしてだ?」
私は言葉に詰まった。
理由は本当にくだらない。自分の中で勝手にこだわって。
寝たほうがいいことはわかってる。
でも――。
サキ「寝たら……すぐ、朝がきちゃう」
バク「……」
サキ「寝て起きたら、すぐ朝。そんなの怖い……」
言葉にして悲しくなってきた。
寝ていても起きていても朝は来る。
なのに、朝が来ることが怖くて、寝るのを拒んでいる。
目を閉じて次の瞬間は朝。それが怖くてたまらないのだ。
サキ「なーんて、馬鹿らしいよね!」
笑って言ってみる。
なのに涙が出てくる。
本当に馬鹿らしい。
バク「いいのだよ、少女。いや、サキよ」
名前を呼ばれ、顔を上げる。
バクは私の前にちょこんと座る。
バク「明ける夜が怖いのだな」
私は頷く。
バク「それでいいのだ」
バクは言った。
バク「明けない夜はない。それは残酷な言葉だ」
サキ「え」
バク「寝る人間が劇的に減る。ピッキングをしたら見つかる。つまり腹ペコ時間帯である」
サキ「ああ……」
バク「そして、人間にとって新しい一日の始まりである。それが楽しみという人間もいるであろうが」
バクが私を見つめた。
バク「それがたまらなく苦痛だと言う人間もいる。いるのだよ、サキ。そういう人間もいていいのだよ」
その瞳が昔のように優しく私を映す。
バク「馬鹿らしくない。それでいいのだ」
短い手足。
とことこと歩き、バクは枕を叩く。
バク「だからこそ、今は寝ようではないか。サキよ」
サキ「でも……」
バク「厳しい現実と向き合うために寝るのだ」
バクに促されてためらいながら布団に転がる。
バク「そして、現実に傷ついたら眠ればいいのだ」
バクがシーリングライトのリモコンを渡してくる。
バク「たくさん眠って、力を蓄えるのだ。安心したまえ。眠る貴殿は無敵だ」
サキ「なんで?」
バク「我というガーディアンがいるからな。悪夢を見ることは一切ないだろう」
ふんっと鼻を鳴らしたバクがなんだかおかしくて、懐かしくて。
バク「な、なななな、泣くことはないだろう⁉ そんなに我が頼りないか⁉」
サキ「ううん、違う」
バク「だ、だったらどうした⁉」
バクを抱きしめる。
サキ「ありがとう、ユメちゃん」
そうして昔のように――。
バク「誰が我を枕にしろと言った!」
サキ「ごめん、つい癖で」
昔は枕にしても許してくれてたのになぁ。
*
次の日起きると、バクはそこにはいなかった。
当然だ。
だが、悪くない夢だった。
その後は目まぐるしいスピードで日々が動いた。
新しい街、新しい家、新しい学校。
新しい日々は確かに苦痛だった。
知らない事、慣れない事。恥もかいた。人に迷惑もかけた。
それでも、何とか生きている。
夜はきっと怖くないから。
明日は新しくできた友達が遊びに来てくれる。
私はまだ片付けていなかった段ボールを整理する。
最後の箱を開いた。
バク「サキよ。段ボール箱は早く開け――」
閉めてやった。
なにかいた。なにか見てはいけないものが。
段ボール箱が暴れる。もごもごうるさい。
私は深呼吸し、蓋を開く。
それは飛び出てきた。
そして、勢い余って天井にぶつかり、フローリングにひっくり返った。
バク「サキよ。中々段ボールを開けないものだから困っていたのだよ。そして、今も困っているのだよ」
手足をバタバタさせてそれは言う。
サキ「あー、嘘だ。ありえない」
バク「だが、ありえるのだ。サキよ」
サキ「明日友達来るのに寝ちゃったかぁ」
バク「これは夢ではないのだ。サキよ」
サキ「ありえないなー。昔大事にしてたぬいぐるみが喋るなんて」
バク「ぬいぐるみではない。夢喰うバクなのだよ。そして、助けて」
私は仕方なく、バクを助け起こした。
バクはしたり顔で言う。
バク「我はサキのガーディアンなのだ。この場にいるのは当然であろう。正直なところ、新天地の夢の味が気になってついてきただけだがな!」
サキ「欲望に忠実だ」
バク「我は夢喰うバクであるからな」
私はそれを持ち上げてみた。
ちくりとした。ピッキング用の針金があった。
そう、あれは夢ではなかったのだ。
私は天井を仰いだ。
明けない夜はない。その言葉は残酷だ。
朝は来てほしくないと思ってたんだ。だけど――。
バク「よろしく頼むぞ、サキ」
そういって、バクは小さな前足を私に差し出した。
目の前にこのバクがいる、こんな夢みたいなことが続いてほしいと願ったわけじゃないんだけどなぁ。
そう思いながらも、私はバクの手を握った。
【了】
***
☆利用規約
・著作権は作者にあります。自作発言、二次配布は禁止致します。
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・物語の改変は禁止致します。(性別の変更、結末の変更、その他、物語が変わるような変更)
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