コミュニケーションは毎日のものだから、素朴でやさしいが良い
コミュニケーションにおいて「これさえやれば完璧」というものはない。だからこそ、大切なのは「何を伝えるか」ではなく「何が伝わったか」だ。
先日、「伝え方で部下のやる気をアップさせる講座」を受講し印象に残った言葉です。自分では気を使っているつもりでも、それが相手に伝わっているかはまた別な話。でも、せっかくなら伝わってほしいですよね。
今日は「伝わる」ためのポイントと「伝えるための型」をご紹介します。教えてくださったのはコミュニケーション、メンタルコーチをされている石川きょうこ先生です。
「伝わる」ためのポイント
1.相手の辞書にある言葉で伝える
まずは基本です。会話に知らない単語が登場した場合、前後の文脈などからその意味を推察するのは、それだけで労力を使いストレスになります。
ビジネスでは特にカタカナや略語が使われることが多いです。社内や一定のグループ内では当たり前に使われている単語でも、社外の方には意味が通じない場合がありますので、配慮が必要です。
2.相手がイメージできる言葉で伝える
こちらも相手の辞書にある言葉で伝えるに近しい配慮です。
例えば、ピザまんを買ってきてと頼むとします。相手がピザまんを知らなかったら、「ピザまんを買ってきて」だけでは何を買ってきたら良いのかイメージできないですよね。
肉まんを知っている相手だったら、「肉まんの中身がピザのやつ」と言えば、分かってもらえそうです。ですが、肉まんも知らない相手だったらどうでしょう? 「コンビニのレジ横で売っている」「おまんじゅうのような形」「手の平くらいの大きさ」「温かい」「ピザの具が入っている」などピザまんを思い描けるような情報を伝える必要があります。
ここがしっかり出来ていないと認識に相違が出て、ピザまんではなくエビチリまんを買ってきてしまうかもしれません。
3.感謝やねぎらいの言葉を添える
感謝やねぎらいの言葉も合わせて伝えると、相手は自分の行動が認めてもらえていると感じます。
「ピザまん買ってきて」
「分かった」
だけではなく
「ついでで悪いけど、ピザまんも買ってきてもらえる?」
「分かった」
「ありがとう。よろしくね」
というように感謝とねぎらいの言葉も添えます。
相手が家族など親しい相手だったとしても、お礼の言葉は伝えた方が気持ち良いコミュニケーションになります。
4.どのくらい伝わったか確認する
どのくらい伝わったかは、相手に確認しなければ分かりません。
但し、ここで「質問はありますか?」「分かりましたか?」とふわっと尋ねても「質問はありません」「分かりました」とふわっとした答えが返ってきてしまいます。
ですので、「どこが一番分かり辛いですか?」「どれからやってみますか?」など具体的に考えてもらえるような質問をします。すると相手も具体的な思考をしてくれるので、分からないことがあれば質問をしてくれるようになります。
「ピザまんがどういうものか分かった?」
「分かりました」
ではなく
「ピザまんがどういうものか説明してみてくれる?」
「丸くて中にピザの具が入っている。手のひらに乗るくらいの大きさで、おまんじゅうのような形……そういえば、衣はおまんじゅうと同じですか?」
具体的に想像してもらうことで、不明瞭な部分を明らかにします。
「伝わる」ためのポイントは、仕事だけではなく日常でも配慮するとストレスなく円満なコミュニケーションができそうですね。
次は、「伝える」テクニックの一つご紹介します。
「伝える」ための型 サンドイッチ話法
叱るときなど「否定的なこと」を伝えるときに、いきなり本題に入るのではなく、
1.肯定的なこと
2.否定的なこと
3.肯定的なこと
と本題の「否定的なこと」を「肯定的なこと」でサンドイッチのように挟んで伝えるとショックを和らげることができます。
これと同じで「大切なこと」や「ちょっと言いづらいこと」を伝えるときに、
1.前置き
2.伝えたいこと
3.フォローの言葉
と本題の「伝えたいこと」を「前置き」と「フォローの言葉」でサンドすると確実にしっかり伝えることができます。
詳しくご説明します。
1.前置き
本題である「伝えたいこと」の前に前置きを添えることで、相手の聞く態勢を作ることができます。
例えば、
真面目で仕事熱心なバイトリーダーA君がいたとします。今日は新人バイトのB君が遅刻をしてしまい、A君と口論になったそうです。そもそもは遅刻をしたB君がいけないのですが、A君は事情も聞かず感情的に怒鳴ってしまったようです。A君に「叱るときに怒鳴ってはダメだ」と指導しなければいけません。
いきなり「感情的に怒鳴ったらダメじゃないか!」と言ったら、言われたA君としてはショックですよね。どうしてもまた感情的になってしまいそうです。
そこで「いつも熱心に指導をしてくれて、ありがとう。そんな中ちょっと言いづらいんだけど……」と前置きをします。するとA君としても、怒鳴ってしまったことについて言われるんだなと察して、心の準備をすることができます。
他にも本題に合わせて「とても残念な話なんだが……」「ちょっと時間をもらえるかな……」など、前置きというクッションを挟むようにします。そうして、前置きで相手の心を開いておくと「伝えたいこと」が伝わりやすくなる効果があります。
2.伝えたいこと
前述の通り「何を伝えるか」ではなく「何が伝わったか」を意識して伝えます。
3.フォロー
フォローの言葉のポイントはアイメッセージです。アイメッセージのアイは英語のI(私)からきていて、「私は」が主語になるメッセージです。対になるものとしてYou(あなた)メッセージがあります。
・アイメッセージ:「私は」を主語にして伝えるメッセージ
・ユーメッセージ:「あなたは」を主語にして伝えるメッセージ
例えば、「あなたのためになるので、資格をとってください」とユーメッセ―ジで言われると、ちょっと反抗的な気持ちになりますよね。でもアイメッセージで「資格をとってくれると、私としては嬉しいです」と言われると、そっか嬉しいのかと素直に受け止めることができます。
アイメッセージは「決めつけ」にならないので、相手が受け止めやすいというメリットがあります。また、ヒトは社会性のある生き物なので、本能として誰かの役に立ちたいという欲求を持っています。
ですので、
前置き
「忙しいところ悪いが、頼まれてくれるかな?」
伝えたいこと
「私の代わりに会議に出てくれないか」
フォロー
「そうしてもらえると、とても助かるよ」
というように、伝えたい本題の後に「私は嬉しい」「チームが助かる」「あなたなら上手くやれると思う」などアイメッセージで伝えます。すると、そう言うならちょっと頑張ってみようかな、と相手も快く受け止めてくれるようになります。
以上、「伝わるためのポイント」と「伝えるためのサンドイッチ話法」でした。
コミュニケーションは日常的なものだからこそ、こういった素朴で優しいものが大切なのだと感じました。なんだか毎日の食事と似ていますよね。お母さんの味のようなコミュニケーションが心にも体にも良さそうです。
そんな温かな気持ちにさせてくれる石川きょうこ先生の講座は、ストアカでも受講ができます。はじめの一歩によりそうコーチと書かれているように、やさしい声音や話し方、表情など相手に寄り添うってこういうことなんだと、先生ご自身のお人柄が感じられる講座です。
今回の講座も東京コミュ塾のグループレッスンの一環でした。いつも楽しいレッスンありがとうございます!
それでは、最後までお読みいただき、ありがとうございました。