#03 流れの数値計算 基礎式
学生のとき勉強した流れの基礎式の備忘録です。あまり自信ありませんが、水理学とのつながりを意識しつつ。
天気予報もコロナの飛沫拡散も基礎は同じはず。知らんけど。
流れの数値計算 基礎
流体の数値シミュレーションの流れは以下です。
①物理モデルの選択:
対象とする流れから、NS eq.をどう扱うのか(そのまま or 条件を加えて近似)、流れの基礎式となる偏微分方程式を決定する。
②離散化:
①の偏微分方程式を離散化する手法を選択し、計算格子を設定することで実際に解くべき代数方程式を導く。差分法は少し勉強しました。
③数値計算:
②に導いた代数方程式を解く数値計算法を決めて(反復法や消去法など)、プログラミング言語を用いて記述、計算結果を出力する。
④可視化:
③で出力された数値データをグラフやアニメを使って、可視化する。
流体力学はもちろん数値計算方法やプログラミングなど幅広い勉強が必要になります。難しい。
流体の基礎式
基礎式は、主に運動方程式(Equation of motion:EOM)と質量保存則(Law of conservation of mass)。流体の場合、運動方程式はナビエ-ストークス方程式(Navier-Stokes equation:NS eq.)、質量保存則は連続の式(Continuity equation)と呼ばれる。
ナビエ-ストークス方程式
表面力として垂直応力とせん断応力が作用していると考えた流体微小要素にNewtonの第二法則$${{\boldsymbol F} = {m}{\boldsymbol a}}$$を適用することで誘導される。下に示すのが非圧縮流れにおける基礎式。
左辺は加速度をラグランジェ的観測(空間座標が時間に対して従属関係)ではなくオイラー的観測(時間と空間が独立)で考え、テイラー展開を用いて近似することで示される流体の加速度表示になる。
$$
\displaystyle \frac{\partial{\boldsymbol v}}{\partial t} + ({\boldsymbol v} \bullet {\nabla}) {\boldsymbol v} = {\boldsymbol K} - \frac{1}{\rho}{\nabla p} + {\nu}{\nabla}^2{\boldsymbol v}
]
$$
ここに、$${\boldsymbol v}$$は流速ベクトル、tは時間、$${\boldsymbol K}$$は外力ベクトル、$${\rho}$$は流体の密度、pは圧力、$${\nu}$$は動粘性係数。
各項は一般に次のように呼ばれ、対象とする流れによってそれぞれ扱いが変わる。
左辺
第1項:局所加速度項(Variation term)、時間的な(局所的な)速度の変化
第2項:移流加速度項(移流項Advection termや対流項Convection termともいう)、空間的な速度の変化、難しさの原因である非線形項。
右辺
第1項:質量力項(Mass force term、外力項ともいう)
第2項:圧力項(Pressure term)
第3項:拡散項(Diffusion term)
ちなみに、左辺は実質微分の記号を用いて次式で表すことができます。
$$
\displaystyle \frac{ \mathrm{D}{\boldsymbol v} }{ \mathrm{D}t } \equiv \frac{\partial{\boldsymbol v}}{\partial t} + ({\boldsymbol v} \bullet {\nabla}) {\boldsymbol v}
$$
また、数値解析を行う上では無次元化することでスケールを考慮しなくて済むため、それぞれ代表物理量を用いて無次元化すると以下のように示されます。無次元量には上付きの*を付けています。
$$
\displaystyle \frac{ \mathrm{D}{\boldsymbol v^*} }{ \mathrm{D}t^* } = {\boldsymbol K^*} - {\nabla^* p^*} + \frac{1}{R_e}{\nabla^*}^2{\boldsymbol v^*}
$$
ここに、$${R_e}$$はレイノルズ数であり、外力項が無視できる場合、流れはレイノルズ数のみで決定するため流体力学、水理学において重要な無次元パラメータ。
無次元パラメータ
レイノルズ数$${R_e}$$:Reynolds Numberは慣性力と粘性力の比を表しています。つまり、この値が大きいほど粘性のない理想流体に近づきます。
$$
R_e = \displaystyle \frac{VD}{\nu}
$$
Vは代表速度、Dは代表長さです。
例えば、矩形断面開水路であればVを断面平均流速、Dを水深に代表長さをとると、VD=q :単位幅流量より単位幅流量qと動粘性係数$${\nu}$$の比で求めることができます。
Reynoldsのpipe flowでの層流乱流の臨界レイノルズ数に関する実験はどこかで見たことがあるんじゃないかと思います。
また、その他無次元パラメータとしては常流射流を決定するフルード数$${F_r}$$(Froude Number、代表流速と長波の伝播速度の比)や水理では水を扱うためほぼ考慮することはありませんが、圧縮流れを分類するマッハ数M(Mach Number、代表流速と音速の比)があります。
フルード数$${F_r}$$は重力場において(外力ベクトル$${\boldsymbol K}$$が重力ベクトル$${\boldsymbol g}$$であるとき)、基礎式を無次元化すると出てくる項になります。
$$
F_r = \frac{V}{\sqrt{gD}}
$$
水理学的な立場としては射流(Supercritical Flow、$${F_r}$$>1])から常流(Subcritical (Normal) Flow、1>$${F_r}$$)へ遷移する際に跳水(Hydraulic Jump)という大きくエネルギーを減衰させる現象が起きます。条件もいろいろありますが。いずれ跳水についてもなにか書きたい。。
連続の式
連続の式は流体における質量保存則になります。
流体中の微小要素(コントロール・ボリュームCV)を考え、CVにおける流体の質量の時間変化と単位時間にCV表面を流入出する流体質量が等しいことから次式が誘導されます。
$$
\displaystyle \frac{ \mathrm{D}{\rho}}{ \mathrm{D}t} + {\rho} ({\nabla} \bullet {\boldsymbol v})= 0
$$
左辺の第1項は流体密度の時空間的な変化を表し、この項を無視できる場合を非圧縮流れといいます。つまり、単に圧力pによって密度$${\rho}$$が変化しない$${\displaystyle \frac{\partial \rho}{\partial p}= 0}$$だけでなく、流体が圧力pや時間、場所によっても変化しない$${\displaystyle \frac{ \mathrm{D}{\rho}}{ \mathrm{D}t}= 0}$$のことを指します。
このあたりは日野先生の明解水理学の補遺P.321に記述があります。意外と大事なこと?と思いました。
これから書きたいこと
今回は流体力学のどの本にも載っているような数式の羅列ですが、これがベースになっていることを頭にいれつつ。。
この関連は、今後iRICの計算とかと書いてみたいと思います。オリジナリティ大切。
iRICは本も出ていますが、ソフトの扱いだけじゃなく二次流のこととか書いてあって計算結果の考察も捗ります。
参考
数式
数式はあんまり慣れませんが、noteではTeXみたいです。
流体力学、水理学
流体力学、日本機械学会
明解 水理学、日野幹雄
粘性流体の力学 機械工学基礎講座、生井 武文
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?