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看看臘月尽 初めて人と付き合った話

朧月とは12月のこと。
12月に咲く梅を臘梅という。
この言葉は禅語。
この時期に床に掛けられる。

年末。明日で今年が終わる。
2024を振り返りそうなタイトルだけど、今日ふと思ったことをなんなく書いてみようと思った。

まあ誰も興味はないと思うけど、私が生まれて初めて恋愛した話。
年末感は一切ない。


あれは中学2年か3年の時だった。
両親は別居中で母は入院。私は兄と2人で暮らしていた。
当然門限などはない。そしてお金はいくらでも使えた。
原宿に行ったり、ライブハウスによく行っていた。
地元でそれなりに活躍してしていた、とあるバンド、確かメジャーデビューも決まり、さあこれから、という人たち。彼らは地元にある大学の学生だった。
そんな彼らを目当てに幼馴染とライブハウスに行ったら、1人の男性が盛り上がるでもなく、真剣にライブを見ていた。
14歳ほどの私にはなんだかすごく大人に見えた。

ライブが終わりその人に声をかけられた。
話をすると彼も同じ大学の学生でまだ18歳。
自分もバンドをやっていると。
4人編成で彼はボーカル担当。
最初の印象は、派手な女性を連れていそうな人だなぁ。そう思った。
別にグイグイ来られたわけでもないのだけど、なんとなく連絡先を交換した。
私はポケベル、彼(以後A)はこの時代すでに030から始まる携帯電話を持っていた。
この番号、まだ全部覚えている。
いまは0903〜にすればそのまま繋がると思う。

それから私のポケベルに連絡が入り、私たちはよく電話で話すようになり、会うようになり、付き合うにようになった。
男性と付き合うのは完全に初めてだった。
恋愛小説とか、漫画とか、そういうのはひと通り読んでいたので憧れはあったけど、いざそういう相手ができるとなんだか生々しい。少女漫画のキラキラしたそれらとはなんだか違っていた。

大学生のAは新しい彼女が中学生、というのとに引け目を感じていたが周りの人にいろいろと紹介された。
Aと私が出会った時にライブをしていたバンドのメンバーたちもまさかこの2人が、とびっくりしていた。

付き合い出して割とすぐ、Aはエピックソニーのお偉いさんに見出され、メジャーデビューに向けて活動をしていくことになった。
お偉いさんは私のことも何故か気に入り、憧れ過ぎてビジュアルを似せていたカヒミカリィさんのようないイメージでAプロデュースでデビューさせようと意気揚々としていた。

ド音痴な私は本当に無理だと言ったけどなんだか伝わらずAは曲を作り三茶のスタジオに連れて行かれた。
その時たまたまそのスタジオに忌野清志郎さんがいたのを覚えている。

地獄だった。
私のド下手さにみんなが狼狽えてた。
変な空気になり、私はもう無理ですとドロップアウトした。

同じ会社のミュージシャンのライブに関係者としてたくさんライブに連れて行ってもらった。
なかなか出来ない経験。これに関しては良かったなぁ。

Aは確かに才能はあったのかもしれない。
家は厳格で中高は進学校で寮生活だった。
それが嫌になり、寮を抜け出し博多に行って「昭和」というライブハウスで飛び込みでギターひとつ持って歌っていたらしい。
それから名門大学は諦め、私の地元にある大学を一芸入試で入ったと。

魅力的だったのかなんだかよくわからないが、私は沼に陥るようにAに依存していった。
喧嘩もたくさんした、嫉妬もした。

ある日Aと連絡が取れなくなり、私はひょっこりと自宅に行ってみた。
実家だったのだけど、鍵は空いていて日中家族は留守だということはわかっていた。
2階の彼の部屋に行くと、裸で見知らぬ女性とベッドにいた。
ドラマみたい。
私はショックでどうにかなりそうだったが、女性は即退散し私は説得された。
今思うと笑える。
別れることもなく私たちはその後も恋人でいて、2年ほど一緒にいた。

別れた原因はうろ覚えだけど、高校生になって私はラフォーレでアルバイトを始める。
そこで突然のモテ期。
ファッショ関係者やメンノンのモデルに言い寄られた。
そのあたりで別れた気がする。

それから少ししてラフォーレ地下のHMVに行ったらAのバンドが大々的に宣伝されデビューしていた。
スタイリングはソニアパーク、フォトグラファーもかなり有名な人だった。
プロデュースはcoccoなどを担当したDSLの根岸氏。
物凄い気合の入れよう。

私はふーん、という感じでJAZZのコーナーに行った。

それからAとは数回会った。
「◯◯と別れてから何度も彼女はいた。今もいる。しかしあんなにもがむしゃらに人を愛したのは君だけなんだ」
別に口説かれたわけではないのだけどやたらとそんなことを言っていた。

私はそうは思わなかったし、ふーんという感じ。
初めての経験をたくさんさせてくれた人だけど、別に。

人生思い返すとふーんという感じなことが多い。
でもそれらがあったから現在がある。
ひとつでも狂えば今の生活はなかったかもしれない。

「看看臘月尽」
もう12月。時はあっという間に過ぎてしまう。
そんな中でふと思い出したエピソード。

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