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長文感想 『ゴキブリ研究はじめました』 柳澤静磨

ごくごく個人的な事情があり、苦手なGに関する本を手にすることになりまして…😅

実は、著者の柳澤氏も、私と同じくもともとはGが苦手でした。

柳澤氏は、幼い頃から昆虫の世界にあこがれ、縁あって静岡県内の昆虫館の職員となりました。

そこで研究目的で飼育されていたG。

最初はドン引きだった著者も、次第にその個性を面白く感じるように。

南の島の野生種のGを追う中で、美しい種の魅力に引かれた彼は、その深遠な世界へと誘われてゆくのです―――

あ、この本にはGのイラストは登場しますが、画像はありませんのでちょっと安心…かな?( ̄▽ ̄;)


とは言うものの、世間的には畏怖の対象となっているG。

昆虫館で、Gをテーマにした企画を実行することになり、彼は悩みます。
研究対象としてのGの魅力をどう昆虫館の利用者に伝えるか?

彼は、苦手だった頃の感性を保ちつつ、展示を工夫することで別の角度から彼らの個性をあぶりだし、企画展へ来場された方々の関心を引くことに成功したのです。

何と言っても、ある意味、とても注目される昆虫。
展示であればこそ、普段はできない観察をじっくりできるのですから。

(当時来館されたお子さんが、その後、自宅に出没したGをつぶされて「かわいそう」と泣き、別のお子さんは「飼いたかった」と泣くこともあったそうな。固定観念の薄い、お子さんの純な感性に感心しきりです😅)


ここまででも十分にドラマチックなお話が展開しますが、この本のキモは、日本の最西端・与那国島への2度目の採集出張へ出た後のこと。
ここで、彼は運命の出会いをします。

それは、G界でも見目麗しいとうわさされる「ルリ色」に輝く種。
苦労して採取した幼体を慎重に捕獲し、成長させることに成功。

しかしよくよく観察すると、正式にはまだ認定されていないという「謎」の種かも…と思われるものでした。

ここから、様々な専門家の方々との出会いと交流を通じ、「新種」として学会に認定されるまでの彼の「奮闘」が始まるのです。

彼自身、研究者としては駆け出しの身。

まずは証拠としての「標本作製」に始まり、既存の標本との違いを明確にするための「解剖」、 学会へ報告するための「論文作成」と、数々のハードルを越えなければなりません。

これまでの経緯で多くの研究者の方との交流(叱咤激励とも言う😅) を通じ、彼はいつの間にか、新進気鋭の「昆虫ハンター」へと成長していくのです。

その様子は、メディアでも注目を集めた『バッタを倒しにアフリカへ』の著者・前野ウルド浩太郎氏同様の、秀でた集中力を感じます。

素人丸出しからスタートした柳澤氏の歩みを丁寧に追うと、研究職を志す方の「ど根性」を感じられて、読み手もまたその「勇気」を分けていただいた気持ちになりますよ(^^)

【以下、余談】


彼が今回達成したのは、新種のGを分類することで、その基礎を確定する「基礎研究」。

Gの研究はここでゴールではなく、Gに関わる生物学・食品・医療品・その他化学的な分野への応用の基礎として、生物多様性に関わる大きな土台として、更なる発展が期待されます。
(何と言っても彼らは「森の分解者」として重要な存在! 自然環境のSDGsを語るうえで欠かせないのです)

伊坂幸太郎氏のSFチックな一編『PK』でも、Gが人類の存亡にかかわるストーリーが展開していますが、それも基礎研究があればこそ? 
現実でもそんなことになるかも知れませんよ?(;・∀・)

私には、『PK』の装丁に描かれている「彼」が、この本の著者にダブって見えてきました…。あ、この本はかなり複雑な章立てになっているので、お手にされた際はお覚悟を(笑)。

【追記】 『PK』の長文感想をアップしました。

【おわり】





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