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読書記録≫河童/芥川竜之介

河童
芥川竜之介
2012年9月27日発売

先日読んだ「哲学するシュレ猫」で実存主義の章で紹介されており、気になった一冊。

その本で紹介されていたページで、河童が生まれてくるかどうか選択するシーンは奇妙だけど、合理的なような冷たさみたいなものも感じた。
「親ガチャ」という言葉が存在するこの時代にも刺さる風刺な気がする。

ファンタジーのような文明のある河童の世界ではあるけど、背理法で世間を毒づくような、一見変だけど人間世界も同じかと思わせる、納得すれば自分も責められるような感覚だった。

前述した出生の選択や雌に翻弄される恋愛、音楽(=表現)の禁止、職工屠殺法、言葉責めによる死刑(言葉は人を殺す、自殺じゃない)など衝撃的だけど完全なフィクションじゃない、世論批判の思いに気が付けばすべて人間世界へのアイロニーのように思えて寒くなる。

家族や自意識過剰な嫉妬に狂う音楽家にがっかりしたラップの「いえ、余りに憂鬱ですから、逆まに世の中を眺めて見てみたのです。けれどもやはり同じことですね。」のシーンも寂しかった。

これでも受け取れていない内容がたくさんある気がする。
太宰治が尊敬した芥川というつながりも個人的には気になるところなので、これから芥川文学にも触れてみたい。



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