人生のテーマ曲
「あなたは◯◯にいて◯◯な状況です。何の曲を思い浮かべますか?」
たしかこんな感じの心理テストがあった。
小学生のとき。
小学生女子がよく読むようなラブリー系の占い本に書いてあった、ような気がする。
◯◯の部分は全く覚えていない。
私はふと「オルフェのサンバ」を思い浮かべた。
すると次のページには
「その曲はあなたの人生のテーマ曲です」
そう書かれてあった。
その頃特にハマっていたわけでもないし、本当にふと浮かんだのがそれだったので、そうなのか、と深く思い、これはずっと記憶に留めていた。
この曲は1959年に発表された「黒いオルフェ」という映画の中のひとつの曲。
この時点で映画は観ていない。
では10歳ほどの私が何故オルフェのサンバという曲を知っていたのか。
幼稚園の頃から習っていたエレクトーン。
これはピアノと違う。
右手でメロディ、左手で伴奏、左足でベース、右足でペダルと音の強弱をつける。
そんな楽器なのでクラシックではなく習うのはジャズのスタンダード曲が多かった。
それとボサノバ。
「おいしい水」「イパネマの娘」「デザフィナード」「コルコヴァード」「ビリンバウ」
中学生の私がジャズにスッとハマったのもこの影響だろう。
黒いオルフェの主題歌「カーニバルの朝」も勿論習った。
でも何故かその時は「オルフェのサンバ」だった。
サンバについては実は今でもよく知らない。
浅草に住んでいたとき、サンバカーニバルの日は街が凄いことになるのでその辺りは避けよう、そんな感じ。
サンバが人生のテーマ曲って、なんか違う気がする。
私の人生と軽快なステップはリンクしない。
原曲を聴いてみたい、けど当時はサブスクミュージックなんてなかったので、ひとまず「黒いオルフェ」のサウンドトラックを買った。
今思えば洒落たカフェでかかっているアレンジのオルフェのサンバがいくらでもあったのに。
そのCDはずーーーっとサンバのリズムがベースにあって、時折り大勢が歌う声、何だかわからない音、物哀しいカーニバルの朝。
そして何人かの子供が歌うオルフェのサンバ。
それからだいぶ経ち、映画を見た。
舞台はリオの貧困街、そこで暮らす人々、カーニバルの前日から物語は始まる。
彩りどりの装飾、衣装、公開時はモノクロからカラーに移り行く頃だったので、リアルタイムで見た人たちはその鮮やかさにびっくりしただろう。
サントラのあの声はこのシーンだったのか、とか答え合わせ。
モチーフはギリシャ神話。
悲恋の結末。
あれ、そういえばオルフェのサンバがまだ聞こえない。
ラストのラスト。
主役であるオルフェのギターがそこにある。
スラムの子供が「早く!太陽が昇っちゃうよ!」
そう言ってもう1人の子供にギターを渡す。
渡された子供はオルフェのギターを掻き鳴らす。
そこでやっとオルフェのサンバ。
すると5歳くらいの白いワンピースを着た女の子が踊りだす。
主役とヒロインは死んでいるが、朝日と子供たちとサンバ。
びっくりするほどそのラストシーンが完璧だった。
受け継がれるギターそして希望、その言葉しか当てはまらない。
そうか、私のテーマ曲はこれだったのか、何故か号泣。ギリシャ神話なんてどうでもいい。
この映画からアントニオカルロスジョビンが世に出て、ボサノバがポピュラーになったと言われている。
人生=ライフ/LIFE
更に時が経ち、私が結婚した相手は売れないテレビ作家。
彼の人生を変えた仕事。それもこれ。LIFE。
始まって12年、ずっと変わらないテーマ曲、それがオルフェの主題歌「カーニバルの朝」のカバーだった。原曲の暗い感じゃなくてサンバにみたいに明るいアレンジ。
なんか縁を感じる。
中学生のとき夢中で聴いたアルバムは小沢健二のLIFE。
LIFE、人生って何だろう。
それはすっかりおばさんになったこの歳でもよくわからない。
でも私の人生のテーマ曲は「オルフェのサンバ」
上の譜面は拾い画像なんだけど、C。私が習ったのはF。ソシレファから始まった。
でも今弾いてみたらドミソシの方がしっくりきた。
まあいいか。