長文感想『八月の御所グラウンド』万城目学
彼の地に名を轟かせた大谷翔平選手の大活躍。日本プロ野球も、セリーグ3位からの怒涛の追い上げで日本シリーズ制覇まで駆け上った横浜DeNAベイスターズの大活躍が印象深い2024年。
そんな年の暮れ、八月の猛暑の中開催された草野球大会が舞台のこの本を手に取った次第。
なんですが、最初は本の序盤の掌編・全国高校女子駅伝がテーマの『十二月の都大路上下ル』(かける) が目当てでした(;^_^A
毎年、暮れを〆る読み本は、この時期が本番の駅伝ネタの小説と決めているのです。
さて、どちらも多くの学生が集う京都が舞台。
京都、と言えば、今でこそ近代都市ですが一種アヤシイ魅力が受け継がれている場所。
京大がご出身の森見登美彦さんもそうですが、万城目学さんも同じく京大出身で、デビュー作『鴨川ホルモー』をはじめ京都に縁が深い作家さん。
森見さんのぶっ飛び作品も面白かったですが、こちらもまた万城目さん流のアヤシイ味付けがじんわりと味わえます(^^)
方向音痴の女子高校生ランナーが補欠でエントリーした全国高校女子駅伝で、急遽最終ランナーとして都大路を走ることになったお話と、数合わせでいやいや真夏の草野球大会に出場する大学生が軸の表題作。
どちらもドタバタ青春ストーリーなんですが、そこに登場する「アヤシイ」助っ人の皆さんがこの物語のキモ。
ちょっとだけネタバレにはなりますが、そのアヤシイ面々は過去から登場した「影?」らしく…。
1000年の歴史を重ねた京の都。
それだけ、過去からの多くの人々の「魂」が土地の奥深くにひっそり積み重なっているのかも知れないと思うと、こころの中にじんわりと波紋が広がっていくのです。
現代の京都の町を舞台に、若者たちがスポーツの場で真剣勝負をすれば、そんな魂たちもついつい顔を出してしまうのもアリ、なのかも(笑)。
皆さん、平和であればそんな青春の日々を謳歌していたはず、ですので。。。
【以下、余談(ちょっとネタバレ)】
『八月の御所グラウンド』では、毎年とある芸妓さんの「ちゅう」をめぐり(笑)、草野球チームのリーダーの方々が競い合うのですが、地獄の釜の底とも評される8月の京都、メンバーを集めるのも大変。
そこに毎回、不思議な「助っ人」が現れる…というストーリー。
実は、その中には日本プロ野球の栄えある個人賞の名に冠されている方に容貌がそっくりな若者が…。
それだけ歴史を繋いで、現在の日本野球が成り立ってきたわけですよね。
その方は過去、NYヤンキースの猛者たちをきりきり舞いさせた実績がありました。
昨年のワールドシリーズでは、ドジャースの山本由伸投手が現代のヤンキースのバッターたちをきりきり舞いさせました。
大谷翔平選手が「ベーブルースの再来」とうわさされる中、山本選手は…なんてちょっと頭の中をよぎりましたね( ̄O ̄;)ヾ(・_・`;)オイオイ
私個人のお話で恐縮ですが、2024年は家庭の事情で一時は大変な思いもしたのですが、ここ数年盛り上がるプロ野球でのプレーに大いに励まされました。
そんな中、日本野球の根幹にそっと触れるこの本に巡り合えたのは、とても幸せな出来事だなぁ…と感じた次第。
【おわり】